NEC ビジネスイノベーション統括ユニット エグゼクティブ・ディレクター 森 英人氏 × NEC データサイエンス研究所 主席研究員 藤巻 遼平氏NEC ビジネスイノベーション統括ユニット エグゼクティブ・ディレクター 森 英人氏 × NEC データサイエンス研究所 主席研究員 藤巻 遼平氏
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高精度の未来予測を、
すべての企業に。
「予測分析自動化技術」が
革新的にデータ分析を変える。

これまでのデータ分析は「過去に何が起こったのか」を可視化することが主だったが、現在多くの企業が喫緊の経営課題に挙げているのは、デジタル化によって得られるビッグデータを「未来予測」に活用することだ。
しかしながら、膨大なデータを分析し、未来を予測するのは簡単なことではない。優秀なデータサイエンティスト人材を確保し、十分なリソースをつぎ込むことができる企業は限られる。NECが開発した「予測分析自動化技術」は、データから未来予測モデルを自動に生成するテクノロジー。本格的なビッグデータ分析を、より効率的に実現できるソリューションとして注目され、多くの企業で導入が進んでいる。
欧州・米国・アジアで開発チームを率いる藤巻 遼平氏と、日本IBM、日本テラデータでデータ分析・活用のプロフェッショナルとしてキャリアを重ね、NECで本ビジネスの事業加速を担う森 英人氏に、「予測分析自動化技術」の革新性とビジネス活用での可能性について聞いた。

立ちはだかるギャップ
「データ分析すること」と
「ビジネス活用」

── 日本企業の経営におけるデータ活用は、どの程度進んでいると見ていますか。

藤巻 遼平 氏

NEC
データサイエンス研究所
主席研究員
藤巻 遼平(ふじまき りょうへい)

藤巻 遼平(以下、藤巻) 私は7年前から米国に活動の拠点を置いていますが、米国の経営者はデータについて非常に厳しい目を持っています。現在のデータ分析のテクノロジーで何ができるかをよく知っていて、それを使って自社の課題をどう解決できるのかということに大きな関心があります。

 それに対し日本では、「データドリブンな経営」、つまり、データに基づいた判断によって企業の成長を目指していくというカルチャーがまだ根付いていないように思います。データ分析によって何ができるのかがよくわからない、ツールがあっても有効な使い方がわからない──。そう感じている経営者がまだまだ多いのではないでしょうか。

── 森さんも、長年にわたり日本企業のデータ活用を見てこられた経歴をお持ちです。日本企業のデータ活用についてどうご覧になっていますか。

森 英人 氏

NEC
ビジネスイノベーション
統括ユニット
エグゼクティブ・ディレクター
森 英人(もり ひでと)

森 英人(以下、森) 私はこれまで、業務データをその業務とは違う観点からどのようにビジネスに生かしていくか、というテーマに取り組み、日本IBM、日本テラデータとキャリアを重ねてきました。その意味では、私のキャリアはそのままデータ活用の歴史と連動したものといえるでしょう。

 例えば、約25年前から、IBMで超並列データベース技術によるデータウエアハウス構築に取り組み、その後、アセンシャル・ソフトウエアの日本法人責任者としてデータの精度やガバナンスに注力しました。その後、時代の流れはIT部門からビジネスユーザーにシフト。「IBM SPSS」「IBM Cognos」など、ビジネスユーザー向けのソフトウエアを含めた、全アナリティクス関連製品を統括する責任者を務めました。ここまでは、ハードウエア/ソフトウエア環境を整備し、データ基盤を構築することに焦点が当たっていた時代でした。

 その後、データをビジネス活用するためのコンサルティング事業も担当し、IBM Watsonのビジネス活用に関するワークショップを開催したこともありました。このあたりから、「ベンダーはテクノロジーの提供とデータ活用のシナリオ作成支援を行うので、あとはご自由に、自社で集めたデータをビジネスに活用しましょう」というアプローチが主流になっていったわけです。

 2017年に日本テラデータへ移り、実際に分析業務をデリバリーするアナリティクス・ビジネス・コンサルティング担当執行役員となりました。ここでは、ビジネスコンサルタントとデータサイエンティストの双方が携わる領域の事業を担当。データの隠れた意味を見いだして予測モデルを作成し、分析結果を「故障予知」「不正利用防止」といった具体的な未来予測に役立てるという業務を、主に製造業や金融業のお客さまと一緒に取り組んできました。

