JOGMEC

提供:独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構

10月8日は地熱発電の日

1966年10月8日、
国内初の地熱発電所(岩手県・松川)が運転を開始しました。

地域産業振興の要に
地熱資源の活用を

地熱シンポジウム in 湯沢

地域産業振興の要に地熱資源の活用を

 持続可能な経済成長と両立する脱炭素化への動きが世界で高まっている。今年5月、出力1万kW超の地熱発電では国内で23年ぶりの新規稼働となる山葵沢地熱発電所(秋田県湯沢市)が運転を開始。再生可能エネルギーへの転換で懸念される不安定さがなく、国内に数多くの開発候補地を残す地熱発電に、改めて耳目が集まっている。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は、同発電所が立地する湯沢市で8月8日、「地熱シンポジウム in 湯沢」を開催。秋田出身の女優加藤夏希氏などをゲストに招き、多彩な取り組みが紹介された。

来賓挨拶

増子 輝彦 氏

ふるさと創生へ 
多様な事業が育つ開発を

超党派地熱発電普及推進議員連盟 共同代表 参議院議員

増子 輝彦 氏

 地熱は、昼夜・天候を問わず発電できるベースロード電源になるだけではなく、熱を利用した様々な事業展開が可能です。地熱開発では、地域の皆様との相互理解を深めることが何より重要。地熱を中心に多様な事業が育ち、ふるさと創生につながる好事例を、全国に広げたい。当議員連盟としてもしっかりとバックアップをしていきます。

御法川 信英 氏

秋田を農産物・エネルギーの
供給基地に

超党派地熱発電普及推進議員連盟 衆議院議員

御法川 信英 氏

 日本の食料自給率が37%にまで下がるなか、秋田県は全国2位の188%。農産物供給地として不動の地位を築いていますが、さらに高付加価値の農産物を増やし、出荷額の向上も目指したい。再生可能エネルギー分野でも、地の利を生かした地熱や洋上風力発電などの開発に取り組み、秋田を全国のエネルギー供給基地にしていきます。

開催県代表挨拶

佐竹 敬久 氏

地元との対話大切に 
未来志向の知恵結集

秋田県知事

佐竹 敬久 氏

 秋田県には、今年5月に稼働した山葵沢地熱発電所をはじめ、4カ所の地熱発電所が立地しており、地熱発電設備容量は全国2位。湯沢市でさらに3地域で地熱開発の調査が進行中で、地元の皆様との対話を大切にしながら合意形成が進んでいる優良な事例です。若い世代を中心に、天然資源をいかに地域の発展につなげるか、未来志向の知恵が集まっています。

主催者挨拶

細野 哲弘 氏

日本に豊富な地熱資源を
地域に生かす

JOGMEC 理事長

細野 哲弘 氏

 日本には世界有数の豊富な地熱資源がありますが、活用できているのはごく一部です。「地熱資源を地域に活かす」をテーマにした今回のシンポジウムでは、地域と共生した持続可能な地熱開発事例を紹介。当機構が新設した地熱活用の「モデル地区認定」授与式などを通じ、地域振興に資する模範的な取り組みが全国に広がることを期待します。

モデル地区認定証 授与式 
認定モデル地区取り組み紹介

▲写真左から、JOGMEC細野氏、森町梶谷氏、八幡平市田村氏、湯沢市鈴木氏、女優加藤氏▲写真左から、JOGMEC細野氏、森町梶谷氏、八幡平市田村氏、湯沢市鈴木氏、女優加藤氏

 地熱資源の開発では、地元の企業や住民とWin-Winの関係が築けることが重要だ。JOGMECは「地熱資源の活用による地域の産業振興モデル地区」を認定し、シンポジウム内の式典で認定証を授与した。
 選ばれたのは北海道森町、岩手県八幡平市、秋田県湯沢市の3自治体。森町は、1982年に地熱発電を開始した濁川地区の森発電所を中核に熱水供給によるトマトなどのハウス栽培を地域一体となって進めた実績が評価された。八幡平市は、半世紀以上稼働し続ける松川地熱発電所からの熱水供給により温泉分譲地開発をはじめとする産業振興を進めた実績が、湯沢市は、「ゆざわジオパーク」など、地熱を観光や地域産業のために多角的に活用した取り組みが評価されての認定となった。
 代表として森町梶谷惠造町長、八幡平市田村正彦市長、湯沢市鈴木俊夫市長が参集。登壇した3首長に、「あきた美の国大使」を務める女優の加藤夏希氏から花束が贈呈されると、会場の空気は一気に和んで華やかになった。

