高崎朗
医学博士、総合内科専門医、漢方専門医、認知症専門医、老年病専門医、スポーツドクター。東京都出身。東京医科大学を卒業後、同大学病院・高齢診療科にて急性期脳梗塞、認知症診断、血液ガン診療に従事。同大学院進学後、同生化学教室にて友田燁夫教授(現名誉教授)のもと抗ガン剤治療研究。医学博士号取得。同病院総合診療科・漢方外来にて矢数芳英医師に師事。立川メディカルセンター悠遊健康村病院出張、漢方・総合内科外来を開設。2017年、東京女子医科大学病院・総合診療科・漢方部門にて中医学臨床研修。世田谷中央病院を経て、19年小田クリニック入職。
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INTERVIEW

私には尊敬するドクターがたくさんいますが、決して誰かのようになりたいとは思っておりません。花が何かに似せて咲いているわけではないように、人も十人十色で自分が輝く色があるはずです。私が目指すのは、他の誰でもない「最上の私」。常に最上であるためには、苦労を惜しまないことが大切です。現状に満足すればすぐに退化してしまうので、新しいことに挑戦し続けていきたい、これには自分として心を高く持つことが必要だと考えています。

「未病」という概念

高崎朗

七代以前から続く医師の家系に生まれ、白衣を羽織って階下へ降りていく父の背中を毎日見て育ったので、私が医師に憧れを抱くようになったのは自然なことでした。また我が家は音楽家一家でもあり、私も幼い頃からピアノと合唱、絵など芸術に夢中になりました。一時は美術系大学へ進むことも考えていました。
初期研修を終えた後、大学病院の高齢診療科に勤務しました。重症な高齢患者さんは歩いて退院できるケースは1割程度であり、大半が療養型病院へ転院していきます。その後延命できようとも、それは「寝たきり」であり健康寿命ではありません。私はその現状を目の当たりにしてショックを受け、「もっと異なる治療手段もあるのではないか?」と思うようになりました。
そこで着目したのが、東洋医学の「未病」の概念です。未病とは病気の症状が現れる前の状態を指します。発症してから病院にかかるのではなく、未病の段階で発見、治療することで、患者さんの負担を軽減でき、健康寿命を伸ばすことにもつながります。その後、大学病院では総合内科専門医となり、漢方外来の矢数芳英先生のもとで漢方を深く学ぶことができました。
日本では、医師は誰でも漢方薬を処方できますが、そもそも国民皆保険制度下での漢方エキス剤の種類は乏しく、加えて容量自体は少ない傾向にあり、医師の判断で増量することは保険医療上許されていません。処方した容量で結果が出なかったり、一つ二つ生薬を足すこともなく「漢方は効かない」と思われることはとても残念です。また、保険診療では「この病名に対し、この漢方薬」というように投与することが多く、決して悪いことではないのですが、個人で効果に差が生じることが多々あります。
東洋医学では『木を見て森を見ない』傾向にある西洋医学に対して、「証」を診る弁証法という診断法があります。患者さんの全体像をみる「望診」や、「脈診」や「腹脈」、声や呼吸音を聞く「聞診」など、東洋医学独自の診断プロセスで個々の患者さんの状態や体質を見極め、オーダーメイドで処方構成を考えるのが本来の漢方医学です。医師は現代医学と共にこのスキルも学ぶ必要があります。漢方の効能書きだけを見て「この漢方を出してください」とおっしゃる患者さんがおられますが、ご希望通り処方しても、思うように効果が出た例がありません。

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一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイドのハイブリッド治療

今、私がクリニックで取り組んでいるのは、現代医学的検査で患者さんに最適な再生医療、免疫治療をプランニングし、そこに漢方医学的治療を組み込んだオーダーメイドのハイブリッド治療です。「日本漢方」は我が国で独自の発展をとげ、近年は漢方治療の適応も分類(安井分類)が行われ、如何に現代医療に応用してゆくか、という部分まで議論が進められています。
エキス漢方剤だけでなく、新しい創薬が可能な「丸薬漢方」治療(他院)も用います。必要に応じて栄養指導、エビデンスのあるサプリメントも取り入れ、身体の歪みを診察し提携先のオステオパシー治療(整体などの手技療法)を紹介することもあります。
毎日いろいろな患者さんと接する中で、コミュニケーションの大切さを実感しています。患者さんが抱える症状を引き出すためには、気楽に話せる雰囲気作り、特に「笑顔」が重要です。この先、どれだけAIが発達したとしても、医師が患者さんにかける言葉、また医師の“手のぬくもり”は、取って代われるものでは無いと信じています。
私も患者さんとの対話から日々多くのことを学ばせていただいています。患者さんの不安を解消し、要求にできる限り応えることで、どんなに難しい状況であっても希望の光へ導くこと。それが患者さんの「自己治癒力」を引き出す鍵だと考えています。
命は尊い反面、とてももろいものです。すべては患者さんが教えてくれます。一番重要なのは、たくさんの患者さんを診療させていただくことです。その積み重ねで、医師は強くなれるのだと思います。

仕事に集中する一方、私の人生に欠かせないのが音楽です。時間を見つけてはオペラとシャンソンのレッスンに通い、通勤の車の中で発声練習を行い、コンクールを目指せたらと願っています。音楽は日頃のストレスを洗い流し、内面を豊かにしてくれます。また、国境を超えた言語でもあります。
私は若い頃数多くの国を旅もしました。海外滞在で、価値観に多様性が生まれました。日本から離れることで視点を変えて俯瞰(ふかん)する能力が身につきました。私がいつも念頭にしているのは「我々はどう生きるか?(How we live?)」です。

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