石﨑広文
佐賀を本社とし、現在は、福岡市、熊本市、長崎市、大分市に支社を展開。同一地域内でのマッチングを特徴とし、人とのつながりを大切にするという企業理念を基に、M&A専門会社として、地域経済の更なる発展に寄与。
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INTERVIEW

M&Aというと、大企業間で行われるイメージが強いかもしれません。そしてM&Aを仲介する会社は東京や大阪、福岡などの都市圏に集中し、敷居が高そうだと思われがちです。私達は中小企業のM&A事業を佐賀県から展開しています。相談者は、家族経営の小さな会社、八百屋さんや魚屋さんのような商店、地域密着型のガソリンスタンドなど、小さくてもその地域に欠かせない伝統ある地場企業ばかりです。今まで地域を支えてきた素晴らしい企業の存続を手助けして、地域の発展に貢献することが私たちの使命だと思っています。

地方では後継者不足に悩む企業が約5割

石﨑広文

もともと保険会社で働いていたのですが、40歳でMBAを取得した時にM&Aのことを学び、面白いなと思いました。知人のM&Aコンサルタントにも影響を受け、この業界に足を踏み入れることになったのです。
地方では後継者不在の企業が5割に上っていて、多くの会社が廃業の道を選んでいます。これまで地域を支えてくれた産業がなくなり、長年培ってきた高い技術や伝統文化が途絶えてしまうというのは寂しいものです。地域に1社でも多くの企業を残したいという思いで、県の事業承継支援センターに入所しました。
センターは立ち上げたばかりで、スタッフは私を含め3人しかいませんでした。事業継承に携わった経験のある人材がいないのです。これまで、事業継承や廃業の相談先は金融機関や税理士事務所ぐらいしかなく、利害が絡むために相談しにくいケースもありました。公平な立場で事業承継をサポートする専門の業者が地方にもっと増えていくことが大事だと感じて、センターで3年間経験を積んだ後に独立しました。
最初は相談件数もまばらでしたが、窓口を増やし、提携先の金融機関などを充実させていくと半年ほどで相談者が増えていきました。今は九州5県に支社があります。本社から人員を送り込むのではなく、各地域で地元のスタッフを採用しました。良い提案をするためには、地元ならではの商売のやり方や地域の人の特性を熟知している必要がありますし、方言で「地元トーク」ができることも、相談者に寄り添うための大切な要素だからです。

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特殊な伝統工芸のM&Aも

大分県で竹細工を作る事業の譲渡に携わったことが印象に残っています。相談者は90歳を超える職人さんで、これまで70年かけて積み上げてきた技術、限られた場所でしか取れない希少な竹の調達方法など独自の手法や設備を誰にどのように引き継げばいいのか思案していらっしゃいました。お話を聞いていると、職人ならではの仕事へのこだわりや情熱が伝わってきました。同業者の少ない特殊な業種ですが、竹細工への熱意のある若い事業継承希望者が現れ、交渉をお手伝いしました。譲渡は成立し、譲り受けた方は、先代の職人さんに経営を伴走してもらいながら、技術を習得中です。職人さんが70年かけて培ってきたものをわずか1年ほどの短い期間で受け継ぐのは容易なことではありませんが、事業が軌道に乗り職人さんが安心して引退できるまで、できる限りサポートしたいと思っています。地域で生まれた伝統工芸を絶やさずにつなげるお手伝いができたことに大きなやりがいを感じました。
私たちの役割は、譲渡希望者の経営ノウハウや人脈、マーケットを引き継ぐサポートをして、譲渡後もできるだけスムーズに自力で経営していけるように伴走し、時に「どうですか」と様子をうかがう。そんなアナログな部分が求められているのだと思います。
M&A仲介業は、お見合いの仲人役と同じです。いつまでも間に入って口を挟み続けていては二者間の信頼関係は深まりませんし、誰が経営しているのか分からなくなってしまいます。どこまで介入するか、その塩梅や間合いの見極め方は本当に難しいです。これが正解というマニュアルはありません。会社は生き物なのだということを痛感します。

今後、大型のM&Aはビジネスの成長戦略としてますます盛んになっていくと思います。AIによるマッチングも実現するかもしれません。一方、私達が手掛けているような小規模なM&Aは人の手が必要です。人と人とのつながりやコミュニケーションを大切にしながら、地域密着型のM&Aを続けていきたいですね。
また、今までは九州を拠点としていましたが、山口県や四国地方での事業展開も検討しているところです。事業を大きくして、いずれ上場できればいいなと思っているんです。佐賀県に上場企業を増やして、県内総生産を下支えするような企業になることが目標です。

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