杉元敬弘
幼少の時からの祖父の強い勧めで歯科医師を志す。1992年に徳島大学歯学部を卒業後、医療法人奨和会にて勤務。29歳で歯科医院「スギモト歯科医院」を開業。2017年から鶴見大学歯学部の非常勤講師も務めている。開院当初から噛み合わせに特化した診療を得意とする、噛み合わせのプロフェッショナルドクター。
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INTERVIEW

祖父の言葉に従い、特別な思いはないまま歯学の道へ進みましたが、今では歯科医療の奥深さに夢中になっています。これからもっと歯科医療の社会的認知度を上げて、日本人の生活の質と健康寿命を改善していきたいです。そして、これまでに出会った師匠の先生たちがそうしてくれたように、自身の知識や哲学を若い世代に伝えていきたいと思っています。

やりたいのは「修理」ではなく「治療」

杉元敬弘

当院は、歯科医療の中でも特に「咬合(こうごう)」いわゆる噛み合わせに力を入れています。噛み合わせが良い状態とは、将来も歯を維持できる口腔状態のこと。口腔内の安定が全身の健康状態に大きく寄与することは、近年の研究データからも明らかですが、日本人は歯科医療従事者ですら口腔環境の重要性を認識していません。一言に噛み合わせと言っても、単純に噛むことだけではありません。咀嚼(そしゃく)、味覚、嚥下(えんげ)、呼吸に密接に関与していることはもちろん、平衡感覚の維持、発音、感情表現、消化、ストレスなど、生活に直結する機能が多いんです。噛み合わせは、文化的な生活の根源であり、生活の質を大きく左右しています。

噛み合わせをつくる顎関節は、首、頚椎、胸椎、腰椎、足の関節といった、全身バランスの一番上にあるもの。噛み合わせの良し悪しは、幼少期から一定の年齢までの期間に、全身の組織の成長がうまく行ったかどうかが左右します。つまり、幼少期にいかにアプローチするかが重要だということです。残念ながら、日本は欧米に比べて成長がうまくいっている人はほとんどいません。昔の日本に情報量が少なかったこと、歯科矯正の文化が無かったことも大きいかもしれません。

歯が悪くなるのは、老化現象ではなく、バイ菌か噛み合わせ、どちらかの問題です。バイ菌は歯磨きで解決できますが、噛み合わせは自分ではどうにもできません。しかし、噛み合わせが悪い成人でも、身体の根本的な問題を解決してあげれば、ある程度歯を維持することができます。歯が無くなってしまった人に対しても、適切な治療をすることで、健康寿命を延ばすことができます。あいにく、そのような成人を治療できる歯科医院はなかなか無いのが現状ですが、当院ではそれが可能です。壊れた部分をなおすことを繰り返すのは「修理」と呼びますが、私がしたいのは「治療」。大元の原因が改善されなければ、身体は苦しい状況をどんどん生み出し続けるので、そうならないためにも私は「治療」がしたいのです。

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自身の知識と哲学を次世代に引き継ぎたい

私は香川県に生まれ育ちました。兄が天才的に優秀で、私は何をやっても及ばず。祖父から「兄は医者、お前は歯医者になれ」と言われ続け、その通りに大学の歯学部に進みました。大学での教育は単なる「修理」の学問で、一時は落胆しましたが、その後素晴らしい先生たちと出会ったことで、歯科医療の本質を垣間見ることができました。中でも噛み合わせに没頭したのは、噛み合わせこそ歯科の根本だから。虫歯や歯周病はあくまで現象にしか過ぎず、治療の根拠となるのは噛み合わせ。噛み合わせが無ければ、歯科は成立しません。医療従事者も、患者さんも、もっと噛み合わせについて知るべきだし、もっと多くの医院でその治療をやって欲しいと願っています。

50歳を過ぎた今、自分の知識や哲学を下の世代に伝えていきたいと、定期的に勉強会を開催しています。私はこれまで、要所要所で師匠と思える人たちに出会い、色々な哲学を教えてもらいました。当時は理解できなかったこともありますが、それがずっと頭に残っていて、今の自分をつくってくれているのだと思います。また、これからは、歯科のAI化を進めて行きたいと考えています。医科の分野ではすでにAI化が進んでいますが、現状では歯科の分野は数値化することが難しく、AIが覚えることができません。次世代のためにも噛み合わせを数値化しなくてはと、大学と一緒に研究を進めているところです。

私を医療に突き動かしているものは、ただ単に「好き」という気持ち。理由なんてありません。歯科医療は深いので、夢中になります。「こんなに仕事して大変ですね」と言われますが、好きでやっているので全然大変ではないです。私の場合は、たまたま好きなことが仕事の延長線上にあっただけで、それが一般的に良いことなのかどうかは分かりませんが、私は幸せですね。「社会のために」と言うよりは、ただ自分が好きなモノを追究しているだけ。それで患者さんに「診てもらって良かった」と言ってもらえたら嬉しいですし、結果的に社会貢献になれば良いと思っています。若者の皆さんで悩んでいる方も多いと思いますが、無いものは自分で作り出せば良いのです。何か不満に思っても、まずはまわりの全ての意見を受け入れて、そこから建設的な議論をしたら、物事は良い方向に向かっていくはずです。

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