土田昌一
1953年生まれ、大阪府出身。信州大学医学部卒業後、81年から虎の門病院外科病棟医として勤務。91年に日本リハビリテーション医学会認定臨床医となる。98年、神奈川県の鶴巻温泉病院副院長に就任。翌年同院院長に就任し、東京医科歯科大学臨床教授も務める。2004年から在宅リハビリテーションセンター成城センター長、翌年から成城リハビリテーションクリニック院長を兼務。10年、東京都目黒区にリハビリテーションクリニックREHAB TSUCHIDAを開院。日本AKA医学会認定指導医/専門医。
http://www.rehab-tsuchida.com/

INTERVIEW

医者と患者がリラックスして向かい合い、時には冗談を言い合って大笑いする。普通のクリニックと少し傾向が違う診察スタイルは、リハビリテーションの現場に立ち続けて感じた「話し合い」の大切さを第一に考えてたどり着きました。本当に必要なのは、一方的な会話で診断した病名に従った処方ではなく、患者さんの持つ可能性を引き出す治療なのです。そのためにまずは充分に話し合い、症状の原因を深く推理して治療を施します。患者さんの驚きや感謝の声を引き出したとき、ともに心から喜び、技術や知識の探索を続けたいと思えます。

人が好き、人と関わりたいという根底の想い

土田昌一

子供の頃の記憶をたどると、幼稚園に行きたくなくてスネてばかりだったのを思い出します。特に新しい服が嫌で、わざと汚してみたり水に濡れたり、理由をつけてはサボっていました。小学校に上がっても同じようにシャイで無口な子供でしたが、ある時狂犬病の犬にかまれてしまったのです。高熱を出し意識を失ったものの、なんとか一命を取り留めると、性格が明るく人懐こくなっていたそうです。おそらくそれまで他人に遠慮して、無意識に制御していた部分がなくなったのだと思います。しかし、中学、高校と受験校で一生懸命に勉強するうち、またも人から離れるようになりました。大学では宇宙物理学に興味を持ち、京都大学を目指しましたが、2浪ののち諦めて早稲田大学に入学。電子工学を学び始めましたが、今度は人との関わりが薄いことが辛くなったのです。子供の頃に楽しく人とコミュニケーションを取っていたことを思い出し、やっぱり人が好きなのだから、人と関わる仕事がしたいと思いました。

人と関わり、人のためになる医者になろうと決めたものの、人からとやかく指示されるのはやはり苦手です。信州大学の医学部卒業を控えた試験で、教授の出した問題に抗議したところ、留年してしまいました。翌年に同じ試験を受けるほか、なんの予定もない1年になったので、アルバイトと勉強に費やしました。アメリカから論文や教科書を取り寄せて読み込み、徹底的に勉強した結果、内科分野の知識は一区切りついたので、卒業後は外科病棟医を選びました。さらに、人の心や感情をつかさどる脳について詳しくメカニズムを知りたいと考え、脳神経外科に移って10年ほど脳外科医として勤めました。

脳外科での手術後に必ず必要になるのがリハビリテーションです。患者さんがどんなリハビリテーションを行うかは、担当医が患者さんの現状能力を正しく評価する必要があります。無理なリハビリテーションプログラムは「いじめ」や「しごき」になりかねません。この評価制度が興味深く、脳神経外科でリハビリテーション担当を受け持ちました。日本リハビリテーション医学会の認定臨床医となり、専門医にも認定されたころ、神奈川県の鶴巻温泉病院の経営に携わってほしいと声がかかりました。回復期、慢性期、終末期と多機能のリハビリテーションを受け入れる病院です。特に回復期(自宅に帰ることを目的とする)の患者さんのリハビリテーションプログラムを、自宅でも続けられる内容に作り替えました。さらに、患者さんの身体の痛みや動きの不自由さを解消する一助としてAKA療法(関節運動学的アプローチ-博田法)に着目し、日本AKA医学会認定の指導医・専門医を取得しました。

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患者さんの笑顔と言葉を引き出す診療

2003年にハワイのホノルルで合同カンファレンスが行われ、日本代表として講演を行いました。この時の主催であるPacific Rehabilitation Hospitalが、「REHAB(リハブ)」の愛称で親しまれていたのです。気軽に愛称で呼ばれるような、愛される病院になろうという考えに共感し、さらに「リハブ」と途中で区切るのは、あくまで医療者は患者さんに回復のきっかけを作る存在だという私の考えも表現できると思いました。この愛称と、南国の美しいストレリチア(極楽鳥花)の花を用いたロゴを気に入ったので、「もし開業する時にはこの2つを使いたい」と頼んだところ、こころよく許可をいただきました。

2004年から、訪問や在宅診療を中心としたリハビリテーションクリニックの院長を務めました。これまで身につけてきた、脳神経外科とリハビリテーション科、そしてAKA療法の知識を取り入れた多面的な「リハブ」を追求したいと考えるようになり、2010年に現在のリハビリテーションクリニック「リハブ土田」を開業しました。患者さんがリラックスできる環境づくりを徹底して行い、明るく開放的な空間で診察しています。白衣も着ません。時には友達のように冗談を交えて語りかけ、好きなように話していただくのです。すると、過去のけがなど本人も忘れていたような出来事が、現在悩まされている症状につながっていると分かることがあります。患者さんとよくお話しして、引き出した情報を整理して、新旧の医学知識を調べ尽くした上で治療法を選ぶ。このシンプルなやり方の繰り返しです。

最近は患者さんも「回復のきっかけづくり」という考えをよく理解して、リハビリテーションではなくリハブと言う方が増えました。スタッフを先生ではなく「さん」付けで呼び、気軽になんでも相談しに来られる方も多くなりました。私は飽きっぽい性質ですが、開業後は全く飽きを感じることなく、今年で10年目です。毎日自分の目と手で患者さんに接し、色々な考えを巡らせ、工夫して知識と実践を組み合わせるのが楽しいのです。そうして、体が楽になった、できることが増えたと喜ばれると私もうれしいですね。患者さんが前向きに生きていけるきっかけづくりができるクリニックであるために、学び続け、探索を続けたいと思います。

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