吉住謙
1993年、株式会社トーメン(現豊田通商株式会社)に入社。94年に日米欧の風力発電所のマネジメント・ファイナンスに従事し、2001年には株式会社ウィンネックスを設立。翌年には英国の大手デベロッパーと共同開発会社を設立し、全国で風力発電事業の開発を推進。06年に株式会社市民風力発電と共に北海道、東北、北陸にて多数の市民参加型風力発電所を開発し、13年に株式会社市民ソーラーシステム(現株式会社CSS)を設立。全国で多数の再エネ事業の開発を推進。
https://cssc.co.jp/

INTERVIEW

「30歳になったら独立しよう」。何の根拠もなく、そんな夢を持って総合商社に就職しました。風力発電事業に関わったのが人生の転機となり、30歳で風力発電を生涯の仕事にしようと決めて独立して以来20年以上、風力発電所の開発に人生を捧げてきました。価値観が多様化した現在、人生のあり方は一通りではありません。若い人には、自分にとって一番いい生き方を考え、それをもとに会社でトップを目指す、私のように起業する、少人数でやりたいことを丁寧に続ける、フリーランスで活躍するなど、仕事の枠組みも自由に発想して、自ら考え、結論し、実践していってもらいたいと思います。

風力発電という、電力の未開拓分野に挑戦

吉住謙

総合商社入社4年目の1997年、27歳のときに社内スカウトの声がかかり、風力発電事業部に異動しました。当時は、米国ではカリフォルニアの砂漠に大規模な発電所が建設され、欧州では地球温暖化対策に再生可能エネルギーを活用すべきだという機運が高まっていた時代でした。そうした中、私が勤めていた商社では、海外で手がけてきた風力発電をいよいよ日本にも導入することになり、その最初のプロジェクトに参加しました。
かつての電力事業は、地域ごとの電力会社が独占していましたが1995年から電力の自由化が始まり、新規事業者の参入が可能になりました。民間に電力事業の未開拓分野が拓(ひら)けたわけです。日本での風力発電所設置は、地震が多いこともあって建設基準など許認可が厳しく、地権者も多いなど、海外のスキーム通りにはいきませんでした。そうした中、市民参加型で風力発電をしようという団体との交流も生まれ、「自分たちで風力発電所を誘致して地球環境にやさしい電力をつくろう」という姿に感銘を受けました。そんな時に30歳を迎え、「独立するなら、日本のパイオニアとしての知見のある風力発電しかない」と思いました。

起業したとはいえ、当時は私も、再生可能エネルギーが日本のエネルギーミックスを担う重要な電源の一つになるとは思っていませんでした。電力はさまざまな電源を組み合わせて、季節や時間に応じた需要量を発電して供給しますが、再生可能エネルギーは自然頼みのため、発電量の調整が難しいのです。しかし二酸化炭素(CO2)削減が世界的な問題となり、大容量蓄電池の開発が進むなど技術の進歩も助けとなって、風力発電をはじめする再生エネルギーが、日本の電力総需要の相当の部分を賄える時代が目前にきています。

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フロントランナーとしての強みを生かす

現在日本の風力発電を手がけている企業の多くが大手企業か大手ファンドの傘下にある中、当社は社員約20名の小所帯で、私はそれを「個人商店」と言っています。しかし当社には、風力発電の黎明(れいめい)期から約20年間、用地選定から気象条件の調査、発電量予測、環境アセスメント、機種・設備選定、電力会社・建設会社との協議、許認可手続き、資金調達、施工管理を一貫して手がけてきたという豊富な経験があります。発電所稼働後は、遠隔監視システムや出力調整システムの構築など、運営面の支援を行ってきた実績があります。他方、気象観測・予測能力が向上したことで、風速や風向を、詳細な地域、時間ごとに予想できる時代になりました。また、大容量のサーバーが安価に借りられるようになり、優秀なツールもたくさん出回っています。こうしたインフラを活用すれば、ファイナンス面も含め、当社がフロントランナーであるからこそ有している経験やデータを強みに、大手企業に伍す事業を展開していくことができます。

現在私は、そんな風力発電に魅力を感じて集まってきた仲間たちと一緒に働いています。私が仲間たちに言う口癖は「苦手なことをするな、得意なことだけをしろ」です。当社は30代から中途採用で入社した社員が多く、それぞれ自分の仕事文化をもっています。そこに私のやり方を強制してもうまくいきません。そうであれば、「再エネLOVE」という共通点を軸に、各自が得意なことを生かすほうが仕事の効率もよく、楽しく働くことができ、明日の活力になるはずです。
私にとって仕事とは、「生きるための権利であり、人生の友」です。ワークライフバランスとは言いますが、仕事が充実しているからプライベートも充実している、家族がいるから仕事を頑張れる、家族を愛せるから仲間も愛せるというように、仕事はプライベートと切り分けられるものではなく、生きていくために絶対に必要なものです。また、人生には辛い時期があり、仕事に集中できないこともありますが、打ち込むべき仕事があることに助けられるという意味では、友のような存在だと言えます。私は、経営者として皆がそう思えるような会社を作り、一緒に歩んでいきたいと考えています。

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