生産ラインの延長線上として、
グローバルに最適な物流ソリューションを提案
自動車業界は100年に1度といわれる大きな変革期を迎えている。完成車メーカーから部品メーカーまで、「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」対応は喫緊の課題だ。日本通運の取り組みを産業分野ごとに紹介するシリーズ企画「日本通運 ― 未来を運べ」、Vol.2では自動車部品物流を取り上げる。サプライチェーン(供給網)のグローバル化、メーカーごとに異なる生産体制、国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」やBCP(事業継続計画)への対応など、日本通運が支える自動車ロジスティクスの現状と課題、将来展望などを紹介する。
受発注の代行から納期管理、
通関、船積みまで包括的に
同社のグローバル展開の端緒となったのは中国だ。2003年、日産自動車の中国展開に合わせ、日本通運も中国に進出した。初めはミルクランだけだったが、2006年からは、中国で製造した部品を海外の各工場に向けて輸出する業務を包括的に受託している。業務内容は、受発注の代行から納期管理、荷姿設計、KPI管理などの間接業務から、倉庫での入荷検収、荷姿変換、コンテナ詰め、通関、船積みの進捗管理まで広範囲に及ぶ。また、部品が海外の工場に届くまでの輸送情報を部品発注単位で進捗を管理、報告する。物流だけでなく商流なども担うLLP(リード・ロジスティクス・プロバイダー)として業務を遂行するケースも最近増えている。
永井氏は「一口に日系自動車メーカーと言っても、生産方式や輸送モード、品質やコスト要件などはメーカーごとに異なります。弊社の強みは、各社の作法を理解していることと、グローバルネットワークです」と話す。さまざまな顧客にサービスを提供しているからこその“気づき”がある。「他社での成功事例を提案に織り込むことでお客さまに響くケースはよくあります」と続ける。日本通運は、それぞれのメーカーの微妙な“さじ加減”を理解しながら、サービス内容を水平展開することで顧客を広げていった。日系メーカーだけでなく、ボルボ、フォルクスワーゲン、上海汽車など非日系企業の顧客も数多く抱える。中国事業を担う日通汽車物流(中国)の喩永鴻部長は、「具体的なKPIを用いて業務精度を評価し、効率アップ、コスト削減、改善対策を検討しながら顧客満足度を高めるよう心掛けています」と胸を張る。
中欧クロスボーダー鉄道輸送で、リードタイム短縮
日本通運のグローバル展開は着実に進んでいる。インドでは、スズキの子会社マルチスズキなどにミルクランと長距離輸送サービスを提供。同国はアフリカへの供給拠点になると見られており、「将来有望なインド・アフリカ間の貿易拡大に、自動車部品物流で貢献したい」と永井氏は期待を寄せる。北米では、ホンダ、トヨタ、マツダなどの生産体制の変化に合わせた門前倉庫を構え、米・メキシコ間の物流も担う。
自動車の電動化・自動化を背景に部品物流が大きく変化しつつあるのが欧州だ。こうした潮流を捉え日本通運は、「中国欧州間クロスボーダー鉄道輸送サービス」を構築。欧州の都市と上海や大連など中国各地を結ぶ越境鉄道サービスで、自動車部品を大規模に輸送する。「今後、欧州のメガ・サプライヤーと日本の部品・素材メーカーによるEV(電気自動車)関連部品の大陸間輸送ニーズは高まる。航空輸送より安価で船舶輸送より迅速な新たな輸送モードとして確立していきたい」と永井氏は意気込む。一方で電動化への対応では、EVに欠かせないリチウムイオン電池など電子部品の輸送はより繊細で、より一層輸送時の可視化が求められる。