村津大地
1982年生まれ、福岡県出身。福岡歯科大学卒業。九州大学大学院博士課程修了。口腔外科医として全身のことを学びながら、歯科医師としても研鑽を重ね、2016年にむらつ歯科クリニックを継承。自由診療専門病院としては日本最大規模を誇る。「歯は臓器」をモットーに全身の健康を考慮した歯科治療を展開している。
https://muratsu-dc.jp/

INTERVIEW

「意志あるところに道あり」という言葉を私は信じています。常識や慣習にとらわれず、自分が正しいと思ったことを続けていればゴールが見えてくるはずです。
私は未熟な経営者ですが、熟していないからこそまだいろんな可能性を秘めていますし、反対に腐らせてしまうかもしれません。自分が正しいと思う直感を大切に、無知であるという謙虚さと、チャレンジする大胆さを持ち続けたいと思っています。

父がつらぬいた「歯は臓器」という信念

村津大地

幼い頃から、歯科医師の父の影響を強く受けてきました。「世のため、人のため」が父の口癖で、「自分の正しいと思ったことをやりなさい」という教えのもと育ちました。人の役に立てることはいくらでもあると言って、早朝からゴミ拾いに駆り出され憂うつだったのを覚えています。
父は30年以上前に歯と体との関連性について大学で研究し、「歯は単にものをかむための道具ではなく、全身に影響を与える器官である」という結論にたどり着きました。今でこそよく聞くようになった考え方ですが、当時はそのようなことを提唱する人は他にいなかったので批判や誹謗中傷を受け、身の危険を感じたこともあったそうです。私も幼いながら父の周辺に不穏な雰囲気を感じたことがあります。それでも父は「歯は臓器」という信念を決して曲げませんでした。
正直、そんな父のことを疎ましく思った時期もありました。しかし私も歯科医師になり、臨床の現場や歯科業界のことを知るにつれ、歯はかむためだけにあるのか、穴が空いたら埋めればいいのか、埋める素材は何でもいいのか、様々な疑問にぶつかりました。そして父の「歯は臓器」という言葉がストンと腑に落ちて、その偉大さを知ることができたのです。
大学病院を退職し実家に戻って半年ほど経った頃、父が病気で倒れ、私が代理院長として急きょ経営を引き継ぐことになりました。父は当時日本でも数少ない、かみ合わせ治療の専門医をしていました。私も半年間、父からノウハウを教わってひと通りのことはできるようになっていたものの、実際の治療は未経験でした。しかし他にできる人もいないので、私が代理を務めるしかありません。クリニックの名物の先生がいなくなる、大きな看板がなくなるというのは心もとないことでした。

  • 村津大地
  • 村津大地

型崩れではなく型破りを目指して

父のかみ合わせ治療を受けるために全国から毎日たくさんの患者さんが来院していたので、私が姿を見せると「なぜ院長じゃないんだ」と不満の声が上がりました。父が倒れたことは伏せていたので、黙って頭を下げるほかありませんでした。患者さんが必要としているのが自分ではないという事実を突きつけられるのは辛かったですね。同時に、何とかしなければという強い気持ちもありました。
空手経験者の父は「型破り」と「型崩れ」は違うということを常々話していました。きちんと基礎を身につけたうえで革新的なことをやるのは型破り、基礎をおろそかにして目新しいことに飛びつくのは型崩れだということです。クリニックを引き継いだ時この言葉を思い出し、「クリニックの中身は一切変えずに頑張っていこう」とスタッフたちに呼び掛けました。患者さんにも「院長が変わってもクリニックは変わらないね」と言っていただけるように心掛けました。
院長に就任して2年間は、何も変えずにひたすら父のやり方を踏襲していましたが、その後は少しずつ新しい設備や技術、システムを取り入れていきました。これが私にとっての「型破り」です。父は昔ながらの治療を頑として変えないところもあったので、私と方針が合わず喧嘩をすることも度々あったのです。今では父の頃よりずいぶん近代的なクリニックになったと思いますが、患者さんには「変わらないね」と言っていただいています。今後は歯科治療にとどまらず、幹細胞治療なども取り入れながら医科と歯科の両面から真の健康体を目指す事業も展開していきたいと考えています。

私一人では良い治療はできません。一緒に働いてくれているドクター、衛生士、助手、受付スタッフ、全員が同じ志を持ち、誰一人手を抜くことなく全力で患者さんの治療にあたってくれていることが本当に心の支えになっています。10年以上働いてくれているスタッフもたくさんいますし、私にとってスタッフはみんな家族のような存在です。これからもスタッフ全員が、「患者さんに本物の歯科治療を提供できている」という達成感と誇りを感じられるクリニックであり続けたいですね。

ページの先頭へ