人生100年時代を迎え、個人の資産形成の重要性がますます高まっている。一方で投資に踏み出せない人も少なくないだろう。そこで人気投資ブロガーの水瀬ケンイチさんと虫とり小僧さんの実体験も交えながら、資産形成の心構えや少額投資非課税制度(NISA:ニーサ)の活用方法について紹介していきたい。
投資ブロガー水瀬ケンイチさん
累計5000万PVを超える好評を博しているブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)」を運営。著書多数。
投資ブロガー虫とり小僧さん
ブログ「いつか子供に伝えたいお金の話」を運営。子供の頃は300匹以上のバッタを捕まえ、それを学校の教室にばらまくような虫とり&いたずら小僧。投資歴15年以上。
つみたてワニーサ
金融庁/NISA推進・連絡協議会のつみたてNISA公認キャラクター。ゆっくり慎重派だけど、みんなから信頼され愛されている。
投資ビギナーさん
社会人になり、周囲で資産形成を始める人がちらほら。自分もそろそろ始めたほうがいいかなと気になりはじめている。投資は未経験。
最近、テレビやインターネットで「人生100年時代に向けて資産形成を始めよう」という話題をよく目にします。でも、資産形成がどうして必要なのかがあまりピンと来なくて……。
資産形成では、まずは生涯にわたってどれくらいのお金がかかるか考えてみよう。人生には様々なイベントが待っているよね。人生の三大資金といわれる住宅、教育、老後資金に加えて、結婚、出産や家族旅行も。それぞれのライフイベントでお金は必要になってくるんだ。
特に今は、昔に比べて平均寿命が延びている。長生きすることはうれしいことだけど、資産形成を考える事が大事だといわれているよ。低金利が続く今、預貯金に加えて安定的な運用で資産を増やしていくことも大切なんだ。
地方に移住したり、退職してから大学に入り直したりといった、自分らしい生き方を選ぶためにもお金は必要です。「未来の自分は今の自分が支える」という言葉があるのですが、将来の選択肢を狭めないために早い時期から資産形成を始めておくといいですね。
なるほどなあ。「新しいことを始めたい」って思ったときに、やっぱりお金のことを考えますもんね。ちなみにブロガーのお二人は、そもそもどうして投資を始めようと思ったんですか?
貯蓄型の生命保険の見積もりを取ったときに「なぜ保険会社はもらった額より多い支払い額を約束できるんだろう」と疑問に思ったのがきっかけです。調べてみて、保険会社は集めたお金を運用していることが分かりました。そこで、仮に30年前に先進国株式の平均指数に投資していたらどうなっていたか、計算してみると10倍に増えていたんです。そんなに増えるなら、ということで投資を始めたわけです。
私は20代の頃は将来について考えたこともなく、貯蓄もしていませんでした。ただ、あるときふと気になって同年代の平均貯蓄額を調べてみると、意外と多くて驚いたんです。「しっかりためている人が多いみたいだし自分も」と思ってまず貯蓄を始めました。でもしばらくして「預金として置いておくだけではなく、せっかくなら増やしたい」と思ったのがきっかけですね。
将来のためにも資産形成を始めた方が良いというのは分かってきましたが、やっぱり投資は怖いイメージがあります。株で失敗したという話もよく聞きますし。リスクを取ってでも投資をした方がいいのですか?
投資と聞くと「株の売買を短期間で何度も繰り返す」といったイメージを持つ人も少なくないけれど、実は投資の方法はそれだけじゃないんだ。特に、リスクを抑えた安定運用をしていく上で覚えておきたいのが、「長期」「積み立て」「分散」の3原則だよ。
まず長期から説明するね。景気は良いときも悪いときもあるから、短い間で売り買いすると、タイミングによっては損するケースもあるんだ。でも、経済は本来、好景気と不景気を繰り返しながら徐々に成長していくもの。長い時間をかけて運用した方が結果として安定して利益を出せるといわれているよ。
ワニーサの言う通り、長期運用の考え方はとても大切です。実際に投資を始めても「ちゃんと増えてきたな」と効果を実感できるのは20年くらい先のことです。でも、ようやく今になって結果が出ているからこそ、「あのときに始めてよくやった!」と昔の自分に感謝しています。
僕も以前、株価の暴落によって資産が大きく減る経験をしたことがあるのですが、歴史を振り返ってみても景気は循環するものだと理解していたので、やめずに投資を続けました。実際に景気はしっかり回復したので、焦って売却しなくて本当に良かったです。
次のキーワードの積み立ては、毎月など特定のタイミングで決まった額を購入する方法だよ。一定額を買い続けるから、購入価格が安くなったときは買う数量が増え、高くなったときは減ることになる。そうすることで全体の購入価格がならされて、損失のリスクが抑えられるんだ。
そして三つ目のキーワードの分散は、一つの企業だけに投資したり一つの国だけに投資するのではなく、投資先を複数に分けること。そうすることでもし一つの企業の株価が下がっても、他の企業の株価が上がって損失をカバーする可能性があるから、やはりリスク軽減につながるんだ。
積み立て購入は相場が悪くても「逆に商品を多く買えるチャンス」と、前向きな気持ちになれるのが良いところですね。
購入のタイミングを考える必要が無いから、手間がかからないのもメリットの一つです。私も投資を始めた頃はパソコンの画面とにらめっこして、保有している株の値段が上がったらすぐ売るような取引をしていて、株価が気になって仕事にならない日もありました。日常生活を確保しながら続けられるのも、積み立て投資のポイントだと思います。
リスクを抑えられて、しかも難しいことを考えなくていいなら私にもできそうです。それではまずは何から始めればいいのでしょうか?
