世界に広がる「スポーツニュートリション」市場

アスリート向けから一般層にも、
グローバルにビジネス展開めざす

アスリート向けから一般層にも、グローバルにビジネス展開めざす

池本眞也氏/長瀬産業株式会社 取締役 兼 執行役員 1961年生まれ。1984年同志社大学商学部卒業、長瀬産業入社。自動車材料事業部長、名古屋支店長などを経て2015年執行役員、18年取締役就任。2019年に買収したアメリカ大手食品素材販売・加工会社プリノバ・グループ会長も務める。

木佐彩子氏/フリーキャスター 1971年生まれ。小中学校時代を米で過ごす。青山学院大学卒業、フジテレビ入社。当時ヤクルトスワローズの投手・石井一久氏と結婚。氏のメジャーリーグ移籍に伴い渡米。帰国後フリーアナウンサーとして復帰。

 化学品や食品素材を扱う商社でありながら、製造や加工、研究開発の機能も備えたユニークなビジネスモデルで事業を広げている長瀬産業。同社は今、健康志向を背景に日本でも広がりを見せる「スポーツニュートリション」に注力している。長瀬産業の池本眞也取締役とフリーキャスター木佐彩子氏との対談を通じ、「スポーツニュートリション」の日本での可能性、NAGASEグループの戦略を展望する。

アスリート向けだけではない
「スポーツニュートリション」の広がり

「スポーツニュートリション」は日本でも少しずつ注目され始めていますね。

そうですね。「スポーツニュートリション」は、運動をする際、筋力強化や疲労回復を目的に取り入れる栄養素材のことです。筋肉のもととなるたんぱく質の摂取を補うプロテインが知られていますが、他にも集中力をアップさせる栄養素、汗と一緒に流れ出る鉄分やミネラルを補給する栄養素などがあり、最終製品もドリンクやフード、サプリメントなど多種多様です。運動前・運動中・運動後でとりたい栄養素が異なるんですよ。

アスリート向けだけではない「スポーツニュートリション」の広がり

夫の石井一久も、チームに専門のトレーナーがいると言っていました。アメリカでは、アスリートはもちろん一般の人たちにも「スポーツニュートリション」が浸透しています。スーパーの棚にたくさん商品が並んでいました。

「スポーツニュートリション」は、石井さんのような一流アスリートだけのものではなく、ウオーキングなどの軽い運動をする人でも生活に取り入れることができます。そういった意味でアメリカは「スポーツニュートリション」先進国ですね。アメリカでは8,000万人くらいがスポーツをしていて、約8割が何らかのサプリメントを飲んでいるという統計もあります。

池本眞也氏

幼少期にアメリカで生活していたころにも、子ども向けのお菓子にも栄養素材が入った商品がありました。食事はピザで済ませ、足りない栄養素はサプリで補えばいい、という考えに当時はすごく驚きました(笑)。

最近では、血液検査をしてアレルギー反応などを調べてから、自分の体にあったニュートリションを摂取するという流れがトレンドになっています。これからは、個人に合った「カスタムメイド」に近い製品が増えていきそうです。

素材のブレンド・味付けに強み
トップクラスの米プリノバを傘下に

NAGASEグループには、食品向けの素材を取り扱うプリノバ・グループ(米国イリノイ州)がありますね。この会社も「スポーツニュートリション」に強みがあるのでしょうか?

食品素材の取り扱いで米国トップクラスのプリノバを、昨年約650億円で買収しました。プリノバは、ビタミンやアミノ酸、タウリン、アルギニンといった2000種類以上の食品素材をグローバルに取り扱っており、これらの素材を自社工場で配合したプレミックス製品を大手食品・飲料メーカーに供給しています。先ほどお話ししたように、「スポーツニュートリション」は「運動前・運動中・運動後」で摂取したい成分が異なり、複雑な配合技術が求められるのですが、プリノバはこの配合技術が高いのが強みで、最終製品を受託製造するOEM生産の機能まであります。

