NIKKEI 100年の資産形成

【100年の資産形成 リレーインタビュー】資産形成の潮流を語る vol.2 「ファイナンシャル ウェルビーイング」の実現へ ワンストップでトータルソリューションを提供 三井住友信託銀行 取締役副社長 山口 信明氏

経済環境がデフレからインフレヘと向かう中、「資産運用立国」の実現に向けた施策としてNISA(少額投資非課税制度)が生まれ変わった。三井住友信託銀行は、ストック資産と将来のキャッシュフローに着目したコンサルティングを強みに、資産の運用や管理、承継、不動産などを組み合わせたトータルソリューション(課題解決機能)をワンストップで提供する。そんな同社が実践する人生100年時代にふさわしい個人向けのサービスとは。取締役副社長の山口信明氏に聞いた。

環境変化で投資に関心が高まる
新しいNISAが台頭

 2023年は国内景気が緩やかに回復へと動き出した年だった。経済活動が正常化へ進む中、物価上昇に対応した賃上げが進み、日経平均株価は33年ぶりの高値水準を記録。長期金利も上昇傾向にあることから、当社でも16年ぶりに店頭金利の引き上げを実施した。また、政府が「資産運用立国」の実現を掲げ、資産運用業の抜本的な改革へ乗り出したことも奏功し、当社では既存のNISA口座の稼働率がNISA制度導入以降最高水準になるなど、資産形成に関心を持つ層が増えていることを実感している。

 長く続いたデフレ下では投資の必要性を感じる機会は多くなかったかもしれないが、足元では世界的にインフレ傾向にある。このまま本格的なインフレの時代に突入すれば、現預金の実質的な価値が目減りすることになる。デフレ環境下とは異なる危機感を持って、資産形成に向き合うことが大切だ。

 経済環境が大きく変化する中、2024年1月から新たなNISAが始まった。非課税で運用できる金額・期間が拡大したことで、個人にとっては資産運用の選択肢が広がる。生まれ変わったNISAを積極的に活用して資産形成・運用を進めていってほしいと思う。

資産を
ふやす・そなえる・のこす

 当社は、中期経営計画において『「信託の力」で資金・資産・資本の好循環を促す社会インフラ』を掲げる。約3000兆円(金融資産2000兆円、不動産1000兆円)ともいわれる個人の資産や企業の内部留保を活性化させ、経済全体の持続的な成長に向けた好循環を促すのが我々の役割だ。

 こうした経済的価値の創出と、人生100年時代の安心といった社会的価値の創出の2つを経営の根幹に据え、経済的価値と社会的価値の両立を目指している。

 そうした中で、当社では人生100年時代を安心して健やかに暮らしていくために、「ファイナンシャル ウェルビーイング」を実現する活動に力を入れている。「ファイナンシャル ウェルビーイング」とは、お金についての不安を取り除き、お金と健全な向き合い方ができるようにすることだ。例えば、定年後の人生が30~40年もの長期にわたる現在では、将来のライフイベントや年金支給額を把握し、早い段階から老後資金の準備を進めておくなどのプランニングをして実行していくことが肝心だ。

 人生100年時代の資産形成・運用に向けては、将来の支出のためにしっかり「ふやす」、不測の事態に確実に「そなえる」、そして想いに沿った形で資産を次世代に「のこす」準備を早いタイミングで進めることが鍵を握る。企業年金制度の設計・運営に携わってきた当社は、年金業務の知見と経験を生かし、金融資産や不動産といったストック資産だけでなく、退職金や年金といった将来のキャッシュフローにも着目したコンサルティングを強みとしている。

 顕在化したニーズはもちろん、潜在的なニーズにも光を当てたトータルコンサルティングを実践することで、人生100年時代のさまざまなライフステージにおける「ふやす」「そなえる」「のこす」といった多様なニーズに対して、銀行・信託・不動産を組み合わせたトータルソリューションをワンストップで提供している。(図表①)。

(図表①)三井住友信託銀行のトータルコンサルティング

イメージ図

出所:https://www.smth.jp/-/media/th/investors/presentation/230803-2.pdf

 例えば、安定的に収入のある資産形成層のお客さまは、企業型DC (企業型確定拠出年金)やiDeCo(個人型確定拠出年金)を活用した資産形成を軸に、同じく税制メリットを享受できるNISAのつみたて投資枠や、保険料控除を活用できる個人年金保険で補完するのが効果的だ。
また、これらを用いた資産形成は、税制優遇もさることながら、自分に合った方法で、長く続けられることが重要であるため、利用可能な選択肢やその特徴、将来想定を知っていただくためのサポートに力を入れている。

 退職金や相続資産などのまとまった資産をお持ちのお客さまには、NISAの成長投資枠を軸に、個人年金保険や終身保険を活用して将来の資産設計を行い、ライフイベントに応じた資金の取り崩しへの備えや相続対策の提案を行う。特に、近時は長寿やインフレなど、老後必要資金の増加に関するお客さまの関心が高く、生涯にわたる経済的安心の備えは欠かせない。

 また、シニア層のお客さまには、認知症への備えや相続対策など、不測の事態に確実に「そなえる」、そして想いに沿った形で資産を次世代に「のこす」ことの重要性に気付いていただき対策を取っていただくことが大事だ。

