日本通運 未来を運べVOL.4「ハイファッション」

高品質で均質、グローバルな物流サービスで
ラグジュアリーブランドの世界観も届ける

高品質で均質、グローバルな物流サービスでラグジュアリーブランドの世界観も届ける

高品質で均質、グローバルな物流サービスでラグジュアリーブランドの世界観も届ける

 世界のハイファッション業界は、実店舗から電子商取引(EC)へという販売形態の多様化とともに、商品ラインアップもライフスタイル全般へと変化が進む。日本通運の取り組みを産業分野ごとに紹介するシリーズ企画「日本通運 ― 未来を運べ」。Vol.4ではハイファッションを取り上げる。同社はイタリアの同業2社買収を契機に本格的にハイファッション分野に参入、存在感を高めている。グローバルネットワークと豊富な輸送力を生かした日本通運のファッションロジスティクスの強みを紹介する。

イタリアのグループ3社が
経営統合 
最大限にシナジー生かす

 日本通運にとってハイファッション分野は5つの重点産業の一つだ。現在遂行中の「日通グループ経営計画2023」では、2023年度の国内売上高目標を2018年度比58%増の245億円と定め、取り組みを強化している。20~30年前からハイファッションブランド数社をはじめアパレル産業のフォワーディングは手掛けていたが、大きな転機になったのは2013年イタリアの大手フォワーダー、フランコ・バーゴの買収だ。日本通運は、欧州で電機や自動車といった領域の事業を展開する中で、成長を続けるハイファッション業界の未来を見据え本格参入を決意、ハイファッションブランドの国際間輸送に強いフランコ・バーゴを買収した。2018年にはハイファッションの倉庫保管・配送サービスを手掛ける同じくイタリアのトラコンフをグループ化。2020年1月には、より一層取り組みを強化するため、フランコ・バーゴ、トラコンフ、イタリア日本通運のグループ3社を経営統合した。

 経営統合後の社長は、フランコ・バーゴのアルナルド・ビボリ氏が務める。氏は「フランコ・バーゴとトラコンフはハイファション関連に強みがあります。日本通運はさまざまな産業分野で、高品質で均質な物流サービスをグローバルで手掛けています。3社の強みを最大限に生かすことで、充実したサービスと専門性を提供するハイファッションロジスティクスのトップ企業の仲間入りができました」と語る。スケールメリットを生かした購買力、価格競争力もアップし、このセクターにおける同社の日本国内の売り上げは過去5年間でほぼ10倍まで急成長した。ビボリ氏は「常に顧客の声に耳を傾け、カスタムメイドのソリューションを柔軟に提案する力」を自社の強みとして挙げた。

2020年1月、フランコ・バーゴ、トラコンフ、イタリア日本通運のグループ3社が経営統合 ▲2020年1月、
フランコ・バーゴ、トラコンフ、
イタリア日本通運のグループ3社が
経営統合

イタリア日本通運アルナルド・ビボリ社長▲イタリア日本通運アルナルド・ビボリ社長

欧州からアジア、
日本国内の配送まで一気通貫で

 ハイファッション事業でも日本通運が誇るグローバルネットワークは強みだ。フランコ・バーゴとトラコンフのネットワークに、日本をはじめアジア地域に強みを持つ日通のネットワークが加わるメリットは大きい。同社航空事業支店部長の大辻智常務理事は、「欧州系の競合他社は日本やアジアの空港や港までは運ぶことができても、その先はほかの業者に委託するケースがほとんどです。我々はタグ付けや検品などの付加価値サービスも含め、一気通貫、エンド・トゥー・エンドで業務を担うことができます」と強調する。

 大きなバイイングパワーを示している中国は、これまで国外への旅行中にハイファッションブランド商品を購買する人が多かった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で海外旅行需要が減少する一方、中国国内での購買が増えると予想される。今後は、チャイナ・プラス・ワンに代表される東南アジアでの市場拡大も期待されている。ハイファッション事業のグローバル展開でも、アジアはポテンシャルの高い市場なのだ。「日本市場の魅力も見逃せない」と言うのは、同社ファッションロジスティクス部長のロドルフォ・トゥローラ氏だ。大辻常務理事も「ハイファッションは、日本で人気になると他のアジア地域で売れ出す流れがある。東京に路面店を構えるのはブランドのイメージ戦略として重要な投資なのです」と説明する。

