南原竜樹
1960年生まれ、岡山県出身。愛知工業大学を中退後、自動車の並行輸入業を始める。88年、株式会社オートトレーディングルフトジャパンを設立。スーパーカーや高級車の輸入権を獲得する。05年、経営危機に見舞われるが会社を再建し、LUFTホールディングスとして多方面で事業を展開している。
http://www.luft-hd.co.jp/

INTERVIEW

私は偉業を成し遂げたわけでもありませんし天才的なことができるわけでもありませんが、人よりもたくさんのことをしてきた自負があります。社会人の多くは一日8時間働き年間100日以上休みますが、私はその倍以上の時間を仕事に費やしてきました。できることを実直に進めてきただけで、難しいことはしていません。若い人たちも、特別な能力がなくても、できることをきちんとこなしていけばいいと思います。そうすれば私ぐらいにはなれますよ。

年商100億円からどん底へ

南原竜樹

実は、一度も会社勤めというものをしたことがないんです。昔は「ベンチャー」とか「起業」みたいなかっこいい言葉はありませんでしたから、“プー太郎”扱いですよね。ビジネスのきっかけになったのは23歳の頃、友人のツテで格安のグアム旅行に行った時のことです。日本ではとても手が届かないような高級車を現地ではずっと安く買えることを知り、車好きの友人に買わないかと勧めたのです。最初はこれでもうけようと思ったわけではなく、身近な友達に車を買ってもらって自分も乗せてもらおうという軽い気持ちでした。ところが輸入した車はその後も飛ぶように売れ、商売としていきなり軌道に乗ってしまったんですよね。次第に年齢不相応に稼ぐようになって、同年代の友人たちとは金銭感覚が合わなくなっていきました。

28歳で会社を立ち上げると、アルファロメオの代理店を買収し、TVRやMGローバー、ロータスなどの輸入権を次々に獲得して事業を拡大していきました。いずれも一流メーカーなので、最初は「相手にされるはずがない」と周囲に笑われましたが、まだやってもいないのに無理だと決めつければ、そこで終わってしまいますからね。会社は年商100億円にまで成長しました。ところが2005年、MGローバーが経営破綻したのを機に、私たちの会社も大打撃を受けました。当時、同社の在庫を大量に抱えていましたが、破綻したメーカーの車が売れるはずもなく、事業の継続はもはや不可能でした。自社ビルも田園調布のショールームも手放すしかありません。

しかし、自分が作った会社はかわいいものです。私は限りなくゼロに近い可能性にかけて、再建を試みることにしました。半ば意地もあって、一番困難な道を選んでしまったんですね。しかし二百数十人いる社員を巻き込むわけにはいかないので、全員解雇しました。例えるなら、墜落寸前のジェット機で、すべての乗員に「今すぐパラシュートで飛び降りてくれ。あとは私が何とかしてみるから」と告げたわけです。お金を失ったことについてはそれほど何の感情もわかなかったのですが、ずっと一緒にやってきた仲間たちを失うことは心底つらかったですね。

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安牌(パイ)ばかり取っても面白くない

再起をかけて新しい事業に取り組む決意をしたものの、銀行はシビアでした。そこで資本金がなくてもできる事業は何だろうかと考え、不動産や人材派遣などの仲介業から着手したんです。それを皮切りに、レンタカーや出版などさまざまなジャンルの事業を展開し、年商も以前のように100億円まで伸ばすことができました。

順調に復活を遂げたように思われるかもしれませんが、決してそんなことはありません。常に勝負を続けていますし、負ければ一巻の終わりです。だからこそ、ここまで成長できたとも言えます。もちろん勝算があるから勝負するのですが、最後は賭けですからね。もっと無難に経営する手もありますが、安牌(パイ)ばかり取り続けても面白い人生にならないと思いませんか。私は、安定よりも面白いことがしたいのです。

何より、みんなが笑顔で楽しく働ける会社でありたいですね。社会人は一日の大半を会社で過ごすわけですから、会社が楽しくなかったら人生も楽しくないでしょう。もちろん、もうかっていない会社では笑顔になれませんから、利益も大事です。社員みんなで協力して知恵を出し合って、結果的に収益につながればいいと思っています。 たとえば、小学生が「総理大臣になりたい」と言えば、みんな応援してくれるでしょう。ところが還暦を過ぎた大人が同じことを言えばどうでしょう。正気かと心配されますよね。それぐらい、若いうちは何にでもなれる可能性があるということです。私も大学を出た頃は普通の若者でした。みなさんには、私のように毎日16時間働きなさいとは言いませんから、人よりちょっとだけ頑張ってみてください。そうやってわずかな差を研ぎ澄ませていけば、人生の転機があった時に必ずうまくいくはずです。

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