岩田享也
1973年東京都出身。大学卒業後、不動産会社での営業を経て、祖父が創業した八大株式会社に入社。2014年に社長就任。トラック協会の理事や青年部本部長、東京商工会議所の運輸相互分科会評議員や青年部副幹事長も務め、業界全体の革新に多方面で携わっている。
https://hachidai.co.jp

INTERVIEW

八大は、チルド商品を中心とした食品をスーパーなどに配送する運送会社です。創業76年目となる今年まで、時代とともに運ぶものを柔軟に変えてきたことが長く運送業を続けることができた理由であると考えています。世の中にある多くは、どこかで必ず私たちのような運送会社が携わっています。社会を支える縁の下の力持ちとして、運送業という仕事に誇りを感じながら、これからも成長し続ける会社を目指していきます。

不動産営業経験から培われた人への思い

岩田享也

社会人になって初めて働いた会社は不動産会社でした。営業職を選んだのは、すべての経営の根幹にあるスキルを学ぶことができると思ったからです。現代のように働き方に意識が高まる時代ではなかったので、休む間も無く働いていましたが、それでも仕事が楽しくて仕方がなかったことを覚えています。学生から社会人となり、自分が求められているという喜び、目標を達成できる充実感が仕事のやりがいにつながっていました。販売しているのはマンションだったのですが、やはり大きな買い物ですのでお客様は皆、購入後の人生について様々な想定をしながら慎重に検討をされます。35年という長い年月にわたるローンを組むわけですから、きちんとすべての条件に腹落ちをしていただいて初めて、ご契約となります。
その家族の将来のビジョンをお聞きしながら、結婚や子育てといったライフイベントを共に想像し、お客様の目線で未来を考えることにこだわって接客をしていました。すると、自分もお客様の人生を一緒に背負ったような気持ちになるんですね。その結果、ご契約をいただいた際の喜びの大きさは計り知れません。自分が向き合っている人の人生や、家族などを思い描き、そこに何らかのモノや仕組みを提案するという思考は、現在の「従業員の人生を背負う責任者」として経営を行う信念に生かされていると感じています。両親が経営してきた八大に入社しようと思ったのは24歳の時。両親から声をかけられたことと、自分自身も早く入社して会社を継いでいきたい気持ちがありましたので、決意いたしました。最初はドライバーとしての基本的な仕事からスタート。もともと学生時代から手伝っていた仕事でしたので、ハードルは高くありませんでしたが「会社を引き継ぐ」という大きな責任を感じる中で、会社をもっと変えていきたいという物足りなさのようなものを感じていました。現場仕事を覚え、管理職になった頃には、運送業界自体の未来に大きな危機感を持っていました。従業員の働く環境についても、社会保険への加入率が低かったり、勤務中の身なりも制服などがなく軽装であったりと、他の業界に比べると粗雑な印象でした。それでも会社は回っている状態で、従業員からも変革を望む声は特になかったものの、私としては会社を担う以上、改善に力を尽くしたいと強く感じていました。

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従業員の人生を想像し向き合う

入社した当時は、まだまだ世の中が紙文化だったこともあり紙物流が売り上げの8割を占めていました。しかし、IT技術が進歩するにつれ、インターネットが発達し、紙はデータ化されていくことで、その需要は右肩下がりに。このまま紙を運んでいては未来がないと危機感を覚えました。目の前にいる社員たちの雇用を何としても守るためには、始めは痛い思いをするとしても、業態そのものを変えていかなければと考え、徐々に紙事業から花を運送するフラワー事業へと切り替えていきました。それまでの紙運送用の車両から、花運送用の車両へ買い替えなければならないなど、ハードの整備も必要であったり、運送の仕方も新しくなったりするなど、新しい事業へ取り組むには乗り越えなければならない山はいくつかありました。長い年月続いてきた会社だからこそ新しいことへの抵抗もあり、従業員の賛成を仰ぐことは簡単ではなく、非常に険しい道でした。代表として、この会社に描いている思いやビジョンを誠心誠意伝えるためのボールを投げたつもりでも、どうしても受け取る側のミットの大きさとマッチしない。それでも何とかわかってもらおうと必死になったのは、受け継いだ会社を絶対に潰してはいけないという使命感と、この会社についてきてくれる社員を幸せにしたいという思いでした。最終的には皆に協力をいただいて無事にシフトし新しいスタートを切りました。お取引先にも恵まれ急成長を遂げましたが、シェアの大きかった主要取引先との取引縮小に伴い、フラワー物流の撤退を決意。フラワー物流の季節による波や、荷運びのしにくさなど課題を洗い出し、現在、チルド食品物流へと移行しました。時代や社内の課題に合わせて、運ぶものを柔軟に変えて会社に安定をもたらすことは強みだと思っています。会社を作っているのはそこで働いている「人」です。一人ひとりが自身の成長を大切にできるよう、その土壌を用意し、皆が持ち寄ったやりたいことを皆で作っていく幸せを見いだせる会社であり続けたいと思っています。従業員の7割が家族世帯ですので、従業員のみならず、その先の家族の幸せを考えることも経営者の務めだと思っています。時代に対応する柔軟さを大切に、日々形を変えながら会社として成長していきたいと思っています。

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