初心者が積み立て投資を始めるなら、やっぱりNISAを利用するのがおすすめだよ。
NISAが良いっていう話はよく聞きますけど、なぜおすすめなんですか?
NISAは、株式や投資信託などで得た利益に税金がかからない制度なんだ。通常、投資で得られる配当金や値上がり時の差額分である売却益には約20%の税金がかかるけれど、NISAならゼロ。利益がそのまま手元に残るんだよ。制度は全部で3種類あるよ。
一般NISA | つみたてNISA | ジュニアNISA | |
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対象年齢 | 20歳から | 20歳から | 0〜19歳 |
年間限度額 | 120万円 ※2024年から年間122万円 |
40万円 | 80万円 |
運用時の税制メリット | 非課税5年間 | 非課税20年間 | 非課税5年間 |
購入可能な商品 | 株・投資信託・ETF・REIT | 一定条件を満たした投資信託とETF | 株・投資信託・ETF・REIT |
備考 | 2028年で終了予定。つみたてNISAとの併用不可。2024年に新NISAへ移行 | 投資可能期間は2042年までの予定。一般NISAとの併用は不可 | 2023年で新規投資枠は終了。同年まで、原則18歳まで非課税での引き出し不可 |
私はつみたてNISAでは買えない商品の一つである海外の上場投資信託(ETF)を購入したかったので、一般NISAを選びました。
僕はつみたてNISAとジュニアNISAで、世界中の株式を中心に色々な資産をバランス良く保有できる投資信託を購入しています。一般NISAでも同じ商品を最大10年、非課税枠で持つことは可能なのですが、水瀬さんが話すように、国際分散投資の効果を実感するには20年は欲しい。つみたてNISAは一般NISAよりも非課税期間が長いので、長期投資の恩恵を得やすいと思います。
ジュニアNISAはこれまで子どもが18歳になるまで引き出しができなかったのですが、2023年の12月末に制度が終了すると18歳未満でも(全解約であれば)いつでも換金できるようになるので、使い勝手は上がりましたね。
初心者はどれを選べば良いのでしょうか?
買いたい商品で選ぶのが良いと思いますが、特になければより長期保有がしやすく、少額から始められるつみたてNISAが良いと思います。
購入できる投資信託もすべて金融庁の基準を満たす商品だから、初心者でも安心して選べるのもポイント。だから最初はつみたてNISAを活用して、長期・積み立て投資の感覚をつかんでほしいな。安定した運用に必要なのはやはり長期、積み立て、分散の考え方。現状の一般NISAも24年から投資信託の積み立て購入が前提となる制度に変わるけれど、それも多くの人にまずは三つの原則を体感してもらうためなんだ。
資産形成にはつみたてNISAがいいんですね。さっそく今から始めてみます!
ちょっと待った、勉強せずにいきなり始めるのはあまりおすすめできません。お金の流れや商品の仕組みといった資産運用の基本を学んでから始めるのがいいですよ。基礎知識があればリスクの大きい資産を見抜くこともできますからね。
ただしそんなに構えなくても大丈夫です。本を一冊読むだけでもしっかり知識をつけることができます。
ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)」はこちら
今はインターネットでも情報を集められるから便利ですよね。お時間があったら、投資の実体験について赤裸々に書いてある僕たちのブログをのぞいてみてくださいね。
ブログ「いつか子供に伝えたいお金の話」はこちら
金融庁のホームページ「NISA特設サイト」でも「教えて虫とり先生」や「つみたてNISA早わかりガイドブック」を公開しているので、よかったら参考にしてみてほしいな。
金融庁「NISA特設ウェブサイト」はこちら
直接話を聞きたかったら、金融機関が相談にも乗ってくれるんですね。その場で口座も開設できるみたいだし、行ってみようかな。
投資を始める前に「いざ」というときの生活資金を確保しておくこと。もし預貯金があまりないという方でも「毎月の収入から貯金は何割で、何割は投資に回す」といったルールを決めて進めても良いかもしれませんね。
まずは勉強と預貯金の用意というわけですね……。頑張ります!