1. TOP
  2. これまでの掲載書籍一覧
  3. 2017年4月号
  4. 元人事部長が教える「結果を出す人」の働きかた

2017年4月の『押さえておきたい良書

元人事部長が教える「結果を出す人」の働きかた

実績を上げるビジネスパーソンになるための「考え方」のコツ

『元人事部長が教える「結果を出す人」の働きかた』
小杉 俊哉 著
大和書房
2017/01 200p 1,400円(税別)

amazonBooks rakutenBooks

 ビジネスで結果を出す人、成果を上げる人とそうでない人の違いは、ビジネスパーソンなら誰しも気になるところだ。本書『元人事部長が教える「結果を出す人」の働きかた』では、マッキンゼー、ユニデン、アップルジャパンで人事部長などを歴任した著者が、結果を出すビジネスパーソンに共通する働きかた、考えかたを解説している。

「成功循環モデル」を応用して最速で結果を出す

 著者はまず、米マサチューセッツ工科大学(MIT)のダニエル・キム教授による「組織の成功循環モデル」を紹介する。
 このモデルは、(1)関係の質、(2)思考の質、(3)行動の質、(4)結果の質という4要素に「関係→思考→行動→結果」の順に取り組むことで成功しやすい組織がつくられるというものだ。たとえば、一緒に考える風土をつくる(関係)→新しいアイデアが生まれやすくなる(思考)→自発的、積極的に行動する(行動)→成果が出る(結果)→さらに組織の信頼感が醸成される(関係)、といった好循環である。
 だが逆に成果が上がらない原因(結果)の追及から始めると、思考が消極的になる(思考)→行動が萎縮する(行動)→責任のなすりつけ合いなどが起こる(関係)→さらに組織のモチベーションが下がる(結果)というような負のスパイラル(悪循環)にはまってしまう。
 この成功循環モデルは組織だけでなく個人の成長にも応用できるという。なにより重要なのは上司や同僚との信頼関係の構築であり、仕事のイロハや人間関係を良好に保つ方法を身につけることだ。そこではじめて仕事が任される。そうして小さな成果を積み上げ、信頼を得ることで、さらに大きな仕事を任されるという好循環が生まれるわけだ。

周りに左右されない「自律」の精神が大事

 思考や行動の質を今以上に高めるには、どうすればいいだろうか。ビジネスを取り巻く環境は常に大きく変化しており、上司の言う通りに仕事をしていればよいという時代ではない。そこで著者が重要なキーワードとして挙げるのが「自律」だ。言い換えるなら、自分で仕事をつくり出し、結果までを自分の責任と考える「起業家マインド」だ。
 著者は、なにも独立起業せよと言っているわけではない。社内にいながら起業家のように考え、自律の精神のもと働くことを勧めているのだ。たとえば、望まぬ人事異動も受け入れ、ゼロから新天地で実績を上げることに集中してはどうかということだ。
 著者が、さまざまな企業でエースと目される数十人にインタビューを行ったところ、その多くが主流でない事業や新規事業を経験していた。主流の部門では、人材の層が厚いためになかなか権限が与えられない。しかし、傍流や新規事業であれば、裁量権をもって仕事を進められることが多い。マルチタスクも求められる。それゆえ、傍流で力がつき結果を出せたことで、主流に引き戻されるケースも多かったという。
 そもそも自律とは環境に左右されないことでもある。望まない異動でも、すべて自ら選択した結果なのだと主体的に受け止めることもできる。自らのマインドをいかに変えるかが、自律の最大のポイントなのかもしれない。(担当:情報工場 安藤奈々)

amazonBooks rakutenBooks

2017年4月のブックレビュー

情報工場 読書人ウェブ 三省堂書店