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2017年5月の『押さえておきたい良書

カルロス・ゴーンの経営論

“カリスマ”ゴーン氏に見るグローバル・リーダーの条件

『カルロス・ゴーンの経営論』
 -グローバル・リーダーシップ講座
公益財団法人 日産財団 監修
太田 正孝/池上 重輔 編著
日本経済新聞出版社
2017/02 304p 1,600円(税別)

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 日本企業のトップで「グローバル・リーダー」と呼ぶにふさわしい人物は誰かと問われた時に、必ず名前が挙がると思われるのがカルロス・ゴーン氏だ。日産自動車のCEOを長く務め、現在は同社と三菱自動車工業の会長、仏ルノーの取締役会長兼CEOを兼任する。日産のCOO(最高執行責任者)として就任した直後から始めた「日産リバイバルプラン」をはじめ、その経営手腕、とくに決断力やリーダーシップは国内外で高く評価されている。まさしくグローバル・リーダーと呼ぶにふさわしい実績を誇る。
 本書『カルロス・ゴーンの経営論』は、公益財団法人日産財団が主催する「GRIP(逆風下の変革リーダーシップ養成講座)」という幹部育成プログラムをベースに構成。5日間のプログラムのうち、ゴーン氏に対してさまざまな企業から集まった参加者たちが質問するセッションが半日弱ある。本書はその質疑応答を中心にまとめられたものだ。
 質問者からの時に鋭い質問に対し、真摯に、かつ熱く答えるゴーン氏。その発言には、成功するリーダーの気構え、心構えのみならず、具体的な行動指針を立てる際のヒントが詰まっている。また、各章には質疑応答の内容に沿った、編著者二人(太田正孝・早稲田大学商学学術院教授と池上重輔・早稲田大学大学院経営管理研究科教授)によるアカデミックな解説も付されており、ゴーン氏の思考や行動を、古今のリーダーシップ論と照らし合わせて読み解くこともできる。

従業員から見たグローバル・リーダーの要件は“マインド”

 「グローバル・リーダーの要件のようなものはあるのでしょうか」という質問に対してゴーン氏は、二つの側面から説明する。社外の人々から見た場合と、部下、従業員からの見方だ。
 社外の人々、言い換えれば一般社会から見たグローバル・リーダーとは、客観的事実によるものだという。すなわち、複数の言語を話し、さまざまな国や地域で事業の経験があることなど。誰が見ても「グローバルだ」と納得できる事実があった時に、グローバル・リーダーとして認められる。
 一方、部下や従業員はマインド的な部分を重視する。そのリーダーが自分たちに心をオープンにしているか、知的好奇心と意欲にあふれているか、国籍や性別、バックグラウンドの多様性を強みと考えているかなどを見て、グローバル・リーダーかどうかを判断するのだという。こちらにおけるグローバルというのは単に国際的ということだけなく「広い視野」という意味を含んでいるのだろう。
 私たちがグローバル・リーダーを目指すならば、後者のマインド的なものを身に付けるべきだと考えられる。こちらであれば、たとえ語学力が足りなくとも、海外経験が希薄であろうとも、グローバル・リーダーシップを発揮することは可能だからだ。

「嘘をつかない」一貫性がリーダーの信頼を生む

 ゴーン氏は、日産のCEO就任まもない2001年や2002年ごろに自分が何を言っていたか、あまり覚えていないのだという。それでも同氏の「一貫性」は高く評価されることが多い。ある質問者も、日産自動車の志賀俊之副会長の「ゴーンさんの大きな特長は、どのような状況においても判断や行動の一貫性を担保できる点にある」という発言を引用している。
 本人が覚えていないのに「一貫性がある」のは、同氏がその場で自然に思ったことを、嘘をつかずに言動にしているからだ。「ここは建前を言っておこう」とその場限りの発言を繰り返すようなことはまったくないのだという。判断しなくてもよい、賛成反対の立場や好き嫌いをはっきり伝えなくてもよい場合には、適当なことを言ってお茶を濁さず、「何も言わない」。こうした究極の正直さが、国籍や価値観の多様性を超えてリーダーとしての絶大な信頼を生んでいるのは確かだろう。(担当:情報工場 足達健)

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2017年5月のブックレビュー

情報工場 三省堂書店