BPOのその先へ さらなる効率化を実現するクラウド、AIを駆使した進化型BPO 提供:日本IBMBPOのその先へ さらなる効率化を実現するクラウド、AIを駆使した進化型BPO 提供:日本IBM

2018年3月16日時点の記事です

BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の進化形、BPaaS(ビジネス・プロセス・アズ・ア・サービス)が注目を集めている。従来のBPOと比較して高い導入効果が期待できるからだ。その要因となっているのが、クラウドやAI(人工知能)、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などの先進のテクノロジーだ。BPaaSは、企業のコスト構造を変え、競争力を大きく向上させる。すでに先進企業ではその活用が始まっている。

守り主体のBPOを
攻めに変えるBPaaS

毛利 光博 氏

日本アイ・ビー・エム株式会社
コグニティブ・プロセス・サービス
アソシエート・パートナー
毛利 光博 氏

 BPOは企業にとって一般的な構造改革手法で、現在では多くの企業で活用されている。これまで社内で行ってきた業務を外部に委託することで、「人材不足への対応」と「コスト削減効果」の2つの点が期待できる。

 日本の労働人口が減少し続ける中で、企業は慢性的な人手不足に悩まされている。そこで競争力を左右しない非中核業務については外部に委託することで、より少ない社員数で業務を回したり、人材を有効に配置転換したりすることができる。総務業務や人事給与などのシェアードサービスが典型的なものだろう。

 また、人件費の安い海外に業務プロセス全体を移すことによるコスト削減効果も、BPOの普及につながった。単純な伝票処理やERPシステムのオペレーションといった業務をオフショアすれば、確実にコストが抑制できた。しかし昨今では、海外の人件費が上昇したことでコストメリットは小さくなりつつある。

 こうした中で、これまでとは異なる次元でBPOを捉えようという動きが広がっている。それが最新ITテクノロジーを活用したBPaaSである。「BPaaSとは、BPOとSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)を組み合わせた造語です。従来の労働集約的なBPOに加えて、SaaSによるITを活用することで、BPOを高度化して大きな効果につなげるものです。人手不足対応やコスト削減といった“守りのBPO”ではなく、企業力を強化する“攻めのBPO”として位置付けられています」と日本IBM GBS事業本部 コグニティブ・プロセス・サービスのアソシエート・パートナーを務める毛利光博氏は話す。

毛利 光博 氏

日本アイ・ビー・エム株式会社
コグニティブ・プロセス・サービス
アソシエート・パートナー
毛利 光博 氏

 従来はお客様のプロセスをそのままオフショア化し、それから標準化を進めていた。しかし、IT、プロセス設計、業務運用を一括して引き受けることで、標準化とオフショア化が同時に進められるようになった。改革を一気に短期間で進めることが可能になり、改革を急ぐ経営者の期待に、速やかに応えられるようになった。

 さらにその先に見えているのが、業務データの活用だ。

 「最近では、BPaaSによって社内のデータがすべて把握できるようになりました。可視化のインフラが一気に確立できます。データを分析して改善につなげることで、より高い効果が期待できるという点が注目されています」と毛利氏。データを分析して業務全体を最適化し、さらにAIやRPAを活用すれば圧倒的な効率化を手にできる。BPaaSはこうした先進技術を活用する基盤となる。

間接材の支出を可視化し、高い費用対効果の業務改善を

 BPaaSで大きな成果が期待される領域の一つが「間接材の調達」である。間接材とは原材料や製品仕入れなど直接材料費以外の経費を指す。文房具や備品などの他、システムのハードウエアやソフトウエアの購入費、派遣サービス代、広告宣伝費、福利厚生費、採用費など、対象となる項目は多岐にわたる。

 「一般的に間接材は製造業で売上の10%前後、流通業やサービス業では20%から30%を占めると言われています。実はその支出がコントロールされていないことが多く、そのうち10%から20%は削減できる可能性があります」と毛利氏は指摘する。例えば、年間売上1兆円の大手製造業では年間1000億円の間接材に関する支出があり、それを見直すと100~200億円程度削減できる可能性があるという。

