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今月の『押さえておきたい良書

『最高の結果を出すKPIマネジメント』

勘違いKPIからの脱却。最強KPIマネジメントはシンプルだった!

『最高の結果を出すKPIマネジメント』
中尾 隆一郎 著
フォレスト出版
2018/06 244p 2,000円(税別)

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 仕事の中で「数字で語れ」と言われることはないだろうか。そんな時こそKPI(Key Performance Indicator)が役に立つ。しかし、事業を数値で管理できるKPIを考えなく導入すると「管理数値が多い」「現場に浸透しない」「数値設定がおかしい」という、活用できない“勘違いKPI”になってしまう。

 そのような勘違いKPIを解決するのが本書『最高の結果を出すKPIマネジメント』である。本来、KPIとは、「事業成功」の「鍵」を「数値目標」としてみることであり、活用できるKPIを設定する最大のポイントは、正しい策定手順で作ることだという。

 著者はリクルートで11年間KPI講座の社内講師を務め、事業責任者として現場で実践し続けてきた人物だ。

KPIは運用前に勝負が決まる

 本書ではKPIマネジメントの“登場人物”として、「KGI(Key Goal Indicator)」と「CSF(Critical Success Factor)」、そしてKPIを挙げる。著者は、この3つが正しいKPIマネジメントに欠かせないと説く。

 KGIは達成したい最終的な目標数値だ。続いてCSFはKGIを達成するために最も重要な要因のことで、事業成功のポイントとなるものだ。事業を成功させるためには、やらなければいけないたくさんのプロセスがある。例えば、営業組織であれば、顧客訪問や提案活動などだ。CSFとは、その中でも最重要プロセスを指す。ただし、これは数値ではない。そして最後に、KPIだ。KPIは、CSFを数値で表したもので、KGIの先行指標である。

 「CSFを見つけることが重要で、それさえ特定できればKPIの目標設定は簡単」と著者はいう。

 CSFの設定のためには、「絞り込み」が重要だ。業務をもう一段細かく分解して、そのたくさんのプロセスのなかから、最も重要なものを見極め、1つに絞り込む。

 例えば、著者の例では、ある会社が個人顧客に対して行う提案営業が挙げられている。顧客1人に1種類の提案をした場合の受注率が10%で、複数提案した場合は33%だったそうだ。このとき、CSFは「顧客に複数提案すること」と設定する。

 さらに、売上目標が1000万円で、受注の平均単価が10万円だとすると、KPIは簡単に計算できるという。1000万円÷10万円÷33%=303となり、KPIは303。つまり、KPIは303人に複数提案することだ。

KPIマネジメントサイクルは100回でも実行せよ

 KPIマネジメントの運用には「PDDSサイクル」も不可欠だという。PDDSサイクルとは著者が独自に考案した次のようなサイクルである。

1)Plan(よく考えて)
2)Decide(すばやく絞り込んで)
3)Do(徹底的に実行して)
4)See(きちんと振り返る)

 PDCAやPDSと比較すると、PlanとDoの間にDecideが入っている。DecideはKPIを1つに絞るステップだ。

 また振り返りも必須だという。失敗しても、振り返りによって組織に知恵が蓄えられる。このサイクルは何度も回すことこそ重要だと著者は強調する。Doで止まってSeeが疎かになる場合は少なくない。著者たちの振り返りも当初は年2回のみだった。そこで、See→Planを習慣化する工夫を行った。実行策を承認する際、振り返りの日程に加え、誰が、何を、どうやるかまで決めたのだ。未来日付の会議を設定した結果、振り返りは年10数回まで到達したという。

 著者のいたリクルートでは「よい事例を徹底的にパクる」ことによって他部門へ波及し、PDDSがあちこちで実践されたそうだ。最終的に全体では年間100サイクル以上を回せるようになったという。目標達成のみならず、自律改善する組織にまで高められるのが本当のKPIマネジメントだ。

 私のように、KPIと聞くとつい顔をしかめてしまう人にこそ読んでほしい。目標達成のための強力なツールを手にできるだろう。

情報工場 エディター 小國寺 次郎

情報工場 エディター 小國寺 次郎

愛知県出身。現在はメーカー企業で事業管理・マーケティングに携わる。過去に教育・研修事業分野での業務経験あり。大学では生物学を専攻。神経生理学、ニューロン活動と情報処理機構の研究に従事。生命と心、社会と経済、本と編集など非線形な「しくみ」に関心がある。趣味は音楽鑑賞と読書。敬愛する人物は松岡正剛、マイルス・デイビス、ラーメンズ。好きな本はジョルジュ・ペレック『考える/分類する』(法政大学出版)。

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