森町の取り組み紹介

梶谷 惠造 氏

長年の信頼関係醸成が大切

北海道森町 町長 梶谷 惠造 氏

 濁川地区の森発電所の運転開始から38年目を迎えますが、地熱水の農業利用も同様に長い歴史を刻んできました。発電所の営業が始まって2年後には、地熱水を熱交換器に導いて河川水を加温し、ハウス団地に供給する仕組みを整備しました。2つの地熱利用ハウス組合に各2つの熱交換器を設置。2015年に熱交換器、循環ポンプと配管の一部を改修するまで34年間働き続けてくれました。
 森町で長年にわたって地元と良好な関係を築けている理由は3点。地熱利用が始まった当初から地元関係者による連絡協議会を組織して地熱開発の諸問題について話し合ってきたこと、協議会と北海道電力と森町の3者で研修会や情報交換を継続していること、生産井からの熱水の一部を地元に無償提供したことです。
 地元との合意形成には長年にわたる信頼関係の醸成が必要だと思います。

八幡平市の取り組み紹介

田村 正彦 氏

熱水供給で温泉分譲地を造成

岩手県八幡平市 市長 田村 正彦 氏

 日本で初めて地熱発電の商業運転を開始した松川地熱発電所は、50年前とまったく変わらない発電を今も続けています。初期投資は当時としては高額で工事のリスクもありましたが、ひとたび稼働すれば長期間にわたって低コスト運用ができ、安全で安定的なエネルギー供給が可能なことを実証しています。今年の1月には、設備容量7500kWの松尾八幡平地熱発電所も運転を開始しました。
 松川地熱発電所が地域活性化に果たした役割は多大です。造成した分譲地に地熱水を供給。ホテルや病院を誘致して東八幡平温泉郷という温泉地に育て上げ、雇用を増やしました。熱水の農業利用にも先駆的に取り組みました。
 今後日本全国に、こうした多角的な地熱開発が広がっていくことを祈念します。

基調講演

松葉谷 治 氏

同位体の特徴で判断 
利用可能な地熱水

秋田大学 名誉教授 松葉谷 治 氏

 日本は地熱資源が豊富といわれますが、これまでの歴史を振り返ると、開発が順調に発展しているとは言えません。
 その理由の一つに、資源調査の対象である地熱水の性質が分かっていないことが挙げられます。
 地面の中は誰にも見えない。見えないから何が起こっているか分からない、判断材料がないと思い込む人は少なくありません。地熱資源を新たに開発する際の懸念の多くは、現在利用している温泉や周辺環境に影響が出るのではないかというもの。しかし、採取した水に含まれる水素と酸素の同位体比を調べることでその地熱水の由来が分かり、同じ起源の資源かどうかを判別することが可能です。
 地熱水は大別して、火山ガスと一緒に上がってくる火山ガス由来のものと、雨や雪解け水などが浸透して地熱で高温化した天水由来のものがあります。例えば湯沢市の川原毛地獄の地熱水は火山ガス由来特有の同位体比になりますが、そこから2kmも離れていない上の岱の地熱水は天水由来の特徴を示します。それぞれの地熱水は混ざり合うことなく、異なる縦方向の割れ目を通って噴き上がってきていることや、互いの資源に影響し合っていないことが分かります。
 地熱水や温泉水の起源を分析する同位体比の研究は、地熱資源調査にとって大変有益です。関係者と情報を共有しながら、この研究を一層深めたいと思います。

トークセッション
「地熱のまち“ゆざわ”」

▲写真左から、地熱利用農業者:佐藤章氏、湯沢市長:鈴木俊夫氏、ゲスト:加藤夏希氏、コーディネーター:コミュニティーデザイナー山崎亮氏、湯沢翔北高校商業クラブ 部長:日野博文氏、ゆざわジオパークガイドの会 事務局長:小松雅氏▲写真左から、ゆざわジオパークガイドの会 事務局長:小松雅氏、湯沢市長:鈴木俊夫氏、ゲスト:加藤夏希氏、コーディネーター:コミュニティーデザイナー山崎亮氏、湯沢翔北高校商業クラブ 部長:日野博文氏、地熱利用農業者:佐藤章氏