 このように、当社としては、あらゆる世代のお客さまに対して、最適なコンサルティングとソリューションを適切なタイミングで提供することを心掛けている。

利用者広がる
スマートライフデザイナー
小学生向け
金融経済教育もスタート

 対面でのコンサルティングに強みを持つ一方、非対面でのアプローチにも力を入れている。担当者に気軽に相談できるオンライン相談を全店舗で実践するほか、2022年4月からは公式アプリ「スマートライフデザイナー」の提供を開始した。人生100年時代に向けて「お金のミライを創る」というコンセプトのもと、ライフプランシミュレーションをはじめ、家計や資産の一括管理、資産形成に関する情報提供サービスなどの機能を持つ。来店が難しい現役世代を中心にあらゆる世代の方々の支持を得て、累計ダウンロード数は25万件超に達している。

 「ファイナンシャル ウェルビーイング」を実現するには、金融・経済に関する正しい情報収集や判断力が欠かせない。そのため、当社では金融リテラシー向上の取り組みとして、三井住友トラスト・資産のミライ研究所と協働し、以前から高校生向けの金融経済教育を実施している。2023年度からは、対象範囲を小学生まで広げるなど、資産形成のすそ野拡大にも注力する。

先行して実施した小学生向け
金融教育の様子

金融教育の様子

日本橋営業部・東京中央支店
(小岩クラブ※見学会)
※全国小学生バレーボール大会優勝チーム

金融教育の様子

阿倍野橋支店(HIGASUMI EXPO)

出所:https://www.smtb.jp/-/media/tb/about/corporate/release/pdf/231214.pdf

 2024年のNISA制度拡充を踏まえて、2022年8月につみたてNISAの対象商品を大幅に見直し、インターネットバンキング専用商品のラインアップを拡充した。新たなNISAのスタートを機に、店舗をご利用になるお客さま向けの選択肢も拡充し、これまで以上に幅広いニーズに応えられるラインアップを構築している。

 今後もNISAに限らず、人生100年時代に欠かせない商品・サービスを拡充しながら、トータルコンサルティングを通じてお客さま一人ひとりの「ファイナンシャル ウェルビーイング」の実現に貢献していく。

NISA制度(少額投資非課税制度)およびNISA口座のご注意事項
・NISA口座は、全ての金融機関を通じて一人一口座しか開設できません。(1年単位で金融機関変更可能)
・非課税口座開設届出書により開設したNISA口座について、二重開設が判明した場合は買付した投資信託は当初から課税口座で買付けたものとして取り扱われ、当該投資信託から生じる配当所得や譲渡所得等は遡及して課税されます。
・NISA口座には、特定累積投資勘定(以下つみたて投資枠)と特定非課税管理勘定(以下成長投資枠)の2つの勘定が同時に設定されます。年間投資枠はつみたて投資枠は120万円、成長投資枠は240万円までです。
・生涯に利用できる非課税保有限度額はつみたて投資枠・成長投資枠合わせて1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円)までです。また、非課税保有限度額は購入金額(簿価金額)で管理されます。
・当社におけるつみたて投資枠の対象商品は、一定の条件を満たした長期の積立・分散投資に適した公募株式投資信託のうち当社がつみたて投資枠で投資可として選定したものに限ります。また、投資方法は積立投資に限られます。
・当社における成長投資枠の対象商品は、一定の条件を満たした安定的な資産形成に適した公募株式投資信託のうち、当社が成長投資枠で投資可として選定したものに限ります。上場株式や上場投資信託(REIT・ETF)等は取り扱っていません。また、投資一任運用商品で保有する株式投資信託は、当社では対象商品とはしません。
・非課税枠で購入した投資信託を売却した後、売却した投資信託が利用していた非課税保有限度額分については翌年以降に再利用することが可能です。ただし、1年間で利用できる投資枠の上限は決まっているため、年間投資枠の上限を超える非課税枠の利用はできません。また、年間投資枠の残枠を翌年に繰り越すことはできません。
・NISA口座の損失は税法上ないものとされ、損益通算・繰越控除はできません。また、分配金のうち非課税となるのは普通分配金に限られます。
・つみたて投資枠で保有する公募株式投資信託について、当社から信託報酬等の概算値を年1回通知します。また、つみたて投資枠を設けた日から10年後、および以後5年ごとに、当社から、氏名・住所の確認を行います。氏名・住所の確認ができない場合、NISA口座での新たな投資はできません。
・このご案内は、作成時点における法令その他情報に基づき作成しており、今後の改定等により、取り扱いが変更となる可能性があります。
・作成基準日 2024年2月1日

保険商品のご注意事項
・生命保険商品には、各種相場環境等の変動等を要因として投資対象の価格変動等により損失が生じ、お受取金額が投資元本を割り込むおそれがある商品もございます。
・また、預金保険制度ならびに投資者保護基金の対象外であり、元本および利回りの保証はありません。
・お客さまにご負担いただく費用には、「ご契約時にかかる費用」「保険契約関係費用」「運用関係費用」「解約控除費用」「その他費用」がございます。
・なお、費用等の合計額・計算方法等については、商品・投資金額・運用状況等によって異なりますので、表示することができません。
・リスクおよび費用等の詳細は、各商品の契約締結前交付書面またはお客さま向け資料等をよくお読みください。

商号等「三井住友信託銀行株式会社 登録金融機関 関東財務局長(登金)第649号」
加入協会 「日本証券業協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会」

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