河本和真
2012年、中央大学商学部金融学科卒業。14年、北海道大学経済学研究科会計情報専攻修士課程卒業。大学院在学中に、ベンチャー企業の立ち上げに従事。卒業後は野村證券株式会社に入社。東京都内の支店にて優良法人オーナー等の富裕層や、上場企業運用部門を中心に証券リテール営業に従事。社内最速2年目での職位昇格を果たす。17年にテック系M&A企業に転職し、19年に独立。
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INTERVIEW

経営に携わっていく上では、決断や選択を迫られる局面がいくつもあります。私が意思決定をする時に大切にしているのは、物事を点で見るのではなく、長い線として捉えること。1カ月後、半年後、さらには10年後まで見据えて、どうすべきなのかを考えるように心がけています。

多くの経営者との出会いの中で、事業承継問題を知る

河本和真

大学生の時に簿記の勉強を始めて会計学の面白さに目覚めました。もう少し勉強したくて北海道大学の会計専門職大学院へ進学した後、大手証券会社の方との出会いがあって「うちへ来ないか」と声を掛けて頂いたのです。厳しそうな会社の印象はありましたが、ここでファーストキャリアを積めば後に活躍の場が広がるかもしれないと思い、就職することに決めました。
株式や債券などの金融商品を携え、一日に何件も都内の企業に飛び込み営業を繰り返す中で、多くの経営者の方と出会いました。話をするうちに、金融商品よりも企業の本業に役立つようなことをしたいという思いが芽生えてきたのです。
国内の多くの中小企業が抱える後継者不足問題を実感したのもこの時です。多くの経営者にとって、会社は自分の子供のようなものですから、なるべく畳みたくありません。身内や信頼できる社員にバトンタッチできれば理想ですが、相続税や株式買い取りの問題があって容易ではないのが現状です。そこで私はM&A(企業の合併・買収)が企業を倒産から救う手立てになると考え、テック系のM&Aに転職し、コンサルタントとして働き始めました。
日本で投資やM&Aに対するイメージはあまりポジティブなものではありません。あと数年で127万社もの中小企業が後継者不足で黒字廃業の危機を迎えているにもかかわらず、実際にM&Aが成立しているのはわずか3000社程度です。従来のコンサルティングを続けていても救える企業の数は少ないことに気づいた私は、2年ほどでコンサルタント仲間と一緒に独立して会社を立ち上げることにしました。

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マッチング成立後のフォローが肝心

M&Aの仕組みそのものを変えるために私たちが取り入れたのが、米国の「サーチファンドモデル」です。一般的なM&Aは企業の売り手と買い手の二者間で行いますが、サーチファンドは企業を売りたい人と新しく経営者になりたい人、そこに投資をする人の三者間で行うもので、私たちはそのマッチングの機会を設けます。企業の新たな買い手をどんどん増やすことで日本の中小企業の存続を守ることが、私たちの使命だと思っています。それは雇用を守り、国のGDPを支えることにもつながります。
そして、肝心なのはマッチングが成立した後です。M&A仲介者やコンサルタントの多くは、マッチングの成立をゴールにしてしまっています。実際、国内のM&Aの成功率は3割程度で、「買収してみたものの、思っていたのと違う」というケースがとても多いのです。そこで私たちは、マッチング後の経営がスムーズに進行できる仕組みを構築するための社団を立ち上げました。経済産業省が定める「ローカルベンチマーク(企業の経営状態を把握する手法)」を利用して、会社の強みや弱点、現状や将来の姿などを見える化し、たとえば「マーケティングが苦手」とか「営業力が弱い」など弱点が浮かび上がれば、その分野に強い人材をアテンドさせて軌道に乗るまでサポートする仕組みです。また、会社の方向性や舵取りを担う「経営企画室」という部署を設計するパッケージも用意しているところです。オーナーがいなくなっても会社が自走していける仕組みを整えることが大切だと思っています。
M&Aの件数そのものよりも、成功事例をじっくり作っていくことで、投資家の方たちに納得してもらえる材料をそろえていきたいですね。

証券会社を辞める時、あるお客様にご挨拶に伺いました。私がそのお客様に提案した案件はあまり芳しい結果にならなかったにもかかわらず、お客様は「今までありがとう」と言ってくださったんです。このことがきっかけで、仕事に対する意識が変わっていきました。もちろん、それまでも一生懸命仕事に取り組みましたが「営業成績を上げたい」とか「成長したい」とか、自分のことばかりだった気がします。今は相手ととことん向き合い、相手のことを考え抜くということを大切にしています。本当に相手を思うならば、良いことばかりではなく時に相手が聞きたくない嫌なことも伝えなくてはいけません。営業にはノウハウも必要ですが、何よりもその考え抜く姿勢が相手の心に訴えかける提案となるはずです。これはAIやロボットにはできない付加価値だと確信しています。

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