三菱地所リアルエステートサービス株式会社

スペシャリストたちの提言 企業戦略を考える

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Vol. 29 日経産業新聞フォーラム スペシャリストの智 CREカンファレンス 2021-2022・リポート ニューノーマルとは何か。
次世代の成長戦略を考える。

PART2 対談 2022年の不動産戦略

[対談]東京大学大学院 経済学研究科・経済学部教授 柳川範之氏、三菱地所リアルエステートサービス 企業不動産二部長 大塚 裕一
経営課題
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三菱地所リアルエステートサービスが協賛する恒例イベント「日経産業新聞フォーラム スペシャリストの智 CREカンファレンス」。1月のオンラインセミナーでは、第一部の内田和成氏の問題提起を受け、第二部は不動産研究のスペシャリスト・柳川範之氏と三菱地所リアルエステートサービス・大塚裕一部長によるディスカションが行われた。その第二部の模様をリポートする。

データとコンサルティングを活用し、
ニューノーマル時代のCRE戦略を目指す

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 新型コロナウイルス禍にもかかわらず、2021年度の不動産取引は堅調に推移している。2021年度上期の法人間の不動産取引総額は約1兆9500億円と試算される。前年同期から約38%の増加だ。三菱地所リアルエステートサービスの大塚裕一氏は「2021年度通期でも、コロナ禍前の水準あるいはそれを上回る勢いだ」と指摘する。

 大塚氏によれば21年度上期で特徴的だったのは、事業法人が自己使用するオフィスビル、工場、店舗などを一旦売却した後で一定期間賃借して使用する「セール&リースバック取引」の増加だという。「リーマン・ショック以降、一度は筋肉質になった企業体質だが、その後時代の変化で合っていない部分も出てきていた。そこにコロナ禍が発生した。余分なぜい肉をいかにそぐかがあらためて課題になってきた」ことが背景にあると見られる。

 東京大学大学院の柳川範之教授は、コロナ禍による変化の一つとして、不動産業界におけるデジタルデータ活用の重要性があらためて認識されるようになったと指摘した。

 「データ活用を通して不動産について今までとは違った評価ができるようになる。また、ビル自体がデータを集める巨大なIoT(モノのインターネット化)装置になるので、そこで働く人や行き来する人々のデータを集めることで、新しい不動産活用が進むのではないか」と予測する。

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 昨年秋に、三菱地所リアルエステートサービスが実施したアンケートでは、これからの不動産に関わる企業戦略として、固定費の見直しや管理運営費の圧縮などがある一方で、拠点移転、再編・統廃合、オフィス縮小なども検討項目に挙げられていた。

 これについて柳川氏は「今までと同じような事業を継続するのではなく、新規事業への進出や、組織の見直しに企業価値を求める傾向が見てとれる。そのためにこそ、拠点の移転や再編が重要になる。どこで人が働くのか、どこにオフィスを置くのかは事業再編の鍵を握るといってもよい」と述べた。

 このようにニューノーマル時代の経営戦略のあり方についても活発な議論が展開された。柳川氏の発言で印象的だったのは「アジャイル(俊敏な)対応力」という言葉だ。「変化は一度きりではなく、たえず起こりうるもの。目標とするゴールもたえず動く。そういう時代には、ベストな解を慎重に見極めてから動くのではなく、その都度柔軟かつスピーディーに対応を変えていくアジャイル性が必要になる」というのだ。

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 不動産の運用・活用でもアジャイルはキーワードになりそうだ。変化が継続するニューノーマルの時代には、不動産投資・活用戦略を柔軟に組み替えられるようなサービスを提供する企業の存在がますます重要になるからだ。

 自社のサービスを「企業不動産の主治医」と表現する大塚氏は「私たちの仕事は、保有不動産の価値が相場と乖離(かいり)していないか、予期せぬリスクが生じていないか定期的に観測しながらお客様のニーズに応えること。不動産を購入するのか、またはアセットを組み直すのか。市場の見通しとともに様々な手立てを見つけるお手伝いを今後も続けたい」と、不動産コンサルタントの役割をアピールした。

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柳川 範之 (やなぎがわ のりゆき)
東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授
 中学卒業後、父親の海外勤務の都合でブラジルへ。ブラジルでは高校にいかず独学生活を送る。大検を受けたのち慶應義塾大学経済学部通信教育課程入学。同課程卒業後、1993年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士(東京大学)。慶應大学専任講師、東京大学助教授等を経て、2011年から現職。内閣府経済財政諮問会議民間議員、東京大学不動産イノベーション研究センター長、スマートシティ・インスティテュート代表理事等。
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大塚 裕一 (おおつか ゆういち)
三菱地所リアルエステートサービス企業不動産二部長
 デペロッパー勤務を経て2006年に入社。13年企業不動産三部、20年4月から企業不動産二部に所属。企業不動産二部は一般法人上場企業を中心に、企業による不動産経営に対して、中長期的な視点からCRE戦略を提案する専門部署。
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瀧口 友里奈(たきぐち ゆりな)
株式会社セント・フォース/経済キャスター
東京大学工学部アドバイザリーボード
 東京大学出身。幼少期に米国に滞在。大学在学中にセント・フォースに所属して以来、アナウンサーとして活動。「100分de名著」(NHK) 、「モーニングサテライト」(テレビ東京)、「CNNサタデーナイト」(BS朝日)、日経CNBCの番組メインキャスターを複数担当するなど、多数の番組でMC・キャスターを務め、ForbesJAPANエディターとして取材・記事執筆も行う。イノベーション・スタートアップ・テクノロジー領域を中心に、多くの経営者を取材。
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