提供:株式会社サイカ

“テレビがネットを追う時代”に改めて考えるテレビCMの広告価値

東洋大学教授
慶應義塾大学名誉教授
経済学博士
竹中平蔵

株式会社サイカ
代表取締役CEO
平尾喜昭

 スマートフォンの普及やデジタルシフトの進展により、2019年にインターネット広告費がテレビ広告費を初めて超え、広告業界は新たな時代に突入した。消費者行動に対する大きな影響力をもつテレビCMの広告価値は漸減するのだろうか。それとも引き続き、大きな波及効果をもたらしてくれるのだろうか。テレビおよびテレビCMの現在の価値と将来の可能性について、元総務大臣 経済学博士の竹中平蔵氏と、株式会社サイカ 代表取締役CEOの平尾喜昭氏が意見を交わした。

竹中ゼミでの学びが後の起業のきっかけに

写真:竹中平蔵氏

東洋大学教授・慶應義塾大学名誉教授
経済学博士

竹中 平蔵

―― 総務大臣時代に地上デジタル放送開始をはじめテレビの変革に尽力した竹中さんは、テレビCMの広告効果を可視化する「マゼラン」を開発した平尾さんの恩師だと伺っています。お二人の関係とテレビとの関わり方についてお聞かせください。

竹中氏  私が総務大臣を退官し、慶應義塾大学に戻って間もないころに、私のゼミに入った学生の一人が平尾さんです。計量経済学(※経済学の理論に基づき、統計的手法を用いて経済モデルの有意性について明らかにする学問)に興味を示し、よく発言してとても目立ち、将来はどんな活躍をするのかとても楽しみな学生だったことをよく覚えています。

平尾氏  私は学生時代に音楽活動に没頭していたのですが、当時海外で活動をする機会があった際に、海外と日本とのギャップを知らなければ音楽が伝わらないと感じたのです。そのギャップの根底には経済政策の違いがあるのではないかという問題意識を持つようになったのが、竹中ゼミの門を叩いたきっかけです。もし竹中先生のもとで経済を学ばず、また計量経済学的なアプローチにも出会わなければおそらく起業していなかったと思います。また竹中先生が総務大臣時代にテレビに関わり、私がテレビ広告に関係するビジネスに携わっていることにも運命を感じています。

竹中氏  テレビは非常に重要なメディアですね。家庭と社会をつなぐ接点として大きな影響力を持っていました。テレビが大きく変わったのは「通信と放送の融合」が始まってからのことです。かつては1対1のやり取りであって“秘密”が重要な「通信」と、1対nの“公共性”が求められる「放送」という根本的な違いがありました。それがインターネットの登場によって通信でも1対nの伝達が可能となりました。

 私は総務大臣を1年しか務めていませんが、この通信と放送をどうすみ分けていくか、とくに多くの規制に守られているテレビの存在にどうメスを入れるのか、その方向性を示すことが当時の最大の関心事でした。

テレビの波及効果はいまだに絶大

写真:平尾喜昭氏

株式会社サイカ
代表取締役CEO

平尾 喜昭

―― 「通信と放送の融合」が進んだ結果、テレビはどのように変化し、どのような課題を持つようになったのでしょうか。

竹中氏  海外では技術の発展とともにテレビの役割も大きく変化してきました。米国では2010年代に大手放送事業者が通信事業者やコンテンツ事業者に巨額買収されたことも、大きな衝撃でした。

 これに伴い大きく変わったのが広告です。テレビは広告効果を適正に評価することが難しいのに対し、ネットはより明確なターゲットに広告を打つことができます。これにより、テレビ広告はネット広告に取って代わられるようになりました。テレビ業界では、広告収入が減って番組制作費が減り、番組品質が低下するという悪循環から脱出することが大きな課題となっています。

平尾氏  日本のテレビ業界は、現在まで収入を何とか維持できている状態です。リーマン・ショックではやや落ち込みましたが、東日本大震災ではとくに落ち込んではいません。しかし2019年になってネット広告費が2兆円を超え、テレビ広告費を初めて追い抜きました。この事実からもテレビ業界が岐路に立たされていることは間違いありません。

 しかしながら、テレビの波及効果はいまなお絶大です。テレビとネットの影響力を年代別に調べた英GlobalWebIndex社の調査結果によると、人々がブランドや商品・サービスを発見するのに寄与する広告は、10代ではネットが上回るものの、20代以降はテレビのほうが影響力があることがわかっています

※出典:GlobalWebIndex「Brand Discovery」(2019)

竹中氏  多くの年代でテレビの影響力が大きいのは、テレビが信頼されているメディアであることを示しています。ネット広告は供給量が無限大ですが、テレビ広告は供給量が限定され、そのぶん「権威付け」があります。米国の消費者行動は「コンシューマー・リポート」に左右されるのに対して日本の場合は多くの消費者行動が「広告」に影響されることがわかっています。それは日本がテレビ広告を信頼している証しと言えるでしょう。ただし供給量が限定されているために、中小企業にはハードルが高いところがテレビの課題かもしれません。

平尾氏  実は地方局では、テレビのほうがネットより費用対効果の点で広告費が安いという逆転現象も起きています。テレビがネットに負けるのは、竹中先生がご指摘の通り、ネットのほうが広告効果や価値がはっきりとわかるからです。テレビ広告はその部分が不透明であり、わかりづらいという欠点があります。

