三ツ谷清湖
東京都出身。1997年から薬剤師として活動を始め、病院の院内薬局・調剤薬局で勤務。2019年に病を患い休職するも、同じく難病に悩む仲間との出会いが刺激となり、薬剤師として独立。2020年、株式会社チェアークラブを設立し、「薬局ちぇあーくらぶ」をオープン。薬剤師のほか、メディカルサプリメントアドバイザー・スポーツファーマシストの資格も所有。2児の母。
https://chairclub.jp/

INTERVIEW

私は20年以上にわたり、薬剤師として様々な医療に従事してきました。しかし仕事にやりがいを感じ始めた頃に、原因不明の難病が私の身を襲ったのです。当然、自分の病気を受け入れることには大きな覚悟がありました。しかし私の中にあった思いは、自分の病気で何かを諦めたり、言い訳にはしたくないということ。例え難病を抱えていても社会に貢献していくことで、同じように悩む方々の励みになっていきたい。ありのままの自分を受け入れ、一歩でも前に進むことで、その姿を見て勇気づけられたという方が一人でもいたらうれしいと思うからです。今後も固定観念に捉われず、人のためになる何かを続けていきたいと考えています。

堂々と生きていく覚悟を胸に

三ツ谷清湖

1997年から薬剤師として仕事を始め、大学病院から地域密着の病院まで、様々な病院の院内薬局で働いてきました。しかし20代の頃は具体的な夢があったわけでもなく、将来は何をしていこうかと思い悩む日々が続いていました。
その後、子供を二人授かり、30歳を過ぎた頃からは薬剤師の資格を生かして病棟業務に従事。患者さんと接する機会も多くあった病棟業務はやりがいもあり、人の役に立てているという実感もありました。しかしそんな矢先に、不治の病が私を襲ったのです。
様々な病院で検査を受けても、明確な病名はわからないまま。痛みを我慢しながら仕事を続け、通院や検査を続ける日々が続きました。
2018年の秋には手が上がらないというところまで症状が悪化し、年末には荷物も持てないほどになっていきます。何をするにも体が思い通りに動かない。当時勤めていた病院には杖をつき、手荷物をキャリーバックに入れて出勤せざるを得ない状況になりました。
その後、検査入院をした結果、進行性の慢性疾患だというところまでわかりました。詳しい病名は今も不明なままですが、障害者手帳を受け取ることになりました。
先行きの見えない不安に押し潰されそうになる中、救いとなったのは難病を抱える5人の仲間との出会いでした。同じような境遇を抱える私たちにも何かできることはないかと話し合いを重ね、資格を生かして薬局を立ち上げようと決意したんです。
私の病気には特効薬もなく、症状がいつどうなるのか、はっきりしたことはわかりません。しかし、ただ落ち込んでいてばかりでは何も変わりません。人生一度きりですから、自分のできることからやるしかないと吹っ切れた思いでした。病気を患うということは決して恥ずかしいことではないですから、堂々と生きていこうと思いを新たにしたんです。
私の座右の銘は「冬は必ず春になる」という言葉です。どんなに辛いことがあっても必ず光は差すものだと信じていますし、すてきな春を迎えるためにも、冬は必要な季節。ただ辛い時期と捉えるのではなく、耐える時間なのだと思考を転換することも大切なのではないでしょうか。

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人の心に寄り添う椅子であるために

そして2020年の6月に会社を設立し、現在は薬局「ちぇあーくらぶ」を品川区の荏原中延と中央区の京橋にオープンしています。自分の病気の体験と薬剤師としての20年以上の経験を生かし、いかに人に勇気や希望を与えられるかを私のテーマに掲げてきました。
会社名にあるチェアー(椅子)とは、創業メンバーの一人であった難病を抱える方が、パーキンソン病のリハビリ中に疲れて道の途中で立ち止まった時、ある家の前に「ご自由にお座りください」と張り紙が貼られた椅子を見つけた話が由来になっています。「ふとした時にたまたま置いてあった椅子に座れたことで、すごく助かった」とその方が話していました。日々の仕事に疲れてしまった方、私のように不治の病を抱える方など、人それぞれの悩みにそっと差し伸べてあげられるような椅子(存在)でありたい。それが当社のコンセプトになっています。
現在は薬局運営を主にしていますが、単に薬を処方する場ではなく、町の憩いの場になるようなスペースでありたいと考えています。誰もが気軽に立ち寄れるようなスペースを提供していきたいですし、一般的な薬局の概念を根底から変えていきたい。ちょっとした医療の相談でも話に来てほしいですし、たとえ病気にかかっていなくても予防医療の場として活用してほしいと思っています。
実際に現在は、薬局内の受付スペースを活用し、医療向けのセミナーを開催しています。身近で起こりうる医療に関する疑問を解消したりするなど、様々なドクターや大学教授などとも連携を深めながら、今までにない取り組みを積極的に進めています。
医療の情報は近年、インターネット上に散乱しています。信用性という意味では疑問が残る中、そこを当社が正していきたいという思いもあります。SNSやブログ、YouTubeなども活用しながら、リアルとネットをうまく掛け合わせて多くの方々に薬やサプリなど、人の健康に役立つ価値ある情報を打ち出しているところです。
また当社が運営するオンラインショップは、障害や疾病の影響で外出が難しい方々が介護用品などを気軽に購入できるようにと用意したサービスです。そのほかメディカルサプリメントアドバイザーという私が保有する資格を生かし、医薬品のみならず様々なサプリメントも販売しています。
世間の多くの方は、「病院の前にあるから」「自宅に近いから」という理由で薬局を選びますが、「ちぇあーくらぶだから」という理由で選ばれる薬局にしていきたい。そして「ちぇあーくらぶ」を全国に展開していくことが私の目標でもあります。
正確に言えば、薬局という形に捉われなくてもいいと思っています。例えば椅子とテレビ電話があるような、ちょっとした憩いの場でもいいんです。そしてゆくゆくは、就業支援施設なども設立する予定を立てています。
障害者や生活弱者といわれる方々も、子供も大人もみんな一人の人間です。しかし世の中には、色々な垣根や枠がいまだに存在します。そうした垣根や枠を私の活動で取り除いていくことが、当社の使命でもあるのです。
若い方々も色々なことに興味を持ち、どんどん失敗を重ねていってください。その積み重ねが大人になった時に必ず生きてくるはずです。私も失敗を恐れることなく、これからも胸を張って前進し続けていきたいですね。

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