NIKKEI 100年の資産形成

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あなたの投資の決まり手を見つけよう

UPDATE:2020.10.02(Fri.)

新型コロナウイルスの感染拡大以降、先行きが不透明になる状況を踏まえ、資産形成への感心が高まっている。10月4日の証券投資の日を契機に投資を本気で考えてみてはいかがだろう。

新型コロナウイルスの感染拡大以降、先行きが不透明になる状況を踏まえ、資産形成への感心が高まっている。10月4日の証券投資の日を契機に投資を本気で考えてみてはいかがだろう。

解説二 コロナ禍で重要性が増す 最新トレンドを見学

ここではコロナ禍で重要性が増すESG投資をはじめとした最新トレンドを、キーワードごとに紹介。自身の投資判断に役立てよう。

今の時代の最注目 「ESG投資」部屋

 新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、環境問題や社会問題などに対応する企業に投資を行う「ESG投資」が、再注目を集めている。ESG関連のETFへの資金流入は、2020年1〜4月のコロナ禍で一気に増え、たった4カ月で19年の1年間を50%ほど上回ったという。

 そもそもESG投資とは、Environment(環境)・Social(社会)・Governance(企業統治)への取り組みを重視した投資だ。投資先の選定で企業の売り上げや利益などの業績・財務情報に加え、環境や社会に配慮した経営を行っているかどうかを判断基準とする。

 今回の新型コロナウイルスによって「E(環境)」に配慮した経営を行う企業への投資が注目されている。さらに健康面では、従業員の感染リスクに配慮してリモートワークや時差出勤を導入した企業などは「S(社会)」の要素の、労働環境の改善への取り組みといえるだろう。

 ESGに配慮した経営を行う企業や、関連する投資信託・ETFなどに投資を行うことで、間接的な社会貢献につながる。国内でもESG関連の投資信託の設定が相次いでおり、既に浸透しつつある機関投資家はもちろん、個人投資家の間でもこれからESG投資が本格化する可能性がありそうだ。例えば格付投資情報センター(R&I)では、ESG情報の分析、発信体制を強化している。参考にしてみてもいいだろう。

[E]環境(Environment):地球温暖化対策、エネルギー使用量の削減、二酸化炭素(CO2)排出量の削減 [S]社会(Social):ダイバーシティー、女性従業員の活躍、ワークライフバランスへの取り組み [G]企業統治(Governance):取締役の構成、倫理規定、ステークホルダーに対する責任

FD実践度を判断する目安に! 「格付け」部屋

 投資の判断は、第三者的な立場にある格付け会社の評価も参考になる。例えばR&Iでは、国債や社債の利払いや償還能力について第三者的に評価を行っている。格付けはAAA(トリプルエー)が一番信用力が高く、AA、A、BBB――といった順番で9段階評価に分かれている。格付けの低い債券の利回りは高くなるものの、BBB以上であれば信用度が比較的良好だと考えられている。

 またR&Iでは「フィデューシャリー・デューティー(FD:顧客本位の業務運営)」の観点から、金融機関の投資信託の販売姿勢を判断するために「顧客本位の投信販売会社評価(投信FD評価)」も行っている。一般の人が金融機関のFD実践度を判断する際に一つの目安となるかもしれない。

 投信FD評価は金融機関から依頼を受けた格付け会社が内部資料の分析のみならず、経営陣や販売担当者へのインタビュー、金融商品の販売実績と掲げる方針が一致しているかなど多面的な調査を実施する。例えば、顧客本位の営業方針を掲げているにもかかわらず利益優先の販売目標を立てていたり、販売手数料など収益を重視していたりすると高評価は得にくいようだ。

 評価ランクとしては「SS」が最も高く、それに「S+」「S」「A+」「A」「B」「C」が続く。投信FD評価は、各金融機関の公式ホームページや店頭窓口などで公表。個人投資家はそれらの評価を、金融機関のFD実践度を判断する一つの目安として参考にしてみたい。

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「非接触」がキーワード! 「デジタル投資」部屋

 日本経済新聞社がまとめた20年度の設備投資動向調査によると、企業のデジタル投資の計画額は前年度実績比15.8%増と、大幅に増える見通しだ。新型コロナウイルスの感染拡大で集計企業全体の設備投資額が1.2%減ったものの、IT(情報技術)関連の設備投資は積極的だといえる。コロナ禍で接触が制限される中、非接触や遠隔での環境を支えるデジタル技術への投資は今後さらに加速しそうだ。

 この流れは金融機関でも起きている。分かりやすい例では、個人取引のデジタル化が挙げられる。例えばテレビ会議システムを導入し、来店しても非対面で専門家と相談できる店舗も増えている。さらにモバイルアプリなどを通じてネット上でも相談できるなど、デジタル化による業務効率化とともに、コロナ禍における「密」にならない空間づくりも進む。