 そこで直面したのが、「データサイエンティスト不足」という問題でした。

 従来のデータ分析は、人の「スキル」と「ひらめき」に頼る傾向が強く、特に予測モデルの精度に決定的なインパクトがあるデータ整備や特徴量の抽出に、非常に多くの時間と工数がかかっていました。正直なところ、私もここは「人間しかできない領域」と思い、データサイエンティストのリソースがネックになることは致し方ないと諦めていたところもあります。

 ところが、この予測モデルを自動で、しかも短時間で設計するという画期的な技術をNECが開発したと知り、非常に驚きました。開発者である藤巻本人に会ってみたいという衝動にかられ、私費で北米へも飛びました。結果、素晴らしい技術を目の当たりにし、私はNECに移籍して藤巻をサポートしていくことを決断したのです。

「人間にしかできない領域」
の自動化をNECが実現

── それが、NECの「予測分析自動化技術」というわけですね。その特長を教えてください。

藤巻 「特徴量の設計の自動化」「予測モデルの設計の自動化」、そして「ホワイトボックス化」。この3つが大きな特長です。中でも特徴量の設計は、機械学習が世に登場して以来、長年「人間でなければ絶対に無理」といわれてきた領域で、先にも述べましたが、ベテランのデータサイエンティストでも頭を悩ませ、非常に多くの手間と時間を費やすことになっていた作業です。我々はこれを自動化するテクノロジーを世界で初めて開発できたことで、圧倒的な作業時間の効率化を図ることができました。

 では、その「特徴量」とは何か。簡単にいえば、AIが機械学習で学ぶ際、どのデータが重要で、どのデータが重要でないかを決める、個々のデータの特性のようなものです。これを適切に設計することが、データ分析結果の有用性を左右する非常に重要なプロセスとなります。

 なぜ、この設計作業は「人間にしかできない」のか。それは、有効な変数を決めるのはビジネスの「コンテキスト(文脈)」にほかならないからです。重要な変数は、金融や流通、製造といった業種はもちろん、企業ごと、部門ごとにすべて異なる。そのため、これを見極めるには、ビジネスの文脈を深く理解している必要があるのです。

── AIはそれがわからないので、特徴量を設計することはできないということですね。しかし、人間が行うにしても、多くの労力や時間がかかりそうです。

藤巻 その通りです。我々は独自のアルゴリズムによってそれを自動化しました。しかも、業種や企業、事業部によらず、使うのはたった1つのアルゴリズムだけ。事前に大量の業種知識を教え込む必要もありません。ここにデータを投入することで、AIが個別のビジネスコンテキストを基に、特徴量を設計してくれます。

 こうして機械学習を重ねて作りだした大量の予測モデルから、目的に合わせた最適な予測モデルを選択/組み合わせる作業も自動で行うことができます。この一連のプロセスを可能にしたのが、我々の予測分析自動化技術です。

── データサイエンティストの負荷が減り、より専門的な業務にリソースを割けるようになれば、企業がデータ活用によって得られる成果も大きく変わりそうですね。

藤巻 そう考えています。分析結果を基にしたキャンペーンを打ち、売り上げアップにつなげるといった、よりビジネスに肉薄した成果が期待できるようになるはずです。

図1 NECの実現する予測分析自動化

図1 NECの実現する予測分析自動化

図1 NECの実現する予測分析自動化

図1 NECの実現する予測分析自動化

何故、AIはこの予測モデルを
導きだしたのか?
その「理由」を自然言語で表示する

── もう1つの特長である「ホワイトボックス化」についても教えてください。

藤巻 AIがなぜその結果を導いたのか、「理由」が見えるということです。

 私たちは、分析結果をビジネスで活用する以上、「導き出した過程や理由は人間が理解できる状態で可視化されるべき」というポリシーを持っています。理由がブラックボックスでわからなかったり、機械にしか理解できない状態で表示されたりするのでは、ビジネスアクションにつなげることは困難だからです。これはサービス化を見据えて必須の機能だと考えていました。

 考えてみてください。どんなに信ぴょう性が高そうな分析結果でも、「理由はわかりませんが、AIがそう言っています」で経営層を説得できるでしょうか。予測分析自動化技術では、日本語を含む自然言語で、結果を導いた理由をAIが教えてくれます。これにより、現場の課題である分析技術とビジネスの乖離(かいり)も埋めることができます。