地元に根差す資源活用広げ 
地域の未来を語り合う

地熱のまち“ゆざわ”では、その魅力や資源を様々な立場の人が事業化しています。地熱開発に当たっては30年以上前から綿密な調査と環境アセスメントを行い、地域との丁寧な対話を続けてきました。結果として地域の皆様が自ら地熱資源の魅力を引き出し、地域の産業振興につなげてくれているのです。

火山活動で形成された大地の恵みや景観の美しさ、そこに根差した人の営みなど、伝えていくべき価値は枚挙にいとまがありません。小学生の人気ジオパークガイドが活躍するなど、若い力が台頭しています。

高校のクラブ活動で商品開発をしており、地元三関産のサクランボを地熱水利用の乾燥機でドライフルーツにした「ミッチェリー」を開発。商品として出荷できない摘果の処理に困った農家からの相談がきっかけです。

ハウス野菜の水耕栽培に取り組んでいます。ハウス内や培養液の温度管理だけでなく、ハウス周辺の融雪にも地熱水を活用。主にサンチュなどを地元に、パクチーを東京へ出荷しています。

ミッチェリーは品種によって多彩な甘みと酸味が楽しめますね。サンチュやパクチーも、新鮮で滋味がぎゅっと詰まっていて、本当においしい。若い時から再エネの知識や地元の魅力について深く考える機会が広がっていることに希望を感じます。

若い人たちが地域について学び、地域の課題解決のために自ら動き出す。これが望ましい地域産業振興の姿でしょう。今後全国で地熱利用が広がり、それが地域の未来について語り合うきっかけになるといいですね。

パネルディスカッション

▲写真左から、コーディネーター:山崎亮氏、中央温泉研究所前所長益子保氏、パネリスト:秋田県温泉協会株式会社副会長/乳頭温泉郷・鶴の湯温泉会長佐藤和志氏、湯沢地熱取締役社長大樂良二氏、日本地熱協会会長石井義朗氏、京都大学経済研究所山東晃大氏▲写真左から、コーディネーター:山崎亮氏、中央温泉研究所前所長益子保氏、パネリスト:秋田県温泉協会副会長/乳頭温泉郷・鶴の湯温泉会長佐藤和志氏、湯沢地熱㈱取締役社長大樂良二氏、日本地熱協会会長石井義朗氏、京都大学経済研究所山東晃大氏

地熱は地域の宝 
モニタリングでデータ集める

地熱発電は、天候や季節に左右されずに安定供給ができる優れた再エネです。日本には立地に適した地域が数多くありますが、全国的に見ると地熱資源を十分に活用しているとはいいにくい面があります。課題はどこにあるのでしょうか。

地熱利用の一つの形態として、温泉は非常に多様な広がりがあります。温泉の豊かさは周辺の自然環境と一体であり、温泉事業者が、温泉地開発よりも大きな自然改変を伴う地熱発電に懸念を持つのは当然ともいえます。特に自然湧出泉周辺の開発には注意が必要で、相互に影響があり得るという前提で調査を始める必要があるでしょう。

地熱発電は地下から大量の地熱水を取り出すので、現在自噴している温泉の湯量や温度、泉質などが変わってしまうのではないかとの危惧があります。温泉事業を営む立場から考えると、地下の圧力が下がって温泉が自噴しなくなることは死活問題。ボーリングをして、ポンプでくみ上げる事態になるかもしれません。自噴する温泉は地域の宝。地表に出るまでにいろいろな地質や鉱物の間を通るからこそ、人の体にやさしい温泉になるのだと考えています。

当社は山葵沢での2009年の調査泉掘削に先立ち、温泉事業者を何度も訪問して調査内容を説明しました。その際の対話を通じて温泉のモニタリングを毎月実施することを約束。建設工事前から、工事中も運転開始後の現在も休むことなく継続しており、結果を逐次開示、説明しながら、信頼関係の醸成を図っています。
また、湯沢市と取り交わした自然環境の保存に関する協定に基づく環境モニタリングも、水、大気、希少動植物、廃棄物など多岐にわたって行いました。今後も温泉モニタリングデータなどに変化が表れないか細心の注意を払っていきます。