 そのほかにも店舗窓口にタブレット端末などを設置し、書類の記入や印鑑を押す手間が不要で、端末内で各種申し込みが完結する環境の整備。さらには営業員にタブレット端末を配布して、出社せずとも基幹システムを扱う業務を実行できるといった事例もある。

 RPA(ロボットによる業務自動化)による手作業業務の自動化や、人工知能(AI)を用いたデータ分析を通じて顧客に合った商品の提案、いつでもアクセス可能なモバイルアプリの機能強化など、各金融機関のデジタル投資は進む。

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投資の神様も読み込む! 「アニュアルリポート」部屋

 アニュアルリポートとは「年次報告書」のことで、1年間の活動内容や成果、将来の予測などをまとめた冊子だ。経営内容に関する総合的な情報が掲載されている。基本的には株主や金融機関などの関係先に配布する資料だが、各社の公式サイト上で公開されているため、一般の人も閲覧可能。投資先企業の全体像を把握する際に役立つだろう。

 アニュアルリポートの配布は、米国では法律で義務付けられているが、日本では任意だ。とはいえ、関係者へ情報公開をする必要性から日本でも作成する企業が増えてきている。

 日本では、決算短信や有価証券報告書などの開示は法律で義務付けられているが、アニュアルリポートは規定の様式があるわけではない。法律で義務化された資料ではないため、フォーマットが自由だ。そのためインフォグラフィックスを用いて情報を可視化するなど、各社ごとに情報の「見せ方」は異なる。

 アニュアルリポートには財務情報のみならず、長期投資で重要となる企業のビジョンや社風、経営者の考え方や今後の戦略など、数値化できない情報も掲載されている。それゆえ企業の持続性という観点から、長期の戦略と現在の企業活動が一貫しているかなども確認できるだろう。投資の神様として知られるウォーレン・バフェット氏も、年間数百社のアニュアルリポートを読んで投資する企業を探してきたといわれている。

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投資信託と株の特徴を持つ 「ETF」部屋

 「日銀がETFを買い入れ」という新聞記事を目にしたことがあるかもしれない。最近では20年3月16日の金融政策決定会合で、ETF買い入れ額を一時的に12兆円に倍増する姿勢を示した。

 金融緩和の一貫として日銀の買い入れ対象にもなっているETFは「上場投資信託」と呼ばれ、株などと同様に金融商品取引所で売買できる。ただ、株式投資のように個別の企業に投資を行うわけではなく、特定の指数の動きに連動する運用成果を目指した商品だ。例えば日経平均株価への連動を目指すETFを1本買うだけで、225社の国内企業に投資していることになる。価格の上げ下げは個別の企業の株価に依存しないため、価格変動のリスクを抑える効果もある。

 市場で売買可能なETFは、株式と同様に需要と供給のバランスによってリアルタイムで価格変動するといった特徴がある。投資先は国内外の株式や債券はもちろん、不動産や金、原油などと種類が幅広い。なお株の配当金や投資信託の分配金と同様、ETFも分配金を受け取ることができる。

 さらにETFでは、「マーケットメイク方式」の導入によって流動性が担保されている銘柄もある。マーケットメイク方式とは、意図的に売買を活性化させる仕組み。マーケットメイカーと呼ばれる専門の会社が一般投資家に代わって注文を出し続けることで流動性を高めている。この仕組みによって個人投資家は自身に適したタイミングかつ適正な価格で取引できる。

ETF=Exchange Traded Fund 株式:取引所に上場しリアルタイムで売買可能 投資信託:1ファンドで幅広い銘柄へ分散投資が可能 1:手軽に分散投資ができる 2:値動きがわかりやすくコストが安い 3:取引所でリアルタイムに売買できる

家庭科で資産形成の授業開始! 「金融教育」部屋

 22年度から始まる高校の新学習指導要領では、家庭科の授業で「資産形成」について指導することが決まった。家庭科の先生が株式や債券、投資信託など基本的な金融商品の特徴を中心に教えることになる。金融庁も出張授業や教材づくり、教員を対象にした投資イベントなどを通じて、授業の準備を後押ししていくという。

 例えばサポートの一環として学校の先生を対象に、つみたてNISAやiDeCoといった税優遇制度のほか、「長期・分散・積み立て」投資の効果について理解を深めてもらうイベントなども開催される。

 とはいえ、資産形成だけが金融教育ではない。欧米では「所得と支出」「クレジットと借金」「貯蓄と年金」といったテーマも学校で教えている。日常的に使うお金を管理し、将来的に必要となる資金を計画する方法などを身に付ける狙いがあるようだ。

 学校での金融教育に加えて、親が子に近い将来必要となるお金の知識を伝えることも大事になってくる。そこで親がお金の知識を勉強するのと同時に子ども向けの学習コンテンツなども活用したい。

 新型コロナウイルスの影響でオンライン学習が浸透するなか、ネット上で視聴できる金融・経済情報系の動画コンテンツなども増えている。人生100年時代に備えて金融教育の必要性が高まる中、親子で金融・経済を学べるコンテンツなども活用していきたい。

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