Prinova Group 紹介映像

特に他社と差別化できている点は、香りや味をコントロールする“味付け”の技術です。たいていの場合、素材をただ混ぜるだけではおいしくならないので、臭みを消したうえでおいしい味を付ける必要がありますが、同社には「フレーバリスト」という国家資格を持つ社員がいて繊細な味付けができます。例えば、お客様が何かの食品を持って来られて「これと同じ味に」とリクエストされれば、その味を再現します。「フレーバリスト」の資格取得には10年ほどかかり、アメリカで数百人しかいない非常に貴重な人材ですが、同社には何人も正規の「フレーバリスト」がいます。ちなみに私のお気に入りはチョコミント味です。

私たち日本人には、抹茶味やほうじ茶味があるとうれしいですね。

実は、アメリカでも今はやっているのは、抹茶、ほうじ茶なんですよ。日本の皆さんにもより親しんでもらうためには、味付けはもちろんですが、日本人の体に合ったブレンドが重要だと考えています。

先日久しぶりに実家に帰ったら、プロテインの袋があったのでびっくりしました。80代の父にとっても、必要な栄養や適切な量、摂取するタイミングなどをアドバイスしてもらえる場があれば、「スポーツニュートリション」はもっと身近になりそうです。もちろんおいしいことも大事ですよね。日本は、「スポーツニュートリション」の市場という意味では、アメリカに比べるとまだ小さいように思えます。

木佐彩子氏

「スポーツニュートリション」の市場は現在約2兆円、2025年にはさらに伸長するといわれています。今は市場の7割近くがアメリカで、日本はアメリカの20分の1くらいしかありません。プリノバは欧米の大手食品メーカーなどを多数顧客に抱えており、NAGASEグループでは、プリノバが持つ販路を使い、今後急成長が期待される日本や中国をはじめとするアジア地域でシェアを拡大していこうという戦略を立てています。アジアでもプロテインはすでに知られていますが、それ以外の製品も伸長し始めています。

グローバルの「スポーツニュートリション」市場規模

日本も、栄養を食事だけでとろうとあまり頑張り過ぎないで、甘えられるところはサプリなどに甘えてもいいと思います。高齢化社会でもありますし、ちょっとしたライフスタイルの変化で元気な高齢者が増えたらいいですね。

各社の機能を掛け合わせ、
グループ全体で新しい価値を提供

プリノバ以外にも食品素材ビジネスを担うグループ会社があるそうですね。

はい。まずは、食品の製造工程で香味や食感の改善に用いられる様々な「酵素」を長年製造しているナガセケムテックスという会社があります。また、2012年に、お菓子などに使われているトレハロース(製品名「トレハ®」)を製造する林原がグループ会社になりました。トレハロースは自然界にも存在する糖質ですが、1990年代に同社が商業化に成功して大量生産できるようになりました。今ではコンビニのおにぎりやパン、和菓子・洋菓子など様々な食品に使用されています。運動時のエネルギー補給などでの効果も確認されています。同社のヘスぺリジン(製品名「林原ヘスペリジン®S」)という自然由来の機能性素材も、プリノバの技術と販路を活用することで「スポーツニュートリション」製品としての用途が広がっています。

NAGASE食品素材ビジネス概要

素材を製造したり開発したり、長瀬産業さんは私が知っている商社像とはちょっと違うように感じます。

はい、不思議な会社なんです(笑)。もともと化学を基盤としていて理系・技術系出身者が多いからなのか、単にモノを買って売るだけでは飽き足らず、機能や技術の深いところを追求したいという社員が多いですね。また、長瀬産業は商社ですが、国内外のグループ会社を見渡せば、幅広い分野でとがった製品を製造しているメーカーもたくさんあります。林原、プリノバ、ナガセケムテックスなどそれぞれの強みに、グループで取り組んでいるバイオの基盤研究、商社としてのグローバルネットワークなどを掛け合わせて、NAGASEグループだからこそ生み出せる新しい価値を提供していきたいですね。

NAGASEグループさんのビジネスが広がれば、日本の「スポーツニュートリション」にも新しい風が吹きそうです。

ありがとうございます。私たちはスーパーの棚に並ぶ最終製品をつくったり、誰もが知っている製品のCMを流したりする会社ではありませんが、「スポーツニュートリション」向けの新しい素材、新しい配合、新しい製品づくりを提供・提案することで、皆さんの健康な生活に貢献できたらと考えています。期待していてください。

楽しみにしています。

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