熊本辰視
1951年生まれ。佐賀県出身。東京大学法学部卒業後、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)に入行。銀行時代は、西ドイツ駐在員、審査部、都市開発部課長、松山事務所長を経て、その後株式会社オクジュー社長に就任し、『信用第一』の社訓のもと“夢空間づくりのパイオニア”として挑戦し続ける。
http://www.okuju.co.jp/

INTERVIEW

株式会社オクジューは建築物の天井、壁を中心とした内装工事や、外装工事を行う施工会社です。創業は1922年と古く、これまで国会議事堂や日本銀行、スカイツリーなど数多くの有名な建造物に携わってきました。我々は自社で部材なども作り、実施施工図の設計も自社で行い、施工するという、メーカーから施工までの役割を自社で一貫してまかなう珍しい業態です。長年培ってきた技術力、マネージメント力を生かし、若い世代にも魅力を感じてもらえる企業へと成長していくことを目指しています。

銀行員から建築業へ。新風となり業界に変化を。

熊本辰視

弊社の2代目社長は、岳父でした。社内ではカリスマ的な存在で、強いリーダーシップで会社を引っ張っていたと聞きました。父はいずれ私に会社を手伝って欲しいと思っていたらしいのですが、私に直接そういったことを言うことはなく、私も引き継ぐつもりはありませんでした。しかし、父が病に倒れ「回復したら、会社を手伝いますからね」と私が声をかけた時に、うれしそうに「楽しみだな」と言ったんですね。残念ながら叶わず、父は他界してしまいましたが、私自身、言ったことには責任を持たなければいけないと感じ、会社を引き継ぐ決心をしたことがスタートでした。専門的な知識のない未経験者ではありましたが、銀行員として働いていたこともあり会社の歴史、規模、内容を見て、これだけの会社をなくすわけにはいかないと感じたことが自分の中で決意につながりました。周囲の人からは、建築を知らない人間で大丈夫なのかと思われていたであろうと思いますが、そこは気にしてもしょうがないと割りきり、外から来た目線を大事にしながら仕事を進めていくと腹をくくっていました。社長に就任し、まず驚いたことは労務環境の整備不足でした。仕事を行ううえで契約書が交わされないことも当たり前に起こり、トラブルの原因になっていたことは、契約書ありきの金融業からきた私からすれば信じられないことでした。そのほかにも社会保険に加入していない会社が多いなど、業界の仕組みから徐々に変えていくことが、外から来た私の使命であると大きな志を抱いてのスタートでした。

人口が減っていく日本において、若手を取り込むことは業界の大きな課題です。外国人労働者、女性やシニア人材が少しずつ増えている今においても、労働力不足に歯止めはかかっていない状況です。このまま若手の採用が減れば、培った技術の継承もできず消えていってしまいます。働き手となる若者の親御さんまでが安心できる体制を業界全体で目指すことができるよう、リーディングカンパニーとしてできることを模索していきたいと、今もなお力を注いでいます。同時に外国人労働者の積極的な取り込みのために、建材商社と一緒にベトナムの大手ゼネコン会社とベトナムに合弁会社を立ち上げました。これは、日本に来て技術を習得した労働者が母国へ帰った際の受け皿を作るものです。これからの母国の発展に日本の技術を持ち帰って貢献してもらいながら、もし日本に労働力不足が起きた際には日本にまた戻ってきてもらえるような仕組みを作りたいとプロジェクトを進めています。

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質の高い施工法と信頼が安全を生む。

弊社はこれまで、時代を先取りした画期的な工法を開発し続けてきており、なかでもこれまでの常識を覆した工法は、ビスを使った天井の施工方法です。開発のきっかけは阪神淡路大震災でした。多くの建物が倒壊するなか、調べていくと天井が崩落している建物が多かったということがわかりました。従来の溶接工法で止めていた天井がほとんどであったため、ビスを使ってきちんと止めていく施工方法を開発しました。初めはコストが高くなることもあり、同業他社からは賛同の声をなかなか得られない時期が続きました。ビスで止める分、コストも作業時間もかかることから「オクジューさんも普通に溶接かクリップ止めでやればいいのに」と現場所長から声をかけられることもあったほどでしたが、社員・現場作業員一人ひとりが安全の大切さを理解し、信念を持って実績を重ねてくれたおかげで、今では標準化された工法となりました。

社員も作業員も全員が、安全への意識を高く持っている理由は、毎月行っている安全衛生協議会です。弊社では鉄道関係の仕事も多いのですが、特に鉄道会社は安全というものに非常にナーバスであり、工期よりも安全が最優先されます。施工を行う立場の責任として、クライアント以上に安全への意識を高く保つ必要があると考えて協議会を続けています。

安全という概念は、世代間においてもギャップがあります。私が小さい時などは、小刀で鉛筆を削っていた時代ですから、気をつけて使わなければ怪我をするということを体で覚えていました。現代の若者はというと、何度死んでも生き返ることができるゲームで遊んでいる世代ですので、危険への予知力が希薄であるように感じます。若手の教育も大きな今後の課題です。

オクジューは業界の中ではブランド力のある企業になっているという自負があります。そこには、専門知識に詳しくない人であれ「オクジューなら大丈夫であろう」という信頼と安心感があるのだと思っています。信頼は実績の積み重ねでしか得られません。品質の良さを保持するために地道な開発も必要であり、一度の失敗も招かない安全性を貫くための、作業員の安全意識の維持も欠かせません。門外漢の私を仲間として受け入れてくれた社員や協力会社の皆様に感謝するとともに、歴代社長はじめ先輩達が築き上げてきた長い歴史に誇りと責任を持ち、常に新しい工法の開発にも尽力しながら、業界の進歩に一役買っていきたいと願っています。

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