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2018年9月の『押さえておきたい良書

『“出世”したければ週2回筋トレすればいい』

筋トレを制するものはビジネスを制す!

『“出世”したければ週2回筋トレすればいい』
坂本 雅俊/森本 貴義 著
扶桑社
2018/06 222p 1500円(税別)

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 恰幅(かっぷく)のいい体形と引き締まった体形。自身が思い描くビジネスマンの姿はどちらだろうか。

 本書『“出世”したければ週2回筋トレすればいい』によると、日本でも肉体改造にいそしむビジネス・パーソンが増えているという。本書は、こうしたハードワークに耐え得る気力、体力、周囲を引きつける魅力を兼ね備える者を「フィジカル・エリート」と名付け、ビジネスマンと筋トレの関係を説いた1冊である。

 著者の坂本氏は健康食品の製造・販売事業を手がける株式会社アルプロンの代表取締役。うつ病寸前からトレーニングによって心身の健康を回復した経験を持ち、ビジネスマンにとって筋トレが必要な理由を本書で説明している。森本氏は、シアトル・マリナーズ所属のイチロー選手をはじめトップアスリートのトレーナーを務めたことがあるアスレティック・トレーナーで、筋トレの具体的な方法を指南している。

出世と筋トレの関係とは

 本書は、ビジネスマンの力の源をテストステロンだと説く。テストステロンとは男性ホルモンの一種であり、旺盛な闘争心、積極性、決断力を生むとされる。

 農耕以前、人類が食物を得るために、男性は動物の狩猟を担ったとされるが(狩猟採集仮説)、このとき、遠出や危険性を伴う狩猟には、旺盛な闘争心や積極性が欠かせない。こうした「男らしさ」をつかさどるのがテストステロンであるという。現代のビジネスにおいても、闘争心や積極性は必要な要素だ。実際、最近の国内外のトップエグゼクティブには、テストステロン値が高い「強い体」が増えていると言われている。

 だが問題はテストステロンが年齢とともに減少することだ。個人差はあるが、40代で枯渇する人もいる。ストレスや不規則な生活で減少することもあるという。そこで本書がお勧めするのが、筋トレなのである。筋トレによって筋肉からテストステロンが分泌され筋肉が肥大し、その肥大がまたテストステロンの増加という好循環の関係を生むのだという。

 さらに本書は、酸素が新陳代謝のエネルギー源であることから、体づくりには「正しい呼吸」も欠かせないと指摘する。肺を動かして呼吸をするには、胸とお腹の間にある横隔膜という筋肉を動かすことが大切なことから、横隔膜を伸縮させるための呼吸法も紹介している。例えば、手を胸とお腹に置き、胸とお腹が同時に膨らむのを確認しながら息を吸い、吸う時間の倍をかけて息を吐き出すという具合である。

正しい筋トレを習慣化するために

 本書が勧める筋トレにはコツがある。2~3日おきの週2回、呼吸を止めずに心拍数を上げて行うのだ。普段の心拍数値が100ならば150くらいに上がる程度が望ましい。筋肉は筋繊維の断裂と修復を繰り返しながら増大するので、断裂するレベルの運動の強度と、修復のための休息期間が必要なのである。

 本書には自宅でできる筋トレが提案されている。例えば、両手を肩幅より少し広めてゆっくり行う膝つき腕立て伏せや、相撲の四股のように片足立ちを行うスモウ・スクワットなど、9つの運動がイラストと解説付きで紹介されている。

 もちろん、忙しいビジネスマンにとって筋トレを日常の中で実践することは難しいかもしれない。筋トレを習慣化するための案として、著者は「筋トレ朝礼」を提案している。始業前の時間で、軽いスクワットやジャンプなどの運動を同僚とともに行うものだ。通勤時のストレスをリセットし、頭と体をリフレッシュさせ、仕事への集中力を高める効果も期待できるという。トレーニングを毎日の「ルーティン」にすれば、体の変化にも気づきやすくなる。

 ビジネスマンのセルフマネジメントとしても、筋トレは身1つでできるシンプルな方法だ。まずは本書を片手に、簡単なトレーニングから始めてはどうだろうか。フィジカル・エリートになった自分の姿は、きっと格好良いに違いない。

情報工場 エディター はら すぐる

情報工場 エディター はら すぐる

香川県出身。現在、地方大学の経営企画部門で事務職として働く。財務会計システムから得られる会計情報と、業務上の報告書やそのバックデータといった非会計情報の関係付けに“たゆたう”日々。時々ワークショップを開催し、人材育成を行うことも。職業柄、人文、社会、自然と分野を問わず関心を持つように心掛けているので、読書の分野も様々。漫画も好きで、苦手な分野はとりあえず漫画から入ることにしている。

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2018年9月のブックレビュー

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