食品、食器、家具など、
ライフスタイル全般に広がる
商品群

 トゥローラ氏はハイファッション市場の近年の特徴として、動きの速さを挙げる。「以前は春夏と秋冬の2シーズンでしたが、今は年間行事に合わせた新しいコレクションも加わります。商品の入れ替えに合わせフレキシブルなサポートが求められるようになりました」(トゥローラ氏)。衣服からライフスタイル全般へと商品ラインアップが多様化している点も大きな流れだ。大辻氏は「食品、食器、家具などの物流は洋服とは異なります。日本通運はこうした商品も扱っていますから、ハイファッションブランドのライフスタイル展開には大きなチャンスがあると考えています」と期待する。

 日本通運のフレキシブルな対応力と豊富な輸送力は、既に新しい仕事に結びついている。例えば、ニューヨークの五番街から大きなオブジェを航空輸送し、翌朝には東京・表参道のブティックに並べる。銀座の店舗に、一夜で華やいだクリスマスデコレーションを設置。エレベーターやオートバイを運んだこともある。東京でのファッションショーのロジスティクスもサポートした。各ブランドにはクリエーティブディレクターが定めた世界観があり、世界各地で共有しなければならない。千差万別なリクエストに応え、ラグジュアリーブランドの世界観も届けられるのは日本通運グループならではの強みだ。

ファッションロジスティクス部長のロドルフォ・トゥローラ氏、航空事業支店部長の大辻智常務理事 ▲ファッションロジスティクス部長の
ロドルフォ・トゥローラ氏、
航空事業支店部長の大辻智常務理事

RFIDなら、5~10mの距離からスキャナーをかざすだけでハンガーラックに掛かった数十着の製品情報を読み取れる▲RFIDなら、5~10mの距離からスキャナーをかざすだけで
ハンガーラックに掛かった数十着の製品情報を読み取れる

RFIDタグ、
ブロックチェーンなど先進技術駆使し、
ECにも対応

 ECへの対応も不可欠だ。1オーダー当たりの数量が減り件数が増えることで、新しい業態に適合したソリューションが求められる。ハンガーで保管するもの、たたみもの、バッグ、靴、小物など多種多様なアイテムに対応する作業処理能力、倉庫設計では倉庫内の空間利用率が重要なポイントになる。これまで培ったノウハウだけでは競争優位を維持できなくなる可能性もあるのだ。同社は課題解決に向け、先進技術の活用やロボティクスへの投資も進めている。

 一例が無線自動識別(RFID)タグの活用だ。既にハイファッションの顧客にRFIDタグとスキャナーを提供するサービスを始めた。トゥローラ氏は「倉庫だけでなく店舗の棚卸しにも効果的。バーコードよりやや高価ですが、RFIDなら3割ほど効率が上がります」と話す。RFIDが広がれば、盗難防止の視点でもブロックチェーン(分散型台帳)技術と組み合わせる流れが進みそうだ。日本通運は、ECとともにオムニチャネルへの対応も視野に入れている。イタリアでもIT化に注力する。イタリア日本通運のビボリ社長は「ITセクションを設け十数人のスタッフを配置。物流管理プログラムの開発を専門とするソフトウエア会社と契約し、専門性の高い画期的なソリューションを提供できる体制を整えました」と話す。

「メイド・イン・イタリー」の
パートナーとして、
世界で存在感高める

 ハイファッションの世界は、かなりの部分をイタリア人のネットワークで形成されている。今回の3社統合でも、ビボリ社長、ピスティリ副社長はイタリア人。大辻氏は「3社統合で、日本通運に欠けていたハイファッション界の人脈、営業力が加わりました。日通グループ独自のネットワークと輸送力とともに、全てを合わせ持つのは我々だけではないでしょうか」と自信を示す。現在トゥローラ氏を中心に、日本で培ったハイファッションの輸配送・倉庫管理システムといったビジネスモデルのアジアでの横展開を進めているところだ。

 新型コロナの影響で、昨年のハイファッションのマーケットは大幅に減少した。しかし、イタリア日本通運ビボリ社長は「こういう世の中だからこそ、ライフスタイル全般に美や本質的なモノを探求する傾向が高まっています。憧れのブランドを選ぶ人も増えており、ハイファッション分野の成長は今後も期待できるしょう」と解説。続けて氏は、「我々の、世界への参入は始まったばかりですが、“メイド・イン・イタリー”製品の確固たるパートナーとして世界でのプレゼンスを高めつつあります。日通グループのネットワーク、高品質で均質な物流サービスを生かしながら、グループ全体にノウハウを共有することで、世界中のハイファッション業界に事業を拡大したい。その実現に向け革新し続けます」と力強く語った。