家族も会社も豊かに 積水ハウス 「男性の育休完全取得」を宣言

NPO法人ファザーリング・ジャパン 代表 安藤哲也氏

 共働き世帯が1000万世帯を突破し、近年は「働き方改革」が叫ばれるようになったこともあり、ワーク・ライフ・バランスを見直すビジネスパーソンが増えています。子どもがいるファミリー世帯では、2019年10月から始まる「幼児教育・保育の無償化」によって家計への負担は大きく軽減。一方で男性社員の育児休暇取得は普及することが難しく、夫婦間での育児や家事の分担は遅々として進まない現状があります。そうした中で注目を浴びるのが、積水ハウス株式会社が昨秋創設した特別育児休業(愛称:イクメン休業)制度です。全社員の取得を目指し、同社が社員向けに開催した「イクメンフォーラム」をリポートします。

提供:積水ハウス

提供:積水ハウス 家族も会社も豊かに 積水ハウス 「男性の育休完全取得」を宣言

 共働き世帯が1000万世帯を突破し、近年は「働き方改革」が叫ばれるようになったこともあり、ワーク・ライフ・バランスを見直すビジネスパーソンが増えています。子どもがいるファミリー世帯では、2019年10月から始まる「幼児教育・保育の無償化」によって家計への負担は大きく軽減。一方で男性社員の育児休暇取得は普及することが難しく、夫婦間での育児や家事の分担は遅々として進まない現状があります。そうした中で注目を浴びるのが、積水ハウス株式会社が昨秋創設した特別育児休業(愛称:イクメン休業)制度です。全社員の取得を目指し、同社が社員向けに開催した「イクメンフォーラム」をリポートします。

基調講演:男性の育児参画はボウリングの1番ピン~ 強くしなやかな社会づくりのために~ NPO法人ファザーリング・ジャパン 代表 安藤哲也氏

僕の人生を変えた「3人の子どもの子育て」

 1992年に施行された「育児休業等に関する法律」で、男性も育児休業が取得可能になりました。25年以上も前に法律は制定されていますが、まだまだ浸透していません。それでも育児をするパパはずいぶん増えましたし、社会全体で理解が進んでいるようになったと実感しています。男性の育児参加は、例えると「ボウリングの1番ピン」で、ここが倒れると他のピンも倒れます。つまり、男性の育児参加が妻や子ども、会社、そして社会全体に良い影響を波及させていくのです。

NPO法人ファザーリング・ジャパン 代表 安藤哲也氏 基調講演風景

 僕自身、人生が変わったのは3人の子どもの育児でした。妻の手助けをし、自ら子どもたちに関わる人生は、以前よりずっと豊かなものになりました。皆さんにも、「会社が育休を取れというから」という後ろ向きな受け止め方ではなく、「この制度で、思いっきりパパライフを楽しもう」と思ってもらいたいのです。
 「子育て」を言い換えるならば、「未来育て」であり「期間限定のプロジェクトX」です。だからといって「よき父親にならなくては」と力を入れることはありません。ずっと家族とともに、笑いながら成長していくことが大切だと思います。
 家族が毎日暮らす「家」は、買った時点ではただの器にすぎません。そこに家族が住み、温かな空気を生み出すから「アットホーム」になるのです。家を売る仕事に従事する積水ハウスの皆さんは、お客様から「積水ハウスの○○さんのような暮らし方をしたいから、○○さんのいる積水ハウスの家を買おう」と思っていただけるようになっていただきたいと思います。そんなイクメン社員が増えることで、会社としての魅力が増すのではないでしょうか。

「イクメンにならない」ことで生じるリスク

 男性社員がイクメンにめざめて育休を取得すると、子どもと一日中向き合うため、危機管理能力や想像力、提案力などが養われ、仕事にも効く能力開発につながります。また家事をすることで自活力がつき、地域の友達も増えるのです。メリットはそれだけにとどまりません。父親から見守られる子どもは自尊心が高まり、IQや社会性の向上、学業や人間関係が良好になると言われています。そして母親は、育児の実質的な負担が軽減され、夫婦間では強いパートナーシップが生まれるのです。

 逆にイクメンにならない場合は、そういったメリットを得られる機会が軽減するばかりか、リスクが生じることさえもあります。一つの例が熟年離婚です。最近は、年間6万件もの夫婦が結婚20年を経た後に離婚しています。あるインタビューで、「夫はATMのような存在」と答えた奥さんがいました。ATMが機能するのは働いて給料を持ち帰る日までです。この奥さんは夫が定年退職したら戦力外通告を出すかもしれませんね。
 また女性は出産後、愛情が夫から子どもへシフトする傾向があるので、熟年離婚の要因はこの産後期から始まっているともいえるかもしれません。それを知っていれば、夫が育休を取ることは意義深いでしょう。
 父親の役割は子どもの成長とともに変わります。幼児期は子どもの世話役、思春期以降は人材育成役です。子育ては、子どもが親から自立してようやくゴールです。それまでの関わり方が、子どもの自己肯定感に影響し、その後の人生を決定づける要素にもなります。同時に、幼児期の子どもは母親と過ごす時間が長く、母親の幸福度が子どもに大きく影響するといっても過言ではありません。母親の幸不幸は少なからず夫との関係に左右されますから、父親の子育てへの参加の重要性をぜひ真正面から受け止めていただきたいと思います。

