白石康次郎
1967年5月8日生まれ、東京都出身。99年に、少年の時に船で海を渡るという夢を抱き、単独世界一周ヨットレースで優勝した故・多田雄幸氏に弟子入り。26歳の時、史上最年少単独無寄港世界一周を達成。2006年、単独世界一周レース「5OCEANS」に参戦し、歴史的快挙となる2位でゴール。現在は子どもたちに自然の尊さと夢の大切さを伝える活動を積極的に行う。
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INTERVIEW

ヨットで世界を一周したいなんて、個人の勝手ですよ。「家族のために」とか「私は努力をしたので」とか、理由はいろいろあるかもしれませんが、海にはただ滔滔(とうとう)と風が吹くだけで、個人の意志や事情なんて、海には全く関係のないことです。赤道無風帯での光景は忘れることはできませんね。風が無いので、波も立たず、海はまるで鏡のようなんです。空には満天の星たち。それが海に映って、自分と船以外が全て星になってしまうんです。「自分は宇宙に生きてるんだなあ」って実感する瞬間ですよね。

海への憧れと男の余裕

白石康次郎

昔の冒険というのはね、未開の地を行くんですよ。私が子どもの頃の冒険家と言ったら、植村直己さんですよね。その頃はグリーンランドは地図に載ってなかったんです。今はほとんど未開の地はないですよ。冒険というと、「未開の地を行く」というのが分かりやすいんですが、「誰もやったことのないものをしたい」と思うのが、私にとっての衝動であり冒険。ビジネスでも同じでしょう?

私の最初の冒険は、鎌倉の実家から赤羽の伯父の家まで一人で行ったこと。あれは本当に冒険でしたね!ハラハラ・ドキドキ感がたまりませんでした。初めてマグロ船に乗った時もそう。それは、冒険の規模で表すものじゃないんですよね。

海に憧れて水産高校に入り、ヨットマンの多田雄幸氏に弟子入りをしたのが、冒険家の第一歩だったかもしれません。海に出るようになり「一流の船乗りなるぞ!」と意気込んでいた時に、多田氏が世界一周の単独ヨットレースで優勝するんですよ。昔はのんきな時代でしたから、多田氏の電話番号が電話帳に載っていましてね。何度も電話して、弟子にしてもらったんです。ヨットのことなどいろいろと教えを請うたのですが、実は何も教えてもらってないんです(笑い)。お酒しか飲んでいないですから。ヨットに乗る時間よりも、一緒に飲んでいる時間の方がはるかに長かったですからね。でも、多田さんの背中を見ていると感じるんです。どんな荒波でも、どんなに厳しい状況でも、楽しんでヨットに乗っているのが。私は必死になってやるわけですよ。若かったですよね。多田氏の余裕たるや……。その背中を見ながら、「すごいな」と感じていました。

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上手くいかないことばかりだけど……

世界一周をする時にまず困ることって、資金集めなんですよ。誰もスポンサーには付いてくれませんしね。私の場合は、ある造船所の親方に拾われまして……。ご飯を食べさせてもらいながら、道具も全部貸していただきまして。船を修理して航海に出ようと思ったんですけど、2度ほど失敗してしまったんですよね。1回の失敗はまだいいんです。謝れるので。2回目の失敗は、謝りようがないじゃないですか。

いくら努力をしたとしても、世界一周をしたいのは「私」であって、「海」ではないんですよ。要するに、海は変わらない。私が死のうが、世界一周しようが。だから、自分の都合を海に持ち込んでも、到底思い通りにはいかないはずなんですよね。そのことを、実感として理解することができました。ですから、アプローチを変えていったんですよね。船とコミュニケーションを取り、人間とコミュニケーションを取り…。すると、うまく乗り越えて行けるようになったんですよ。帰った時は帰ってきたことが嬉しいという気持ちではありませんでした。ただ、それまでは謝ることしかできなかったんですけど、初めて人様に対してお礼が言えましたので…。それが何より嬉しかっですよね。

これまでの経験を通して感じるのは、夢も希望も全て自分の中にあるのだということ。ですから、あまり外をチラチラみるのではなく、自分の中にある答えを見つけてみてください。そして、内から外へ自分を発揮されてみてはいかがでしょうか。そうすれば、必ずあなたに適した答えが見つかるはずですから。素直にまっすぐ。それがキーワードです。

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