図2 根拠がわからないブラックボックス型AI 根拠がわかるホワイトボックス型AI

図2 根拠がわからないブラックボックス型AI
根拠がわかるホワイトボックス型AI

図2 根拠がわからないブラックボックス型AI 根拠がわかるホワイトボックス型AI

図2 根拠がわからないブラックボックス型AI
根拠がわかるホワイトボックス型AI

── 研究開発の過程では、多くの実証実験も進めてきたそうですね。

藤巻 昨年は様々な業界のお客さまの協力を得て、実証実験を行ってきました。

 例えば三井住友銀行(以下、SMBC)さまは、複数のデータサイエンティストからなるプロジェクト体制をとって、1つのテーマの分析を2~3カ月もの時間をかけて行っており、刻々と変化する顧客ニーズを十分にとらえることができないという課題に直面していました。予測分析自動化技術を試験的に導入したところ、たった1日で作成された予測モデルが、従来と同等か、それ以上の精度で実現できることがわかりました。

 その結果から、SMBCグループ全体での活用を進め、自社内で予測分析自動化技術を使い、既に数十件のモデルを実用化されています。SMBCさまからは、今後もマーケティングだけではなく、金融業務全体を変革するために活用を進めていくとうかがっています。

 ほかにも複数の業界のお客さまと実証実験を実施してきましたが、業界や業務にかかわらず、同様の評価をいただくことができています。また、新たなお客さまとの検証を進める中で技術自体も進化しており、今後も自動化の領域は広がっていくという、開発者としての自信も新たにしています。あとは1日でも早く、お客さまに使っていただけるかたちを整えたいですね。

 予測分析自動化技術を用いたサービスは、2018年度上期のリリースを目指して準備中です。この技術が広まることで、データ分析がもっと当たり前に、企業活動の一部となっていけば素晴らしいと思います。

 データで未来を予測することで、世の中に出まわる商品やサービスの質が向上し、人々の生活がより上質に快適になる。私と藤巻は、そう信じています。

NECの予測分析自動化技術は、
様々な業種のお客様と
実証実験を行い、
大きな成果を挙げています

大手運輸業A社様

 既に様々な領域でAIを用いたデータ活用に取り組んでいたA社。予測分析も行っていたが、「データから新たに特徴を発見し、仮説を立て、分析する」という一連のプロセスを人力で行うことに限界を感じていた。一定の成果を出しているが、更なる精度向上を目指していた。

 予測分析自動化技術は、このプロセスを改善。自社Webサイトにおける行動データなどを基に、商品購入の傾向などを見いだす予測モデルを自動で生成したところ、経験豊富なデータサイエンティストが作成したモデルと同程度の予測精度を達成したという。

 さらにA社は、ホワイトボックス型のメリットを生かし、予測モデルの中身も解析することで、人間では思いつけなかった新たな発見や知見を多数得ている。現在はそこから新たなビジネスも生まれつつあるという。

大手メディア業B社様

 自社Webメディアにおける新規購読会員獲得、および長期的な会員の離脱防止を課題としていたB社。数々のプロモーションを実施してはきたものの、思うような成果が出ずに悩んでいた。

 そこでB社は、工数を増やさず、プロモーション施策の精度向上を図るために予測分析自動化技術を導入。会員のアクセスログや行動ログ、登録時の興味・関心項目などのデータをアルゴリズムに投入することで、「契約しそうな人」「解約しそうな人」を予測するモデルを生成した。

 短期間で自動生成したモデルは、データサイエンティストが生成した予測モデルを約19%上回る精度を達成。的確な入会勧誘/解約防止のアプローチを行うことが可能になっている。

大手製薬業C社様

 日々顧客から入る注文に対し、タイムリーに製品を出荷する――。製品の安定供給に向けて特に重要なのが、正確なリードタイムの予測に基づく生産計画だ。リードタイムは、製品の種類や注文の量だけではなく、工場で発生する障害や停止など、様々な要因によって変動するため、エキスパートにとっても正確な予測が難しい。

 このリードタイム予測にNECの予測分析自動化技術を適用したところ、従来使用してきた予測モデルとの比較で約20パーセント誤差を削減することに成功。安定した出荷、工場の稼働率向上、安全在庫の削減などの効果につなげることができるという。