NIKKEI 100年の資産形成

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資産形成の伴走者を見つけよう! 金融期間との上手な付き合い方

付き合う金融機関を見極める 顧客本位の業務運営をきっかけに投資環境も変化

UPDATE:2020.06.26(Fri.)

金融機関の取り組みを
第三者が中立的に評価

 2014年にNISAが登場し、17年にはiDeCoの加入対象者が拡大。さらに18年にはつみたてNISAもスタートと、ここ数年で個人の資産形成を後押しする制度は充実してきている。こうした制度の登場によって個人の投資環境が整う一方で、投資信託などを販売する金融機関にも大きな変化があった。

 そのきっかけとなったのは、17年に金融庁が金融機関に対して「フィデューシャリー・デューティー(FD:顧客本位の業務運営)」を求めたことだ。FDとは金融業界で「金融機関が顧客に果たすべき義務」を意味する。

フィデューシャリー・デューティー(FD)とは?

FDでは企業だけが一方的に利益を追求するのではなく同時に顧客利益の追求も求められる

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 FDの実現のために顧客利益の追求や手数料の明確化など、金融機関が取るべき行動原則も示された。強制力を持つものではないが、実施しない場合はその理由や代替案を明確にすることが求められている。

 さらに金融庁は行動原則を各金融機関に定着させるため、顧客本位の業務運営を実践していくための取り組み方針や自主的なKPI(達成度合いを測る指標)、他社との比較が可能な共通KPIの公表も促している。例えば共通KPIの一つに「運用損益別顧客比率」がある。これは顧客が保有する投資信託などの成績が、購入時からプラスとマイナスのどちらの比率が多いかを表現したものだ。つまりプラスの成績を獲得している顧客の比率が多いほど、その金融機関は顧客の利益を追求した商品を販売しているといえる。

 このような金融庁の取り組みをきっかけに、各金融機関はこれまで以上に顧客の資産形成に寄り添う伴走者としての役割にシフト。その結果、投資環境も大きく変化してきているといえるだろう。

金融機関の取り組みを「見える化」し、FDを促進

取り組み方針・自主的なKPI・共通KPIを公表する金融機関は年々増え、行動原則の浸透・定着が進んでいる。

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※「自主的なKPI」設定社数は、取り組み方針やその実施状況においてKPIを公表している事業者を集計。「共通KPI」公表社数は、3指標の共通KPIのうち、1指標以上公表している事業者を集計
※資料:金融庁

 ここにきてFDの観点から金融機関の取り組みを民間の第三者が中立的に評価する仕組みも整っている。それが、格付投資情報センター(R&I)が実施している「顧客本位の投信販売会社評価(投信FD評価)」だ。

 投信FD評価は、金融機関から依頼を受けたR&Iが内部資料の分析のみならず経営陣や販売担当者へのインタビュー、金融商品の販売実績と掲げる方針が一致しているかなど多面的な調査を実施する。同社投資評価本部の担当者は「顧客本位の営業方針を掲げていても利益優先の販売目標を立てていたり、内部の人事評価で顧客基盤(預り残高、顧客数)の拡大よりも、販売手数料など収益を重視していたりすると高い評価は得られにくい」と話す。さらには投資信託を選ぶプロセスが適切かどうかなどもチェックする。

 評価ランクとしては「SS」が最も高く、その次に「S」「A」「B」「C」と続く。このような第三者評価によって「経営陣と現場の販売戦略の温度差が埋まり、受けたフィードバックを基に業務の改善が進むなど、金融機関が変わるきっかけになる」(同社投資評価本部担当者)という。

 投信FD評価は各金融機関が公式ホームページや店頭窓口などで公表している。個人投資家はそれらの評価を金融機関のFD実践度を判断する一つの目安として参考にしてみたい。

「R&I 顧客本位の投信販売会社評価」の全体像

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