2016年3月から、日経電子版上にマイクロサイト「LEADERS VISION」を立ち上げ、エグゼクティブ層に向けた継続的な情報発信を続けるNEC。日経電子版オリジナルのDMP「NIKKEI ID BRAND CONNECT」との連携による読者像の可視化、エンゲージメントなどのデジタルマーケティングの取り組みが評価され、16年度の日経電子版広告賞 大賞を受賞した。企画の意図や狙い、具体的な効果などについてNEC CRM本部 シニアマネージャーの東海林 直子氏と、同本部 龍 阿香子氏に話しを聞いた。
東海林氏:我々が所属するCRM本部では、対面営業以外のお客様とのコンタクトポイントを統括しております。そこで、お客様とのエンゲージメントを深めながら、得られる情報を活用し、新たな商談機会創出(デマンドジェネレーション)をミッションとするデジタルマーケティング活動を行っております。 そのデジタルマーケティング活動の上流の取り組みの1つとして、ペイドメディアを活用したコンテンツマーケティングがあります。
その中でも本企画「LEADERS VISION」は、これまで接触できなかったお客様とのエンゲージメントを深めていくための最初の機会と位置づけています。
東海林氏:NECがお客様に提供できる価値やケーパビリティーを広くお客様に知っていただくことが最も大事です。オウンドメディアで発信するだけでは伝えられないメッセージや想いを「伝える」ことを第一に考えています。
そのため、商談化に向けた即効性のあるデジタルマーケティング施策というよりも、長期的なエンゲージメントを最重視。つまり、NECを正しく理解していただき、従来のイメージを変えていただく、そして新たなリクエストをいただけるような関係構築に重きを置いています。
龍氏:本施策は2016年3月の立ち上げから今日まで、全部で3つのフェーズに分けられます。第1フェーズは、2016年3〜5月末までの全4記事が該当します。まずは従来のタイアップ広告と同じ体裁の記事を掲載し、記事への誘導枠も同じノンターゲティングで実施しました。これにより今まで実施してきたタイアップ手法の効果をDMPで把握することができました。
第2フェーズは6月から9月末での4記事が該当します。第1フェーズで取得したDMPデータを分析し、読者ターゲットを部長職以上=エグゼクティブ層と定め、この方々が興味を持ちそうな記事の内容や誘導枠について仮説を立てて実施しました。スマートフォンからの誘引施策もその1つです。
10月以降は第3フェーズとして継続実施中です。第2フェーズで見えてきた事を発展させ、当社が共創パートナーとなりうるエグゼクティブ層をターゲティングしています。
龍氏:第1フェーズでは従来通りのタイアップ広告同様、現場を担当する社員がインタビューにこたえる形式や、導入事例をもとにソリューションを紹介する企画でした。
第2フェーズはターゲットであるエグゼクティブ層に響くようにテーマや切り口、語り手などを変更し、経営課題に刺さる内容と致しました。
第3フェーズでは第2フェーズの結果を分析し、エグゼクティブ層の情報ニーズを洞察して、時事潮流を押さえたテーマや切り口なども意識した記事になるように、チューニングを加えている最中です。
東海林氏:NECの経営戦略として訴求すべき「社会価値の共創」「社会課題の解決」というメッセージを中心にテーマを選定し、記事の伝え方も「経営者が自分ごと化しやすい」よう、技術中心ではなく経営にとってどんな価値を生み出すかという点を重視して編集しています。
東海林氏:オウンドメディアのアクセス分析では、従来からパソコンやサーバーなどのIT製品を中心としたページのアクセスが多い傾向があり、上述した経営戦略にかかわるテーマの訴求がしきれていないという課題がありました。そこで、「LEADERS VISION」ではそうしたメッセージを伝える役割を補完し、オウンドメディアとの相乗効果が図れるよう意識しました。
龍氏:第2フェーズに移った時に2つの手を打ちました。1つ目はエグゼクティブ層へのターゲティング配信の実施。2つ目はスマートフォンユーザーを意識し、パソコンとスマートフォンに表示させる広告比率を少しスマートフォンに寄せました。具体的には日経電子版アプリの広告枠にも誘導予算を割きました。
当初、ターゲティング配信を行うと全体のアクセス数が減ってしまうのではないか、エグゼクティブ層の比率も減ってしまうのではないかという懸念がありました。また、エグゼクティブ層はパソコンからのアクセスがメインで、スマートフォン利用が少ないのではないかとの仮説もありました。前者は読んでもらいたい相手にリーチする事が肝要と考え、後者は当社役員の利用状況を見て、実際にはスマートフォン利用が想定よりも多いのではと推測し、実施しました。
東海林氏:第2フェーズでは誘導枠の配信先を絞り込んだにもかかわらず、各コンテンツのPVもエグゼクティブ層の比率も増えました。これは、絞り込みを行っても、ターゲット層に響く内容であれば誘引力は下がらないということです。
また、オウンドメディアへの送客数も第2フェーズ以降、約7倍に増え、コンテンツに興味を持ち、より深く知りたいという意識の醸成が実現できていると考えています。こうした検証ができるのもDMPのおかげです。最初はどんなデータを見るべきか手探り状態でしたが、運用しながらノウハウを蓄積し、今の形に発展しています。
龍氏:第3フェーズでは、11月に開催した当社のイベント「C&Cユーザーフォーラム&iExpo2016」申し込み特設サイトを「LEADERS VISION」内にも開設しました。今までは、日経電子版上の広告枠からオウンドメディア上の申し込みサイトに誘導しておりましたが、今年はトライアルでLEADERS VISIONの記事閲覧者に広告を出し、LEADERS VISIONを経由して申し込みをするような流れにしたところ、多くのエグゼクティブ層の来場申し込みを頂き、さらに事前にNECへの興味を醸成できているため、実際の来場率も向上しました。
東海林氏:「LEADERS VISION」のコンテンツに接触し、NECに対するイメージや意識が変わって最終的にリアルイベントに来場していただくことができたのではないかと考えております。
読者属性を見ると、これまでNECが広くアプローチできていなかった、新規事業部門や社会ソリューションに関連のある経営企画などのビジネス部門にアプローチできたことが分かります。日経電子版のDMPの活用により、ターゲット層に合わせてコミュニケーションの手法を変え、PDCAを回す事ができ、トップアプローチにも効果が表れてきています。
東海林氏:施策開始から10カ月が経過し、期待以上の効果や成果を実感しています。今後は、デジタルからオフラインに至るNECとのコミュニケーションにどうつなげていくか、貢献度を可視化していきたいです。
具体的には、1つ目がエグゼクティブ層向けのイベントに対する送客接点を作り、新規アプローチにつなげる役割。2つ目が自社メールマガジンと組み合わせて、新しいお客様への深いナーチャリングを実現する役割。そして、3つ目が日経電子版アプリの活用による、より深いコミュニケーションを実現するという役割です。
併せてオウンドメディアの改革も進め、お客様の情報を企業単位で統合するアカウントベースドマーケティング(ABM)を強化していきたいと考えています。