柳澤泰章
1960年生まれ、東京都葛飾区出身。慶應義塾大学経済学部を卒業後、大手電機メーカーに入社。その後94年に株式会社東京アプレイザルに入社し、その後2000年までにファイナンシャルプランナー資格のCFP登録、不動産鑑定士登録と次々に資格を取得し、不動産鑑定士として従事。2010年に株式会社東京アプレイザル取締役を務めたのち、18年に同社代表取締役就任。
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INTERVIEW

依頼を受けた不動産に、公平な立場から適正な価格をつけるのが不動産鑑定士の仕事です。不動産は似たようなものはあっても同じものは一つもなく、どれも個性があります。評価の仕方や価格水準も多様なので、飽きることがありませんし、面白いですね。同時に、評価を決定する時が一番怖い瞬間でもあります。私のつけた価格が正式な書類となって世に公表されるわけですから「本当にこれで正しいだろうか」と毎回悩みます。それでも、私たちの鑑定によって依頼者の方の人生や生活、資産にメリットを与えることができ、喜んでいただくことが何よりの喜びですね。

おでん屋での出会いが不動産鑑定士を目指すきっかけに

柳澤泰章

大学を出て、本当は大手広告代理店への就職を目指していましたが、かなわず大手電機メーカーに入社し、宣伝部で10年以上働きました。サラリーマンを一生続けるつもりもなく、かといって他にしたいことがあるわけでもなく、仕事が終わると毎晩飲み歩いて遊んでいました。
ある時、六本木のおでん屋で友人の婚約者を交えてお酒を飲んでいて、仕事は何をしているのか尋ねると「不動産鑑定士事務所に勤めている」と言うのです。この時初めて、不動産鑑定士という仕事があることを知ったのでした。そして彼女が「人を裁くのが弁護士、会社を裁くのが公認会計士、不動産を裁くのが不動産鑑定士」と教えてくれたことが強く印象に残っていて、もしかしたらこれは一生の仕事になるかもしれないと興味を持ちました。本屋で資格のことを調べてすぐに勉強を始め、翌年3月に会社を辞めて、7月には試験に合格することができました。おでん屋での出会いがなければ今の私はなく、サラリーマンのままでそれなりの人生しか送れなかったでしょう。
試験合格後、知人に東京アプレイザルを紹介されました。不動産鑑定士の事務所なら正直どこでもよかったのですが、紹介されたところが縁だと思って、入社を決めました。一般企業と比べると、士業特有の理論的でオタクっぽい雰囲気は感じましたが、意外とすんなりなじむことができましたし、自分には合っていると思いました。
先代の社長から経営を引き継いでもらえないかと打診されたのはそれから24年後のことです。今までお世話になった恩返しができると思い、二つ返事でお受けしましたが、打診されるまではまさか自分が社長になるなんて考えもしませんでした。経営状態に問題があるわけでもなく順調だったので、この状態を維持しながら少しずつ自分のカラーを加えていこうと思いました。

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官よりも民の仕事としてお客様に寄り添いたい

従来、不動産鑑定士は税務署や役所の下請け的な「官」の仕事でした。今でもそこに甘んじている鑑定士はたくさんいます。しかし、私たちは鑑定を「民」の仕事として使うことで、お客様の人生に密着して貢献できると考えています。人に寄り添いながら様々な問題を解決していくことが私たちの存在価値ではないでしょうか。
現在のところ、不動産鑑定評価を使った相続申告実績は私たちが全国トップです。今は、不動産鑑定士という仕事のことも含め、私たちのことを外に向けて発信することに注力しています。特に税理士の方々とのつながりは不可欠なので、ネットワーク作りのために全国1200の税理士事務所に無料の業務提携サポートをしているところです。あと2年で3000事務所まで増やしたいですね。税理士さんの顧問先である個人富裕層や中小企業の経営者の方々に対して、不動産鑑定でお役に立てることがあるはずです。
また、セミナー事業も経営の軸の一つになっています。これまでは税理士や不動産業者を対象に専門的な知識を提供していましたが、コロナ禍でオンライン化が進んだことで、より幅広いコンテンツを開発できそうです。一気にターゲットを拡大できるチャンスなので、楽しみですね。数年後には、不動産鑑定に限らず、富裕層のコンサルなどの新しいビジネスに着手しているかもしれません。
最終的な目標は、不動産のことで困った時に「東京アプレイザルに相談すればいい」と名前を思い浮かべてもらえるような会社になることです。ソニーやアップルのように、最先端であり独創性があり、その商品を使うことで感動を提供できる、そんな企業を目指したいですね。

私は今まで比較的恵まれた人生を送ってきました。そのおかげもあって、悪いことがあっても悲観せず、次はいいことがあると信じることができます。私にとっての道しるべは、常にチャレンジすること、諦めないことです。今まで私は仕事で諦めたことはありませんし、そのことは自分の力になっています。
諦めればその時点で成長は止まりますし、そこそこの人生で終わってしまうでしょう。それも楽かもしれませんが、若い人たちには、一度きりの人生、自分が世界を動かしてやるというくらい大きな目標をもって、チャレンジしてもらいたいですね。

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