笠間浩明
1972年生まれ、埼玉県出身。95年中央クーパースアンドライブランド国際税務事務所入所。99年笠間商産株式会社に財務担当取締役として入社。2005年笠間税務会計事務所設立。
http://kasama-cpa.jp/

INTERVIEW

企業再生コンサルティングには正解がありません。「これで正しいのだろうか」「やってもやらなくても同じでは」と自問自答の繰り返しです。しかし、無駄なことに思えても、それによって助かる人や喜んでくれる人がいるのも事実です。目先の合理性だけで判断すると見失うことがたくさんあります。
私たちが大切にしているのは、お客様が何を一番望んでいるかを知ることです。

家業の経営危機を救いたくて

笠間浩明

実家がインテリアの卸売商社を経営していて、子供の頃は工場や倉庫によく出入りして遊び、従業員さんにかわいがってもらいました。私も将来はここで働くのかなと漠然と思っていましたが、会社は兄が継ぐだろうから別の道に進もうと考え、大学は法学部に進学しました。弁護士になるつもりもなかったので、会計士の資格を取りました。何か一つぐらい資格を取ってみようという軽い気持ちです。大学を卒業すると公認会計士として事務所で働きました。
ある時、実家の決算書を見せてもらう機会がありました。それまで実家のビジネスの状況など気にしたことがありませんでしたが、実際に目を通すと、想像していたよりも厳しい状況に愕然としました。そして、会計士としての知識を生かせば財務を立て直す手助けができるかもしれないと思い、財務担当の役員として会社に入れてもらったのです。今思うと若かったし考えが甘かったですね。財務を圧迫していた不良債権を手放すことで一定の改善はできましたが、事業のことには力が及ばず、苦しい状況は変わりませんでした。
不渡りが出るかもしれないというのは、自分が死ぬかもしれないのと同じぐらい恐ろしく不安なことです。次第に追い詰められ、寝ていてもお金の計算をしているような精神状態になっていきました。この気持ちは経営に携わった人にしかわからないと思います。
景気悪化の影響もあって、最終的に会社は破産申請しました。子供の頃からの思い出が詰まった会社を手放すのは辛いことでしたが、譲渡先が見つかり事業を残すことができたのは不幸中の幸いでした。心身ともに疲弊しましたが、開放感もありましたね。
手元に残ったのは会計士の資格だけだったので、開業を思い立ちました。最初は自宅を事務所にして一人で始動しました。クライアントも全然いなかったのでゼロからのスタートです。

  • 笠間浩明
  • 笠間浩明

辛い経験を生かして、コンサルティングができる会計士に

会計事務所に勤めていた頃は、自分は専門家なのだからと思い上がっていたところがありました。今思えば、財務の知識はあっても経営の実務的なことは何も分かっていなかったのです。しかし会社役員として経営危機に直面し、財務の健全化に奔走し、倒産に至るまでの間に多くの反省や学びを得ました。そこで、この経験を生かして企業再生のコンサルティングができる会計士になろうと考えたのです。実体験があるからこそ伝えられるノウハウがありますし、経営危機に陥った方の気持ちに当事者目線で寄り添うこともできるはずだと思いました。
企業再生の考え方は人それぞれです。会社を手元に残したい人、手放して誰かに託したい人もいれば、人員が丸ごと変わっても建物だけは残したいと考える人もいるでしょう。そもそも立ちいかなくなった会社を助ける必要はないと主張する人もいます。冷たい考え方に思えますが、社会にとって非効率な会社を無理やり延命したとしても、その場しのぎにしかならない可能性もあるので、間違いではないのです。暴論を言えば、自分が作った会社なのですからオーナーは城を枕に討死する権利だってあると思います。いろんな考え方があり、何が正しいかは分かりませんが、最終的にお客様が納得できる結果になるよう、着地点をじっくり模索しながらサポートすることを心掛けています。
今、事務所の規模はそれほど大きくありません。あまり利益を追求せずにやっているので、よく冗談で「趣味でやっている」と言っています。私一人ならこのままでいいのですが、10人弱のスタッフもいるので、今後は永続性も考えていかなくてはなりません。企業再生を核として、私の持っているノウハウをスタッフに伝えていきながら、組織的な仕事ができるような体制にしていきたいですね。

何かに挑戦する時、「無理かもしれない」「こんなことが何の役に立つのか」などと思ってちゅうちょすることもあるかもしれませんが、たとえ失敗しても、役に立たない経験はありません。
私は実家の会社が倒産するという非常に辛い体験をしましたが、結果的にその時の経験が今の私の財産になっています。若者のみなさんも、失敗を恐れずに自分のやりたい事、やるべき事を全力でやってみてください。

ページの先頭へ