自社データセンターもクラウドもOK 使い勝手のよい環境が一番
――コロナショックの前後で、お客様のクラウドに対するニーズには変化がありますか。
二上氏 多くのお客様はすでに何らかのクラウドサービスを利用していますが、より使い勝手の良いクラウド環境を求める声が急増しています。自社のデータセンターとクラウドを組み合わせたハイブリッドクラウドや、複数のベンダーから提供されるクラウドを組み合わせて使えるマルチクラウドへのニーズが高まっています。
さらに「どこのクラウド環境でもフレキシブルに運用できる」とか「開発のスピードを重視したい」といったお客様は、先述したコンテナ技術に注目し、お問い合わせをいただくケースが増えています。
――アプリケーションが稼働するために必要なリソースをまとめてパッケージ化するコンテナ技術。そのどのような点に注目されているのでしょうか。
二上氏 IBMが提供しているコンテナ技術を使えば、任意のアプリケーションをIBM Cloudのみならず他社のパブリッククラウドやプライベートクラウドに簡単に移動させることができるため、今回のような予測できない事態に対しても企業の対応力が高まります。
鬼頭氏 IBM独自の強みとして、アプリケーション開発、データ活用、マルチクラウド管理、セキュリティー対策などアプリケーションやシステムが共通で必要となる機能をコンテナ化した基盤製品を提供しています。世の中の潮流としてオープンソースの利用が好まれていますが、利用は煩雑となりその運用負担は大きいといわれています。従来、ソフトウエアで提供していた機能に加え、オープンソースのものもIBMが検証、サポート付きで提供しているので、お客様はソフトウエア間の組み合わせやサポートなどの不安が軽減されます。これを使用することで、お客様のニーズに合わせてアプリケーションの改修をクラウド上でもオンプレミスでも行うことができ、変化への対応スピードも上がるといったメリットがあります。
共通の基盤製品を使うことによりお客様は、在宅を含めた遠隔地でアプリケーションを開発し、目的に合わせた最適なクラウドに展開して運用し、なおかつ全社的なガバナンスを効かせることができます。
――これらのクラウド技術の活用には、どのような業界のお客様が特に前向きに検討されていますか。
二上氏 金融機関のお客様からの商談が増えています。これまで金融機関のお客様はセキュリティーに対する配慮もあり、各ベンダーのプロジェクトメンバーを社内に呼び集めて基盤構築やアプリケーション開発を行ってきました。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、メンバーが集まることは困難となり、在宅でのリモート開発を進めざるを得ない状況となりました。
鬼頭氏 製造業のお客様も大きく動き始めています。「モノからコトヘ」というスローガンに象徴されるように、日本の製造業も従来、以前からの製品を作って売るだけの事業から、サービスを主体とした事業へのビジネスモデルへの転換が急がれています。
そこでの新たな競争力の源泉となるアプリケーションをスピーディーに開発していく取り組みを、コロナの影響下といえどもストップするわけにはいきません。