2020年以降のインバウンドニーズをけん引する目玉の一つとして期待を集めているのが、IR(Integrated Resort=統合型リゾート)だ。国内でのIR開業に先駆け、IR関連事業に参入しているピクセルカンパニーズは、アニメやゲームなどのコンテンツを持つ企業と組み、日本ならではのカジノゲーミングマシンの開発に乗り出している。同社の吉田弘明社長に、IR関連事業への参入の背景、今後の戦略などを聞いた。

「クールジャパン」を日本型IRの強みとして訴求

マカオのIR施設

――ピクセルカンパニーズという会社について紹介してください。

吉田プリンター周りの消耗品販売事業からスタートした当社は、1986年の創業以来、ビジネスを多角的に発展させてきました。現在は大きく3つの事業を展開しています。1つ目はフィンテック・(あらゆるモノがネットにつながる)IoT事業、2つ目は太陽光発電所の開発・販売といった再生可能エネルギー事業、そして3つ目が、IR関連事業です。当社では「クールジャパン」はじめ、日本独自のコンテンツなどを盛り込んだカジノゲーミングマシンの企画から開発・製造を手掛け、世界に向けて販売しています。

世界市場でのビジネス展開はもとより、今後本格化するであろう国内のIR事業でも中心的な役割を果たすため、マカオやシンガポール、ラスベガスなど、世界のIR施設を実際に訪れて視察を重ね、現地の制度なども学びながら、知見やノウハウを蓄積しています。

カジノゲーミングマシンの開発のプラットフォーム構築

One Stop Solution

――カジノ関連市場で、ピクセルカンパニーズはどのような役割を果たすのでしょう。

吉田当社が開発したカジノゲーミングマシンのベースプラットフォームは、国際的なゲーミングマシンの試験機関であるBMM Testlabsの基準適合と、世界で最も厳しいといわれているマカオの監理部門にあたるDICJ(博彩監察協調局)から承認を得た実績があり、これは非常に大きな強みです。我々は、そのカジノプラットフォームを各企業へ提供することで、国内外のカジノで日本のコンテンツが活躍する未来を創りたいと考えています。

カジノ市場には大きなポテンシャルがある一方で、カジノゲーミングマシンの開発には、いくつかの参入障壁があります。はじめに、国やエリアごとに設けられているレギュレーションを正確に理解すること自体が困難で、特に新規参入の企業はゲーミングマシンの監理部門から承認を得るためにトライ・アンド・エラーを繰り返していくことになります。一般的には5年程度の期間を要しますが、当社は3年でマカオDICJから承認を得ることができました。さらには、カジノごとに異なる要望をくみ取り、それぞれのカジノに合わせ改善・開発をする必要があります。代表的なところでは、複数のゲーミングマシンを連動させる技術や、入出金をスムーズかつ正確に管理するためにゲーミングマシンとカジノの会計システムを連携させる技術などがあります。

日本でも今後、カジノ管理委員会が設置され、様々なレギュレーションが設けられることになります。当然、そういったレギュレーションに適合するゲーミングマシンを開発しなければいけません。数年後に日本でIR施設が開業するにあたり、海外での経験やマカオDICJからの承認は、我々にとって大きなアドバンテージになると思っています。

カジノゲーミングマシンを開発し、国の監理部門から承認を得るには、多額の投資と高度な専門人材が必要なので、多くの企業にとって、参入障壁はかなり高いのが実情です。当社は、日本のIRの独自性を支え、国際競争力の源泉となりうるのは、アニメやゲームをはじめとする日本独自のコンテンツ力だと考えています。そこで、魅力的なコンテンツをもつ企業に、当社のゲーミングマシン開発の技術力やノウハウなどを活用していただくためのプラットフォームを構築しました。このプラットフォームを通じ、"Made in Japan"の魅力的なマシンを国内外に発信していきます。

日本の文化や観光資源が国内IRに魅力を与える

吉田弘明社長

――今後のビジョン、日本のIRを成功させるために必要なことをお聞かせください。

吉田IRの世界市場を見渡す中で、日本ならではの文化の魅力や、ビジネスとしてのシーズを改めて実感させられる機会がしばしばあります。アニメやゲームのほかにも、温泉や和食など、日本には海外の人に喜ばれる観光資源が数多くあります。IRというと、カジノのイメージが先行してしまいますが、実際には、カジノを敷設できる面積は施設全体の3%までで、97%は会議場や宿泊施設、テーマパークなど、複合的な観光集客施設で構成される予定です。例えば、浴衣で散策しながら日本の縁日を体験できるようなエリアがあってもいいかもしれませんね。既存の発想にとらわれず、「日本ならではの文化を活用した新たな観光施設をつくる」という発想を持てば、様々なチャレンジができるはずです。

現在、日本各所でIR誘致を表明する自治体も増えてきており、今後の「IR誘致合戦」はさらに加速していくことになるでしょう。ただ、地域の理解を無視したIRは成立しませんから、丁寧なコミュニケ―ションを重ね、しっかりとしたコンセンサスを形成することが重要です。我々もIR事業者コンソーシアムへの参画に向け、このような取り組みに努力を惜しまずに向き合っていきます。

今、日本型IRはようやく端緒についたところです。IRを通じ、日本発のコンテンツで世界中の人を引きつけるビジネスに携われるのは、私個人にとっても非常に誇らしいことです。今後も国内外のプレーヤーと連携を図りながら、人口減少などによる国内市場の先行き不安感を払拭する「希望の灯」として、IR事業の発展に向け注力していきます。