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2018年9月の『押さえておきたい良書

『気持ちを「言葉にできる」魔法のノート』

仕事も人生も切り開く! 「内なる言葉」の磨き方

『気持ちを「言葉にできる」魔法のノート』
梅田 悟司 著
日本経済新聞出版社
2018/07 112p 1200円(税抜)

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 メールや企画書を「書く」、プレゼンテーションや議論で「話す」――ビジネスではたいてい「言葉にすること」が付きものだ。そのなかで、自分の言いたいことを言葉にできずもどかしく思ったり、「もっと言葉をうまく使えたらいいのに」と感じたことが、誰しも一度や二度はあるのではないだろうか。

 本書『気持ちを「言葉にできる」魔法のノート』は、そんな悩みに応える1冊だ。自分の気持ちを言語化し、他者により深く伝えるための考え方とトレーニング手法を、やさしく解説している。本書によると言葉には「外へ向かう言葉」と「内なる言葉」の2種類があり、この内なる言葉こそ、メッセージを伝えるためのキーだという。

 著者は缶コーヒー・ジョージア「世界は誰かの仕事でできている。」などのコピーライティングを手がけたコピーライター、梅田悟司氏。2016年に梅田氏が出版した『「言葉にできる」は武器になる。』は20万部超のベストセラーとなった。同書のエッセンスを、本書では中学生の「ぼく」と妖精「コトバード」の対話形式でより実践的・具体的に紹介している。

大切なのは言葉ではなくて「内なる言葉」

“どんなにたくさんの言葉を使えても、伝えたいことがなければ意味がない。その伝えたいことこそが、内なる言葉なんだ。”(『気持ちを「言葉にできる」魔法のノート』p.38より)

 著者がいう内なる言葉とは、「何かを感じたり、考えたりするときに頭に浮かぶ言葉」だ。一方、外へ向かう言葉とは、「普段使っている、書いたり話したりする言葉」を指す。

 例えば猫を見たときに頭の中で「猫だっ! かわいい!」と思ったとする。著者いわく、これが内なる言葉である。内なる言葉は普段は「思った」「感じた」と頭の中で止まってしまうことが多いが、著者は、このとき内なる言葉が「生まれている」のだと強調している。そのように意識することで、内なる言葉の存在、つまり自分の気持ちに気づけるようになってくるのだという。

 そして、外へ向かう言葉と内なる言葉はつながっている、と著者は説く。つまり、他者へ届くように言葉をうまく使うためには、内なる言葉への気づきこそが重要なのだ。

自分と向き合い“心の根っこ”に近づく

 では、内なる言葉に気づいたあと、どのように外へ向かう言葉へと育てていくのか。本書では以下の3ステップが紹介されている。

 ①内なる言葉を書き出す
 ②内なる言葉を広げる、深める
 ③内なる言葉を使ってみる

 ①では単語でも文章でも、思いついた言葉を書き出す。すると頭の中が整理され思考の余裕が生まれてくる。②では、1つの言葉に対して「それで?」「本当に?」「なぜ?」と問いかけ、その答えを書き出す。3つの視点から思考を広げ、内なる言葉の数と種類を増やしていくのだ。そして、③では、書き出された言葉を組み合わせ、実際に話したり、書いてまとめてみる。つまり外へ向かう言葉へと仕上げていく。

 「言葉にする」とは、この3ステップを繰り返すことだ。繰り返すことで内なる言葉が深まり、豊かになれば、おのずと外へ向かう言葉も力を持ち他者に伝わるようになる、と著者は述べる。

 相手に伝わるようになるだけではない。内なる言葉に向き合うことは、自分自身と向き合うことだと著者はいう。内なる言葉をめぐり思索を続けると、次第に、自分の考えや思いの輪郭がはっきりとしてくる。すると自分の「心の根っこ」、つまり核のようなものがわかってくる。つまり、考え抜いた言葉は、自分自身の生きる指針ともなるのだ。

 上記のステップ②は、内なる言葉を始点として右・左・下へ書き出すことから「T字型思考法」と名付けられている。本書の巻末にある専用のシートをコピーして机上に置いておけば、いつでもT字型思考で言葉を磨くことができるだろう。その成果は、仕事のみならず人生の“武器”として、あなたを助けてくれるにちがいない。

情報工場 エディター 安藤 奈々

情報工場 エディター 安藤 奈々

神奈川生まれ千葉育ち。早稲田大学第一文学部卒。翻訳会社でコーディネーターとして勤務した後、出版業界紙で広告営業および作家への取材・原稿執筆に従事。情報工場では主に女性向けコンテンツのライティング・編集を担当。1年半の育休から2017年4月に復帰。プライベートでは小説をよく読む。好きな作家は三浦しをん、梨木香歩、綿矢りさなど。ダッシュする喜びに目覚めた娘を追いかけ、疲弊する日々を送っている。

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2018年9月のブックレビュー

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