小さなハッピーの組み合わせで人生を楽しく

NPO法人ファザーリング・ジャパン 代表 安藤哲也氏

 日本では、近年のイクメンブームが後押しして、育休を希望する男性の割合はどの職場でも3割を超えたと言われています。ただし、会社での評価を気にするなどの理由から諦める人が多く、取得率がなかなか上がらないというのが実情です。
 この課題を解決するためには、会社という組織全体や職場の上司や同僚、また業種によっては取引先の担当者の協力が不可欠です。僕も企業で働きながら3人の子どもを育てることができたのは、会社や同僚の理解や支援があったこと、また取引先が「夕方以降は対応しない」というルールを守ってくれたからです。
 積水ハウスを含め、住宅メーカーは平日の夜遅い時間、また休日が業務に欠かせないという部署も少なくないでしょう。そうした現状があるにもかかわらず、積水ハウスさんが会社として男性に育休の取得を訴えかけていく制度を創設した意義は非常に大きいですね。ぜひ「男性の育休100%取得」を達成していただきたいと期待しています。
 現代はお金や財産よりも、人生や心の豊かさを追求する傾向が高まりました。ワーク・ライフ・バランスの幸せの形とは、「おいしい具材が少しずつ入ることで、全体がおいしくなる」寄せ鍋のようなもの。これからは男性も「仕事だけしていればいい」という意識を変え、育児や地域活動、趣味、勉強といったことを合わせてやることで、おいしい出汁(だし)の出た味わい深い人生を送っていくとよいでしょう。
 仕事の達成感や自己表現を追い求めるのも良いですが、それだけでなく子育てという日々直面する現実に小さなハッピーを感じる生き方もすてきです。いまは子育てと仕事の両立で大変かと思いますが、ポジティブにとらえて期間限定の子育てを父親として楽しんでいきたいですね。

特別育児休業(愛称:イクメン休業)制度とは 積水ハウス株式会社 代表取締役社長 仲井嘉浩氏

 2018年5月にスウェーデンのストックホルムを訪れた際「公園でベビーカーを押す役割は9割以上が男性」という事実を知り衝撃を受けました。さらに聞けば、同国の育児休暇は3カ月超とのこと。「ここまで世界は進んでいるのか」と感じたのが制度創設のきっかけです。帰国してすぐに新制度を検討・調査したところ、日本で完全に取得している企業の育児休業期間は、1週間程度と判明。そこで弊社は1カ月間としました。

積水ハウス株式会社 代表取締役社長 仲井嘉浩氏

 この制度による社会的意義は非常に大きいと考えています。
  ①社員自身が幸せであれば、幸せな家庭が築かれる
  ②様々な働き方のデータが社会に役立っていく
  ③社内コミュニケーションがより良くなる
 以上3点です。積水ハウスが掲げるビジョンは“「我が家」を世界一幸せな場所にする”ことであり、その実現があってこそお客様に幸せを提供できると考えています。
 実際に同制度を利用するには、上司や同僚の協力が不可欠です。業務の調整等もあると思いますが、これを機に助け合いの風土をより浸透させ、企業理念である「人間愛の体現」が実践できればと願ってやみません。

積水ハウスの育児休業制度

 対象は3歳未満の子どもを持つ男性社員。最低1カ月の取得が必須で、初月のみ有給とします。また、部署内の業務を調整しやすいよう、一定の条件を満たせば分割取得も可能としており、取得によるボーナスや退職金などへの影響は一切ありません。
 政府は2020年までに、男性の育児休暇取得率を13%まで引き上げることを目指しています。弊社の平均取得日数はこれまで2日にとどまっていましたが、同制度開始によって600人以上の男性社員が申請し、既に500人以上が制度を利用し始めています。

■ 生み出す価値と効果
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事例発表風景

事例発表から

事例発表から

 6歳の娘さんと登壇した大村孝史さん(埼玉南シャーメゾン支店)は、息子さんの誕生を機に約1カ月間の育休制度を2分割で取得。大村さんが娘さんとともに家事全般をサポートしました。
 育休を取得するまでは、同じ部署の仲間に業務を代わってもらうことに申し訳なさを感じていた大村さんですが、職場の皆が「ぜひ休んでください」と笑顔で送り出してくれたことで、気持ちが軽くなったそう。育休中は家事に専念し、復帰後は以前よりも思い切り仕事に打ち込むことができたと発表しました。

 髙木陽一さん(開発事業部)は、「仕事を持ちながら家事、育児に取り組む妻の負担を軽くしたい」との思いから、5~10日間の3回に分けて育休を取得しました。1日を通して家事を手伝うことで、妻の大変さを実感。また、娘さんが保育園の先生や友達と上手にコミュニケーションを取る様子など、成長した姿を目の当たりにすることもできたと、うれしそうに披露しました。
 仕事の面では、「この仕事は自分にしかできない」と思い込んでいた部分があったそうですが、育休をきっかけに業務を分担したことで、部署内に一体感が生まれ後輩の成長を実感したとのこと。コミュニケーションも活発になり、よりスムーズに仕事が進むなど、髙木さんの育休が職場に良い変化をもたらしたようです。

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