Vol.15:スペシャリストの智 CREカンファレンス2017-2018 2018年成長する企業の資質とは 企業体力強化に備える不動産戦略のポイント

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【特別講演】経営者が持つべき、これからのCRE戦略の視点 登壇者:明治大学専門職大学院 グローバル・ビジネス研究科特任教授/大和不動産鑑定 エグゼクティブフェロー 村木 信爾氏

経営戦略とCRE戦略の
整合性を検討せよ

 オフィス、工場、営業所などの様々な不動産を本業のビジネスにふだんから使用している企業の場合、CRE部門は人事総務、財務会計、情報システムなどと同様に、生産・物流・販売などのバリューチェーンの全体にかかわるシェアードサービスの一種だ。その意味で中長期にわたる経営戦略とも密接な関係にある。

 CRE戦略をどのようにマネジメントし、そのサイクルをどのように回していくか。経営戦略段階では、企業全体の経営戦略とCRE戦略の整合性を検討することが重要だ。いま自社が保有・活用している不動産の調査や整理を行ったうえで、それらの価値を高め、経営に資するためにはどのような課題があるのかを抽出し、今後のCRE戦略の大きな方針とその実施計画を策定する。

 次の不動産ソリューション段階は第一段階で検討された戦略に適合するように、不動産の保有、売買、有効利用、証券化などソリューションを実行する。第三段階は、第二段階で保有することが決まった不動産の運営・管理・利用段階である。ここでは不動産活用の効率性や職場満足度、顧客満足度を高めることが課題になる。

登壇する村木信爾氏の写真

 今回はCRE専門組織を担うプロフェッショナル人材の存在に着目したい。この専門人材には大きく2つの役割がある。1つは企業組織人として経営戦略を不動産マネジメントに落とし込む役割、2つ目が優秀なサービスベンダーを選定し、発注・検収を行う役割だ。その役割には、不動産売買の経験や知識だけでなく、経営戦略を理解し、他部署や他企業とのコミュニケーションができる能力が欠かせない。

 現代に求められるCREプロフェッショナルの条件は、単に「顧客」である経営層の指示に従うことだけではなく、顧客にとっての付加価値とは何かを真剣に考えて価値共創ができる、頼りにされる人材であることだ。こうしたプロフェッショナルを育てるためには、従業員個人のもつキャリアに関する志向・価値観をベースにしながら、顧客や組織およびプライベートで良質の経験を積ませ、さらに社内外の研修を継続的に行うことが欠かせない。以上は外部のサービスベンダーについても同じことが言える。

 プロフェッショナルが顧客に向けて提供する知識には、法律、規制、統計データなどの実務的知識と、より経営的な知識や専門スキル・ノウハウの2種類ある。インターネットやAI、ロボット技術の発達で、実務的知識は必ずしも人間が介在しなくても収集・活用することができるようになる。とはいえ、こうした技術を使いながらも、顧客はやはり人に相談したいもの。経営的知識・専門的ノウハウを継続的に蓄え、自分の頭で課題を本質的に考えることができるプロフェッショナルの役割がますます重要になっている。

村木 信爾 (むらき・しんじ)

明治大学専門職大学院 グローバル・ビジネス研究科特任教授/大和不動産鑑定 エグゼクティブフェロー

1981年京都大学法学部卒業後、住友信託銀行(現三井住友信託銀行)入社。不動産部門各部、シンガポール支店、住信基礎研究所出向などを経て、2008年から大和不動産鑑定(株)にて不動産鑑定、不動産コンサルティング業務に携わる。また、明治大学ビジネススクール特任教授として、CREマネジメント、プロパティマネジメント、不動産プロフェッショナルサービス論、不動産価値分析論などを講じる。米国ワシントン大学ビジネススクールMBA、不動産鑑定士、不動産カウンセラー、FRICS。著書に『ヘルスケア施設の事業・財務・不動産評価』(共編著、同文舘出版)、『ホテル・商業施設・物流施設の鑑定評価』(編著、住宅新報社)などがある。

村木信爾氏の写真
登壇する原一史氏の写真

CRE戦略を通した企業の体力強化のサポートを

【閉会挨拶】登壇者:三菱地所リアルエステートサービス 副社長執行役員 原 一史氏

 私たちは、CREカンファレンスの開催を世界の中で日本の企業が進むべき道筋、発展する術を考える機会にしていきたいと考えている。今回も竹中氏、村木氏の講演のなかに様々なヒントがあったと思う。市場はますます多様化し、企業もオープンイノベーションなどの新しい課題に取り組まなければならない。そのためにも、より高度なCRE戦略を通して企業の体力を強化することが重要だ。私たちは総合不動産ソリューションベンダーとしてみなさまへのサポートを約束する。次回のCREカンファレンスもぜひご期待いただきたい。

(本コンテンツは2月9日付け日経産業新聞から転載したものです)

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スペシャリストの智 vol.15
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