NIKKEI 100年の資産形成

2024年、シン時代へ

信時代へ 「教室」飛び出し、未来を拓こう

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学びの場は教室を飛び出し、社会全体に広がっている。どうお金を使い、社会と関わり、人生を設計するか。金融経済教育は主体的に行動し、より良い未来を切り拓く人材育成の柱を担う。2022年度から高校家庭科でも本格化した金融経済教育、その最前線を紹介する。

生きる力育む

手づくり雑巾の販売やダンスパフォーマンスの対価として、保護者や地域の大人からお金を受け取り、売り上げをふるさと納税に寄付する。小学校の金融経済教育の例だ。

「金融」の文字から専門的な内容を連想しがちだが、金融経済教育の目的はお金の働きや価値、社会の仕組みを理解し、個人の生きる力を育む点にある。先述の事例でも、児童はただ座って授業を受けるのではなく、販売商品や販売方法の企画、告知まで総合的に取り組み、より良く生きようとする姿勢を磨いた。

新NISA制度開始などで投資が身近になりつつある中、金融商品のリスクについての理解も必要だ。ある高等学校では、バブル経済崩壊前後の市況を想定した投資の疑似体験を授業に盛り込んだ。株価の上下はサイコロの出目で決まり、出目の内容は景気に応じて変わる。投資におけるリスク・リターンの関係を学ぶのはもちろん、景気変動などによる値動きへの対策を通じて長期的な視点を養う。

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教師サポートのもと資産運用のポートフォリオを作成(東京都立蒲田高等学校)
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模擬紙幣を使い、生徒が興味・関心をもてる授業に(静岡市立安倍川中学校)

社会と地続きで

生きる力は主体的に行動し、より豊かな生活や良い社会を切り拓く力といえる。家計管理やキャリア教育も金融経済教育の一環だ。

衣食住などの消費支出や各種税金の支払い、奨学金の返済などを一般的な大卒の初任給でやりくりし、家計の実態を知る授業の例もある。一人暮らしの経験がない生徒にとって、将来の生活や家計管理は想像しづらいもの。食費や家賃の相場、自由に使える金額を実感させることで、自身の人生設計を見つめ直すきっかけをつくるという。

別の学校では、それまで同校で実施した金融経済教育のまとめとして、地元商店街を活性化させる株式会社の設立をシミュレーションした。企業の種類や社会的責任、市場価格や為替の決まり方、地域の特色など、それまでに学んだ知識を生かし、事業内容を決めてプレゼンする。授業の振り返りでは、社会貢献の意義を学べたと語る生徒もいた。

多くの学校が、社会と地続きの金融経済教育に取り組んでいる。若者の学習のかたちが変わる中、大人も共に学び、良き見本であり続けたい。

家族みんなで解いてみよう
新春・家計力◯×クイズ

  • Q1

    日本の上場株式も米国と同じく1株単位で購入することができる

  • Q2

    個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)や企業型の確定拠出年金(DC)は拠出期間が終了した後も75歳に達するまでの間で受け取り時期を選択することができる

  • Q3

    3〜5歳の子どもの幼稚園・認可保育所・認定こども園などの利用料は所得制限なしに全世帯無償化が実施されている

答え

  • 【Q.1=×】日本株には単元株制度があり、2018年に売買単位が100株に統一されたため、現在は100株単位で取引をする必要がある。最近は1株単価を下げる株式分割を行う企業が増え、少額資金での投資を始めやすくなっている。
  • 【Q.2=○】iDeCoや企業型DCは、掛け金拠出期間終了後も運用だけを継続することができ、法改正により22年4月1日以降は、受け取り時期を75歳に達するまでの間で選択できるようになった。
  • 【Q.3=○】19年10月より、3〜5歳までの幼稚園、認可保育所、認定こども園などの利用料が全世帯を対象に無償化(0〜2歳までの住民税非課税世帯の子どもも対象)されており、出産や子育て支援に関する様々な制度改正も今後検討されている。