佐山展生
1953年生まれ、京都府出身。76年京都大学工学部高分子化学科卒業。94年、ニューヨーク大学MBA取得、99年東京工業大学大学院社会理工学研究科博士後期課程修了。帝人、三井銀行(現三井住友銀行)を経て、98年ユニゾン・キャピタル共同設立。2004年GCA共同設立。05年メザニン代表取締役就任。07年インテグラル共同設立、08年から代表取締役パートナー(現任)。15年9月からスカイマーク代表取締役会長就任。現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授、京都大学経営管理大学院客員教授などを兼務。
https://www.skymark.co.jp/ja/

INTERVIEW

大人になるということは、自分で自分の人生を考え始めること。私は30歳で初めて自分の人生を自分で考えだしました。それからは常に「面白そう」ということを追求しています。面白いことは皆やっていますので、実は面白くない。誰もやっていないけれど、面白そうだなということが、本当に面白いことなんです。競争相手も少ないですし、とことん突っ込んで行けばトップにもなれます。すると世界も広がり、その次の「面白そう」につながっていきます。私自身の人生設計も昔から一切ありません。とにかく面白そうと思うことを追求してきた結果、振り返ってみたら面白かったな、ということなんです。

受け身の人生からの脱却

佐山展生

中学1年から野球部に入ったのですが、そこからガラッと人生が変わりました。朝から晩まで野球漬けの日々で、ずっと監督に言われていたのは「とにかくあいさつしろ。時間を守れ。高3の夏までやれ。必ず社会に出たら役に立つから」と。子どもの頃は何の役に立つのかと思っていましたが、今日の私があるのは野球をやっていたおかげだと思っています。建築家を目指して京大を受験しましたが、希望の学科には受からず別の学科に合格。浪人しようと思っていたのですが、家族や親戚の喜びようを見て面倒くさくなり行くことにしたんです。自分の思いとはまったく違う方向にスライスしたところに行っているんですよね。卒業後の進路も、当時は就活もありませんから、先生から勧められた会社を受けて行っただけなんです。実に受け身の人生でしたね。

野球というのは、言われたことをきっちりとやるゲームなんです。やることは全部決まっている。その習慣が身についているので、まったくのサラリーマン向きで社会に出たといえます。大学卒業後に入社した化学大手の帝人は本当に良い会社で、現場の皆さんと一緒に楽しく働きながら、工場の自動化や増設を任されたり、新製品を開発したり、ものすごくやりがいがありました。しかし、30歳になった頃、サラリーマンのベストケースは社長になることですが、決して優秀だから、実績を挙げたからといってなれるものではないのだとわかったのです。私の性格上、何事も一所懸命にやりますので、もし将来、社長になれなかったら、「なんでこんなにやったのにダメだったんですか」って言うに決まってるんです。しかしそれを言ってもしょうがないのがサラリーマンだと気がついて、それは自分には向いてないなと思ったんです。

当時はまだ転職などあまりない世の中でしたので、とにかく食べていける職業に就こうと思い、司法試験の勉強に取り組みました。受験の願書を初めて出した33歳の春、新聞に出ていた三井銀行中途採用募集の広告が目に留まったんです。年齢以外はまったく関わりのない募集だったのですが、異業種の銀行の方は私のことをどう思うだろう? と思い、応募したところ、面接に呼ばれて。そこで初めてM&Aという言葉を聞き、感覚的に「なんか面白そうやな」と思い、帰りの飛行機ではすでに転職することを決めていました。面白そうだから。これはもう探検気分です。給料も聞いてないし、他の条件も聞いていません。もし誰かに相談していたとしたら全員反対しているでしょう。だから誰にも相談しませんでした。入社後すぐに担当した案件で、M&Aは天職だと思いました。それから31年、ずっとM&Aの世界に身を置いています。

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社員全員の総合力で定時運航率日本一に

私が初めてスカイマークを訪れたのは2014年12月のこと。現在も代表取締役パートナーを務める独立系投資会社インテグラルが、当時経営危機に陥っていたスカイマークの再建に名乗りをあげたことがきっかけです。翌年1月28日に民事再生の申し立てをした後に共同スポンサーを募り、最終的にインテグラルが50.1%、ANAが16.5%、政策投資銀行と三井住友銀行によるファンドが33.4%という株主構成となり、同年9月、スカイマークの代表取締役会長に就任しました。なぜ再建支援に手を挙げたかというと、スカイマークが実質的に唯一の独立系の航空会社であったことと、約2000人の従業員の生活基盤を維持したかったから。もうけたいなんて気持ちは一切なかったですね。民事再生というのは本当に大変なことで、面白いという言葉は適切じゃないかもしれませんが、誰もやらないことって面白いことなんですよ。名だたるファンドは皆、支援を断った。でも、我々ならやれるんじゃないかと。ある意味で「面白そう」だと思ったんです。

新体制になり、まずは経営陣で何を大切にするかをディスカッションしました。一番は安全。次に、お客様の時間を大切する。つまり、定時運航率を高めて欠航率を低くしましょうということです。しかし、離れてしまったお客様を引き戻すには、ただ定時運航率が良くなったというだけではダメで、日本一にまでならないといけないと思い、2年以上定時運航率日本一を目指すというメッセージを社員の皆さんに発信し続けました。その結果、2018年1月に国土交通省が公表した17年度上半期の定時運航率で、スカイマークは92.59%となり、国内航空会社11社中1位となるに至りました。定時運航率というのは航空会社の総合力なんです。パイロットや客室乗務員、地上職の方たちの誰かが頑張っただけでは達成できない。社員全員の気持ちが一つになって達成できたということが一番大事なことだと思っています。

要は、人間の力の差ってたいしたことないんですよ。それよりも大きいのが「気持ち」。気持ちの強い方が勝負に勝つ。今回の結果はその実証だと思うんです。また勝てば自信になりますから、次の勝負も勝っていける。まずは定時運航率で「スカイマークには勝てない」といわれるまでの存在になること。その次は「お客様満足度日本一」を目指します。しかし、そのベースになるのは「社員満足度日本一」だと考えています。毎日の仕事に不満があったりすると、何か方向性を示したとしても、皆やる気はしないでしょう。ですから一番大切なのは実は社員満足度なんです。これからもどんどん日本一を増やしてきたいと思っています。

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