FENDI フェンディ
PART1 ヒネリが利いた「FFヴァーティゴ」
この夏、フェンディに登場する新作カプセルコレクション「FF ヴァーティゴ(FF Vertigo)」は、とにかく楽しい。心が弾む。元気になる。いま、まさに欲している気分にぴたりとくる。鮮やかなミモザイエローと目が覚めるようなサイバーブルーを基調に、よく見ると、フェンディのアイコンであるFFロゴが、Vertigo(めまいの意)の如く、ぐわんと歪曲している。昨年のデザインマイアミでフェンディが組んだコラボレーションのお相手、N.Yベースの気鋭ビジュアルアーティスト、サラ・コールマンのしゃれた仕業だ。サラ・コールマンといえば、ハイブランドのアイコニックな素材を、椅子やライターといった日用品に貼り替え再利用するアイロニックなアート活動で話題の人物。そんな彼女に白羽の矢を立てたフェンディのアーティスティック ディレクター、シルヴィア・フェンディの先進性と、ある意味、懐の深さに改めて脱帽する。両者を繋げ、自由で伸び伸びとした創作に駆り立てるのは、互いに秘めたクラフツマンシップへの情熱だ。「バゲット」や「ピーカブー」などヒットバッグにはもちろん、アウトドアムード満載のレディス&メンズウェアや小物にも、サイケデリックな「FF ヴァーティゴ」をオン。また、ビンテージ風のポラロイドカメラ(fendi.comで限定販売)やアレッシィとのコラボによるお弁当箱、イタリアのキャンプ用品専門メーカー、フェリーノがプロデュースするテントまで登場。各ジャンルの一流どころと組む徹底ぶりだ。伝統的なFFロゴに遊び心とヒネリを利かせた「FF ヴァーティゴ」で、またもや驚かせてくれたフェンディ。次に、そのブランドの歴史を紐解いてみる。
PART2 フェンディ、その歴史を辿る
エドアルドとアデーレ・フェンディ夫妻が、イタリア・ローマに創業したのは1926年。ファーの工房を併設した皮革小物店が出発点だ。ローマの馬具職人から受け継いだ伝統技法のステッチを、手で一針一針施したバッグ「セレリア」が1932年に誕生し、瞬く間に“傑作”として評判になる。そこからの躍進を語る上で欠かせないのが、フェンディ夫妻の5人の娘たちと、当時、新進のデザイナーであったカール・ラガーフェルドの存在だ。
娘たちの豊かなアイディアと両親譲りの物作りへの情熱、そしてカールのほとばしる才能が結集し、革命ともいえるモードを次々と打ち出していく。重くて古いイメージにとどまっていたファーを、軽くて機能的に、日常で着るファーファッションへと昇華させショーも発表。今現在もフェンディのシグネチャーでもあり、ブランドスピリットの根幹ともいえる“FUN FUR”を意味する「FF」ロゴを考案。フェンディの美意識は幅広いアイテムに続々と反映され、ローマ発、世界的なラグジュアリーブランドへと成長を遂げていく。
そして、90年代初頭、5人姉妹のアンナ・フェンディの娘、シルヴィア・フェンディが3代目として事業に参画。1997年には、バゲット(フランスパン)のように小脇に抱える大ヒットバッグ「バゲット」、そして2009年には「ピーカブー」など、世の女性たちを虜にするイットアイテムを次々と生み出し、品質と創造性、両面において“メイド・イン・イタリア”の真骨頂を体現。フェンディを成功へ導いたもの。それは、ファミリーや職人たち、受け継がれる伝統を大事にし、国境や世代を超えたあらゆる才能との先駆的なコラボレーションも楽しむ姿勢。まさに、ブランドの根底に息づく、“FUN FUR”のスピリットといえるだろう。
※この特集中、以下の表記は略号になります。H(高さ)、W(幅)、D(マチ)
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Photo: ASA SATO Editor: MAIKO HAMANO