亀岡義男
1967年生まれ、岡山県出身。90年福山大学工学部を卒業後、株式会社サノヤス・ヒシノ明昌(現:サノヤス造船株式会社)入社。2007年、父の経営する菱自梱包株式会社に移り、14年代表取締役社長就任。競争が激化する中で作業品質、生産性のさらなる向上に努めるべく、旧体制の慣習を打破し、新たな風を吹き込むよう、さまざまな社内改革に取り組んでいる。
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INTERVIEW

「チャンスを掴む」という言葉がありますが、チャンスは自分で作り出せるものではないので、それを掴むのは大変難しいことです。だからといって諦めてしまっていては、いつまでもチャンスは巡って来ません。私は今年で51歳になりますが、これまでの人生を振り返ってみると、自分一人の能力で成し遂げてきたことは少なく、いつも周囲の人たちに引き上げてもらい、助けてもらいながらここまで来られたのだと感じています。初めの一歩を自ら踏み出すと、必ずそこにはいくつもの手が差し伸べられます。チャンスを掴むにはそのことに気付ける感性が必要です。それには常日頃から周囲に感謝し、謙虚に自分磨きをしておくことが大切だと考えています。

父による “ 修行 ” が、自分の原点

亀岡義男

父は経営者だったのですが、会社でも家庭でも非常に厳格な人でした。兄妹たちと家の中ではしゃいでいただけでも叱られていましたね。それに萎縮してしまったのか、自分から話すことがとても苦手な子どもだったように思います。一般的な躾はもちろん、障子や網戸の張替え、床磨き、庭の手入れなどいろいろな家事もやらされていました。子どもの適当な感覚で終わらせようものなら、父からのダメ出しが入り、何度もやり直しとなって、父が納得のいく仕上がりになるまで手入れをしていました。成長するにつれ、父から「やり直し」と言われないようにするにはどうするかと考えながらやるようになったのですが、今思うとそれが自分の「原点」だったと思います。その“ 修行” があったお蔭で、自分を律し、コツコツと地道な作業を積み重ねることが出来るようになったと思いますね。

大学生になっても相変わらず自分から話すことが苦手だったのですが、卒業後に地元の造船所に就職し、電気技師として船舶の電気関係の管理監督業務に従事する中で、絶対に話さなければならない状況に直面するようになりました。新しい船ができ上がると乗組員の人たちに電気系統の取り扱いを説明する機会があるのですが、船の安全と性能に関わる大事なことですので、仕様をしっかりと理解した上で、自分の言葉にして伝える必要があったのです。また、ある程度勤務年数がたつと後輩の社員たちに仕事を教える立場になり、自分の技術や考えを正しく伝えていくために言葉を尽くして説明するということの大切さを知りました。これらの経験を経て今では話すことが少し楽になっています。

当初は父の跡を継ぐ気はなかったのです。でも、今思うと、小さい頃から親にすり込まれていたのかもしれませんね。地元の造船所から大阪に転勤になって15年が過ぎた頃、年老いていく両親を見て、ふと「このまま家はどうなるんだろう……」と思い始めました。兄妹たちは皆、東京で、いちばん近くにいるのが私で、いちばん頻繁に帰省するのも私。としたら、父の跡を継ぐのも私なのかなと。そう考え抜いて心を決め、2007年に菱自梱包に入社し、7年間の現場経験を経て代表取締役社長に就任しました。当社は国内大手自動車メーカーの倉庫で自動車部品の入出庫・保管管理・梱包・出荷作業の業務を行う会社で、仕事自体は前職ほど難易度は高くなかったので、すぐに慣れることができたのですが、「人」に関する難しさは想像以上で、今なお、苦悩する毎日が続いています。

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10年20年後も、当社の付加価値は「人」と言いたい

従業員が100人いれば100通りの考え方あって、それぞれのスキルも全く違う。もの凄く良くできる人もいれば、ちゃんと説明してもなかなか理解出来ない人もいる。それを均等にベースアップしていかないと安全も作業品質も作業効率もバラバラになってしまう。単純作業だからこそ人間が大切になってくるのです。社員一人ひとりの質をより高めるべく社内改革に取り組むのですが、これまでの父の保守的なワンマン経営によってつくられた古い企業体質が根強く残っていて、思うように推し進められないことが多々ありました。何かを提言しても頭を叩かれるような環境では自ら考え改革を推し進めようとする者はいない。指示待ち体質が普通となってしまっており、若い社員たちもそれに倣ってしまって、新たなものを生み出す力はもはやこの会社には無いように思いました。このままでは益々激化する競争社会に取り残される。それどころか淘汰されるのも時間の問題だという不安がよぎりました。

この状況を打破するためには、自分の思いを社員たちにちゃんと言葉にして伝えることが大事だと考え、『やってみよう!』を合言葉に掲げ、現在、社内の意識改革に取り組んでいるところです。若い社員たちの中には、高い能力があるにも拘らず、自分からは前に出ないという人が大勢いて、勿体ないなと感じることが多い。しかし、たとえ自分には能力がないと思っていたとしても、自ら一歩踏み出しさえすれば、必ず周りの誰かがそれを見てくれていて、手を差し伸べてくれるんだよ、と言う事を伝えたいのです。その差し伸べられた手の存在に気付くためにも、積極的に周りの人たちとコミュニケーションをとってもらいたい。それがチャンスを導く「自分磨き」の第一歩。その人がどんなことを考えているのかを聞いてみたり、あるいは自分の思いを伝えたりする中で、周囲への感謝の気持ちが湧き始め、謙虚な自分を感じる事が出来たならば、自分が思っている以上にチャンスが与えられるものだと思っています。

差し伸べられた手に気付いたら、どんどんチャレンジをして、どんどん成長していってほしいと思います。成長する喜びが仕事をする楽しさにも繋がります。仕事を楽しくするのは自分自身。会社は自分を伸ばしてくれる場所だと気付いて、会社を好きになってもらえたら嬉しいですね。うちの会社のように何か新しい商品や技術を開発するというということが少ない会社の付加価値は、やっぱり「人」なんです。もちろん、近い将来、時代の変化に即してさまざまな機材設備を導入し、省人化を図っていく必要は出て来ると思いますが、それを最終的にコントロールするのは人であるべきだと思っています。当社の付加価値は新しい技術ではなく人なんだということを、10年、20年後も言い続けたいですね。

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