南部靖之
1952年生まれ、兵庫県出身。関西大学工学部を卒業する1カ月前に人材派遣会社テンポラリーセンター(現パソナグループ)を設立。雇用創造をミッションとし、新たな就労や雇用の在り方を社会に提案、そのための雇用インフラを構築し続ける。著書に『これから「働き方」はどうなるのか』(PHP研究所)、『創業は創職である。』 改訂版(東洋経済新報社)、『人財開国』(財界研究所)など
https://www.pasonagroup.co.jp/

INTERVIEW

大学生の頃、近所の子供たちを集めて塾を開いたことがあるのですが、その時私と一緒に教師をしていた仲間たちが今パソナで役員をしています。パソナの根底には「教育」があるんですよね。企業として売上や利益ももちろん大事ですが、私たちはそれよりも心の教育に重きを置いています。信念や理想、志は心から生まれるもの。だから、心の教育を施して心を豊かにすればみんなが幸せになれると信じています。この思いは創業当初から変わりません。

卒業直前の2月に起業

南部靖之

私は3人兄弟の末っ子で、絵を描くのが大好きな子供でした。母は「算数で満点を取ることや100メートル走で一番になるのと同じぐらい素晴らしい才能だ」と言って、私の絵をとても尊重してくれました。価値観の多様性を教えてくれたのは母でした。

中学生になる頃から大学を卒業するまでの間、近所のお寺に通い、人としての生き方などを学びました。就職活動をしていた時、住職が「サラリーマンになるのではなく起業しなさい」と言ってくださったんですよね。

私も就職活動に行き詰まっていた一人ですが、社会には雇用に関するさまざまな問題があることを知りました。特に女子大生は就職率がかなり低く、やっと就職できても昇格や昇給は望めないというのです。さらに、出産や育児を機に退職した女性の再就職は困難を極める状況でした。この状況を変えるために、女性の就労を支援するような取り組みができないだろうかと父に相談したところ、「自分で会社を興し、資金を稼いで、広く社会に貢献しなさい」と言われました。起業に踏み切ったのは、卒業直前の2月。住職と父の言葉が、私を後押ししてくれました。それがなかったら普通に就職していたかもしれませんね。

私が目指したのは、女性たちがフルタイムで働かなくても大企業の正社員と同等の賃金や福利厚生を受けられて、なおかつ自分のスキルを生かして仕事ができるような仕組みをつくること。そのために始動したのが人材派遣のシステムです。正社員でなければパートやアルバイトしかない時代。人材派遣制度はすぐに話題になり、タイピストなどの経験を持つ女性たちが口コミで次々に集まりました。今まで、宣伝広告費はほとんど使っていないんですよ。

その代わりに、スタッフのスキルアップのためには惜しみなくお金を使ってきました。私たちの役割は「人を活かす」ことですから、スタッフのためにメンターを置いたり、仕事の悩みを私たちが派遣先企業に代弁したりして、スタッフを支えることに力を入れてきました。そこが評価されて人が集まったのではないかと思います。

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社会の問題点を解決する

新卒者への就職支援として「フレッシュキャリア社員制度」を実施してきました。元は、リーマンショックで新卒者の就職率が激減した問題を何とかしたいと思って立ち上げたものです。新卒の未就職者をパソナのフレッシュキャリア社員として受け入れ、その間、社会人としての基本的なマナーや実務の研修を施し、正社員と同等に健康診断も受けてもらうというもので、これまで7000人以上が卒業していきました。私達の事業活動そのものが社会貢献活動でもあります。

「社会の問題点を解決する」というのが私たちの創業理念。この理念に徹する限り、会社は伸び続けると思うんですよね。目先の利益を追求すれば「ベストセラー」になるかもしれないけれど、それは一時的なものにすぎません。それよりも私たちは社会からずっと必要とされ続ける「ロングセラー」で在りたいと思っています。

これからは、地方の特色を生かした雇用を創出して、どの地域でもちゃんと高収入を得られるような産業をつくっていきたいですね。今後力を入れていきたいと思っている文化産業や健康産業で地域を盛り上げることができればと思っています。地方で雇用が生まれ、地方で子供を産み育てる人が増えれば少子化問題を解決することにもつながりますよね。首都圏よりも地方のほうがさまざまな可能性を秘めている気がします。

起業する時、父がくれた言葉が二つあります。一つは「英雄は若者から生まれる」。そしてもう一つは「土薄き石地かな」という言葉です。土が少なく石ばかりの地面から芽を出すのは力がいるけれども、一旦芽が出ると強い。つまり「苦労は買ってでもしろ」ということです。みなさんにも、若いうちは汗水垂らして頑張ってほしいと思います。

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