最近は温泉の温度や湯量などを自動で記録する計測器も出ており、温泉事業者が自ら温泉の基礎データを取ることも容易になってきました。新たな地熱開発以前に、日々の変動の現状を知ることも大切です。

地域の将来像 
カタチにしていく意識共有が鍵

地域との合意形成で重要なことは何でしょうか。

対話を通して地元の関係者の声を傾聴しながら進めることでしょう。湯沢市の取り組みが良い例です。小安地域の調査では、12年から18年の間に住民説明会を8回、現場見学会を5回、地域協議会を8回行っています。欠席した温泉関係者には必ず当日や翌日に改めて個別に訪問をして、その内容を伝えてきました。自主的な事前環境調査も13年から継続して実施して現在、環境アセスメントの報告書を提出する段階まできました。
小安地域は国定公園の第2種、第3種の特別地域に位置するので、自然環境の保全と地熱開発の調和が十分に図られた優良事例である必要があります。環境省からの通達による「特段の取り組み」を行うことも、事業推進の前提条件。具体的には①地熱開発業者、地方公共団体、地域住民、自然保護団体、温泉事業者による地域の合意形成②自然環境、景観などへの影響を最小限にとどめる技術・手法の導入③温泉事業者への熱水供給など、地域への貢献④長期にわたるモニタリングと地域に対する情報の開示と共有――の4点です。小安地域のような特別な地域でなくても、こうした取り組みはしていくべきだと思います。

地域住民や企業、自治体にとっては、地熱発電による経済効果への期待もあるでしょう。ニュージーランドの「マオリ信託」は、その点で興味深い事例。北部先住民族マオリの居住地域に地熱資源が広がっているのですが、土地所有者が細かく分かれて開発がしにくかった。そこで、土地を所有者全体の便益のために集約的に管理することにしたのです。結果、地域全体と共生した地熱発電事業に出資が可能になり、地熱を利用した産業も広がりました。
また、私が長崎県の小浜温泉に住んでいた時の経験ですが、小規模の地熱発電所開発への取り組みがきっかけで、町の未来を町全体で考えようという流れが生まれました。経済面で地域にどんな波及効果があるのかを定量化、情報共有することで地域全体の合意形成が始まり、それが地域の活性化になったのです。地域の産業戦略を練ることは、地域の未来を語り合うことと同じ。地域コミュニティー形成のきっかけにもなります。

地熱開発を考えている地域で、調査を始める前に大反対が起きて進まない事例もありますが、経済的にどんな可能性があるのか知っておくことは大切です。

地域の資源の現状をより深く理解することで、未来に向けてどんな選択肢があるのかも明確になってきます。地域の将来像をカタチにしていくために、まず地域関係者間でコミュニケーションを始めましょう。正確な情報と意識を共有することは、地域の産業振興につながっていくでしょう。

閉会の挨拶

相樂 希美 氏

地域との共生大切に、
地熱利用拡大へ

経済産業省 東北経済産業局長

相樂 希美 氏

 地熱資源開発に関する活発な議論に触れ、地域の関係者が主導する開発の素晴らしさを改めて実感しました。政府としては、再エネを重要な低炭素の国産エネルギー源と位置づけ、主力電源化への取り組みを進めています。運用コストが低く安定供給できる地熱発電を核に、地域と共生しながら多様な地熱資源利用が拡大していくことを期待します。

地熱展示会

地熱展示会

見て、触れて
多様な利用の形

地熱発電の仕組みや開発事例などを紹介する展示会も会場の一角で開催された。地熱利用先進国のニュージーランドや国内最大規模の八丁原発電所を擁する大分県での活動内容をはじめ、各地の開発事業などを紹介。地熱資源を活用した物産の試食・販売も盛況だった。

夏休み地熱講座

夏休み地熱講座

秋田の地熱資源と
環境への配慮を学ぶ

 高校生・大学生や地元住民を対象に、地熱資源の成り立ちや開発調査の方法、環境への配慮と対策などを解説。教壇に立ったJOGMEC當舎利行顧問は「エネルギー源として上手に使えば半永久的に資源を利用でき、環境にもやさしい」と、地熱開発の利点を説いた。