石川基
1975年生まれ、北海道出身。2001年新潟大学歯学部を卒業後、東京医科歯科大学顎口腔外科分野に所属。石川歯科医院に、院長として勤務。11年スウェーデン王立イエテボリ大学矯正歯科専門医育成コースへ留学。14年同コース卒業、スウェーデン矯正歯科専門医ライセンスを取得。15年東京都中央区銀座に「スウェーデン矯正歯科」開院。現在まで院長を務めるほか、World Federation of Orthodontists , European Orthodontic Society , American Association of Orthodontists , 日本顎関節学会、日本歯周病学会、日本矯正歯科学会などに所属し、科学的根拠に基づいた矯正治療の発展と啓発に努める。
https://sweden-oc.com

INTERVIEW

歯周病治療の知識と、インプラント治療の技術、矯正治療の経験。歯科医師として14年かけて身に付けたノウハウを組み合わせながら、世の中に本当に必要な歯科治療を考えたとき、世界最高レベルのトレーニングが必要だと感じました。35歳で「現代歯科医療の聖地」スウェーデンへの留学を決意。異国の地での3年間がもたらしたのは、日本で2人目となるスウェーデン矯正歯科専門医ライセンスの取得と、人生の宝物といえる経験の数々でした。正確な診断を行い、科学的根拠を用いた戦略を立て、世界レベルの治療を提供する。包括的な「優しい歯科診療」で、患者さんの満足を追求し続けたいと思います。

世界レベルの治療技術を日本へ持ち帰りたい

石川基

子供の頃は北海道で育ち、冬はスキー、夏はサッカーに夢中な少年でした。父親は「町の歯医者さん」としてやりがいを持って働いていて、患者さんに親しまれ感謝されていたので「人の役に立つ仕事っていいな」と思っていたのを覚えています。幸い手先が器用でしたし、自分も歯科医になろうと決め、新潟大学歯学部に入学。卒業後は東京医科歯科大学で口腔外科(手術と全身管理)のトレーニングを受け、習得した知識と手技をもとに、一般歯科クリニックで臨床経験を積みました。特に歯周病およびインプラント治療を学ぶうち、矯正治療の重要性を感じるようになりました。

例えば、歯周病(歯槽膿漏)の治療を患者さんに行うと、患者さんがかみ合わせの改善を希望され、それが改善すると今度は歯並びが気になり・・・と、次第に患者さんの訴えが矯正歯科の分野へ変わっていくことがよくありました。初めから矯正治療を見越していれば、より治療期間を短縮し、患者さんの負担をもっと減らせるはずなのです。また、一般歯科は多くが専門性の高い矯正治療に対応しておらず、医師が情報を得る手段も少ないために、子供の先天的な永久歯欠損などの相談があっても、様子を見ることしかできないケースもありました。かつては私もそうでした。歯科研究において聖地と言われるスウェーデンでは、こうした症例は矯正専門医が対応します。一般歯科と矯正歯科を融合した治療を身につければ、患者さんと、専門外の分野で悩む歯科医師、どちらも手助けできると考えたのです。それでも、これ以上悶々(もんもん)と悩みたくない。社会貢献ができないのならば、つまらない歯科医師人生になると思い、当時私は35歳で子供も2人抱えていましたが、スウェーデン王立イエテボリ大学の矯正歯科専門医育成コースへ3年間の留学を決断しました。

半年ほど英語を勉強して試験に合格しましたが、いわゆる「生きた英語」を知らず、留学直後は苦労しました。語学以外も全てがハードです。スウェーデンでは矯正治療が無料になる範囲が広く、イエテボリ大学は世界的な有名大学ということも相まって、研修医でも300人以上の患者さんを担当します。その全員の治療計画作りと、教科書や文献の口頭試問やプレゼンの準備などが毎日山積みなのです。覚悟していたとはいえ、1年目は「これを悲惨というのだな」といった状況でした。しかし、目標を果たすまで帰るわけにはいきません。もしドロップアウトしたら、今後は日本人留学生の受け入れがなくなるかもしれない。私が留学できたのも、過去に留学した日本人の評価が高かったからでしょう。よい前例を増やせば、今後も学びたい日本人の受け入れポジション確保につながり、ひいては日本の患者さんたちに還元できる。そう思うと集中して全力で取り組むことができました。

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  • 石川基

新旧に関わりなく情報を見極めて学び、還元し続ける

3年の留学を経て、日本で2人目となるスウェーデン矯正歯科専門医のライセンスを取得。レアケースを含む多種多様な臨床経験を積み、世界で使われている治療器具や治療方法にも詳しくなりました。今でも翻訳前の英語論文を毎朝読み、その著者とEmailで直接ディスカッションすることがあります。また、学会では発言することも続けています。3年間のあらゆる経験と、出会った人々は、一生ものの財産になりました。2014年に帰国し、翌年5月に開業。口腔外科で学び、歯周病治療とインプラント治療に携わったのち、世界レベルの知識と技術を学んだ矯正専門医になることができました。全ての学びと経験を生かして、患者さんへどのような治療を提供すべきかと考えると、やはり「納得のいく治療」だと思います。

矯正治療はどうしても時間がかかり、患者さんの不安も膨らみます。その心境を考えて、まずは治療方法を丁寧に説明する。科学的な根拠を精査して、信用できる治療計画を提案する。そして治療中は経過写真などを見せて、安心してもらう。一貫して不安や不足がないように手を尽くすのが求められている治療だと思います。よい矯正ができた患者さんの笑顔は何よりうれしいですね。日本ではまだ、矯正治療は子どもに行うというイメージが強いかもしれません。もちろん早く治療を始めれば、そのぶん長く健康な美しい歯と共に過ごせます。しかし欧米ではもっと身近で、老若男女の誰もが行う治療です。むしろ大人の方が、矯正によって歯科治療の質を向上できたり、コンプレックスが解消したりと、健康面にも有益だといえます。40〜60代の患者さんを治療して「この年齢からこんなに良くなるなんて」と喜ばれると、もっと広く世の中へ向けて「矯正治療はいつでも始められます」と伝えなければと感じます。

また、これからは患者さんだけでなく、一般歯科医師の方にも矯正治療の知識を共有していきたいですね。歯科医師向けの講演会に登壇すると、多くの参加者から留学前の私と同じ悩みを聞くのです。講習会や執筆なども行なっていますが、違った得意分野をもつ歯科医師同士がつながって悩みを共有することで、よりよい治療を多くの方々に提供できるようになるでしょう。そのための橋渡しや、情報発信ができればと考えています。自分の仕事に自信を持つ唯一の方法は、常に勉強を続けて前に進むことだと思います。それでいて高慢にならず、謙虚でいるのも大切です。謙虚に自信を持って、一生勉強を続けることが、私の人生の道標になるのだと思っています。

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