「テレビCM」を恐れずに利用できるようになるには

写真:竹中平蔵氏

―― テレビが抱える課題を解決するために、テレビ業界やテレビ広告を打つ企業はどんな点に留意すべきでしょうか。また、テレビCMの広告効果を可視化する「マゼラン」は、課題解決にどのような貢献をするのでしょうか。

竹中氏  日本ではコンシューマー・リポートのようなものが少ないため、どうしても消費者行動がテレビ広告に左右される面があります。そのためにテレビに対して社会のルールが厳しすぎてはいけないし、テレビに規制がありすぎるのもよい影響を与えません。

 米国ではネットが台頭してきたときに、テレビに興味深い変化が起きました。例えば報道番組では、権威があり広い視野をもつ専門家 ―― いわゆる「ビッグシンカー」が登場して、きちんと解説するというテレビならではの内容にシフトしました。日本のテレビ業界も同様に、「テレビでしかできないこと」に取り組むことがテレビ離れを食い止める方法だと考えています。ただし番組としてこの商品を勧めるといったバイアスは、ある程度自制する必要があります。

平尾氏  広告は、いまや総力戦と言えます。テレビはネットに対抗するのではなく、メディアとしての価値を高めるべきでしょう。広告に関して、企業はPDCAサイクルを回すことに恐れないでほしいと思っています。テレビCMはどうしても高額なので、費用対効果に慎重になってPDCAサイクルの話を避けたがります。

 この課題を解決するために開発したのが「マゼラン」です。弊社はもともと専門知識がなくても利用できる「アデリー」というクラウド統計分析サービスを提供していました。当初はリサーチャーといった分析の専門家が使うサービスを想定していたのですが、意外にも「テレビCMの広告効果がわからない」という企業のマーケティング担当者に多く利用されました。そこでテレビCMや交通広告、ネット広告などあらゆる広告データを統合して効果を分析できるという、マーケティング特化の分析ツールを開発したわけです。

 竹中先生には「What's the problem?」という問いを常に持つ姿勢を学びました。製品開発で大切なのは、使っている人の課題を明らかにすることです。この着想がなければ、「アデリー」から「マゼラン」へ方向転換するという決断ができなかったかもしれません。

竹中氏  当初、統計分析ツールで起業すると聞いた時、どのように発展していくのかが楽しみでしたね。競合や既存の手法が多いなか、どこに顧客のペイン(痛み)があるのかきちんと見定め、広告効果の可視化に特化した「マゼラン」に至ったのは、さすがだと思いました。

 「マゼラン」にこれから期待するのは、キャッシュレス決済との連携ですね。日本ではキャッシュレス決済を含むデジタルマーケティングを実践できている企業が少ないので、キャッシュレス決済のビッグデータが消費者行動とどうつながっているのかを分析できるツールに成長していくことを見守っています。

中長期的な経営戦略を支える存在として
オフラインメディアに期待

―― 現在のコロナ禍によって企業は改めて存在価値や事業の目的を考えることとなり、テレビをはじめとするメディアはそうした企業の姿勢を示す場としての重要性を増しています。そんなメディアに対するアドバイスをお願いします。

竹中氏  世界はこれまで何度もパンデミックに見舞われており、そのつど世界は大きく変化しました。例えばスペイン風邪の流行後に起きたのは、米国の台頭でした。SARS(重症急性呼吸器症候群)の後にはネット社会の進展が加速しました。現在のコロナ禍に起きるのは、デジタルトランスフォーメーション(DX)でしょう。DXによって日本のライフスタイルが一気に変わっていくなか、メディアにはそんな新しいライフスタイルを提案する大きな役割を担ってほしいと考えています。

平尾氏  コロナ禍の真っただ中にある現在、多くの企業は先行きが見えない不安を抱え、目先の利益を確保するよりも中長期的に安全な経営戦略を優先させています。そのためにも、事業を成長させるためにどのような施策を打つべきなのか、慎重に検討することが求められています。そのなかで最も効果を発揮できるのは、テレビをはじめとするオフラインメディアです。

 先ほど竹中先生がおっしゃったように、オフラインメディアの価値の1つは「権威付け」であり、企業がこれからの社会にどう貢献ができるかを打ち出してブランディングしていく上で最適なメディアなのです。

 中長期の分析は、限られた専門家でなければ難しいのが実情です。そうした難しさを解消し、分析のDXを推進して「誰でも分析できる環境」を提供するのが、「マゼラン」の役割だと考えています。

写真:平尾喜昭氏と竹中平蔵氏

テレビCMの効果を正しく測定する
分析ツール「マゼラン」

 「マゼラン」は、テレビCMを中心としたオフライン広告の「成果への貢献度(例えば売り上げやコンバージョン率など)」「ネット広告など他の広告へのアシスト効果」「外部要因との関連性」を可視化する統合分析ツールです。テレビCMを含むオフライン広告や交通広告、店頭施策などのあらゆるプロモーション効果をオンライン広告と統合して可視化することで、その分析結果に基づいた「成果を最大化するための予算配分案」を算出する機能を提供しています。

 「マゼラン」は、統計の専門家でなければできなかった高度な手法を駆使した統合分析を自動化することで、専門知識不要でWebの画面上からすぐに利用でき、これまで国内の広告費トップ100社のうちすでに10%以上の企業が導入しています。

スクリーンショット:分析ツール「マゼラン」

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