 あるケースでは、3年で200億円近くの削減効果があった。企業全体の業績を左右しかねない大きな金額だ。そのためにかかった投資額は30億円から50億円とのことだから、ROI(投下資本利益率)は4倍から7倍になる。経営者として看過できない数字だ。

 では、どうしたら間接材の費用を削減できるのか。毛利氏は「間接材をコントロールする最初の一歩は、支出を可視化することです。そして、把握したデータを可視化するダッシュボードを構築します」と解説する。まず可視化することで、判断を下すための材料をそろえることができる。

 そのために必要になるのが、データを把握して分析するシステム基盤だ。単純に経理データだけを見ていても、そこから本質的な意味は見えてこない。例えば物流費を下げようとしても、それを分解して、どの部分に無駄があるのかを把握しなければならない。「確かに間接材は宝の山ですが、分析のためのメッシュをうまく切ることが必要です。私たちはそこから一緒に考えていきます」と毛利氏はIBMとしての立ち位置を語る。

 適正なメッシュを設定して、IBMが分析を代行する。そして、分析した結果を必要なアクションもセットでダッシュボードに公開する、どこをどれだけ減らすかは経営者が判断することだ。広告宣伝費を減らすことで知名度が下がれば、いずれ業績に響いてくる。福利厚生を減らせば、採用に影響するし、従業員のモチベーションも変わってくる。自社の状況を踏まえた戦略的な判断が求められる経営者にとって、ダッシュボードはアクセルであり、ブレーキでもあるのだ。

IBMが提供するBPaaSのダッシュボードの例

図:IBMが提供するBPaaSのダッシュボードの例

システム化と業務改革をセットで進めた日東電工

 実際にBPaaSを活用して経理、人事総務、調達、ロジスティクスの業務プロセスをアウトソーシングして、非競争要因の業務からコアとなる事業に経営資源を再配置し、ビジネス基盤の強化に取り組んだのが日東電工である。同社は液晶パネル用偏光板、半導体ウエハー保護フィルム、電子部品の製造工程で使われる熱剥離シートなどで高いシェアを誇るメーカーだ。

 日東電工は経理や購買などバックオフィスの業務にクラウドのシステムを活用し、グループ各社でバラバラだったシステムを統一して運用することで、単なるコスト削減ではなく、生産性を上げて経営の敏しょう性を高めるための業務改革を実現した。

 具体的には、オフィス什器(じゅうき)や備品、消耗品や出張旅費といった間接材の調達に会社推奨の調達方法を設定することでコストの圧縮を図る。さらに経理、人事総務などの定型業務の業務プロセスを標準化し、可視化することでガバナンスの強化につなげるという枠組みで臨んだ。

 この業務改革プロジェクトに同社がパートナーとして選択したのが、従来のBPOとクラウドサービスを組み合わせたBPaaSを提供する日本IBMだった。業務システムのクラウド化と、それにひも付く業務プロセス全体を日本IBMにアウトソースし、業務の集中管理と整流化を狙ったのだ。

 経費精算、間接財、それぞれにSaaS型のシステムを新規導入し、その稼働と同時に中国でのアウトソーシングも稼働させた。SaaS型による世界標準のしくみ(IT&プロセス)の導入とアウトソースによる効率化を同時に実現した。IBMの持つノウハウに期待してのことだ。

 2016年6月に日本と中国でキックオフを行い、17年1月から経費精算システムなどの稼働を開始した。

 このケースでは、システム導入と業務改革を同時に進める必要があった。「システム導入と業務プロセス改善の両方をセットで提供できるというIBMの強みが、パートナーに選ばれたポイントでした」と毛利氏は説明する。

 今後、日東電工ではAIやRPAなどの新しいテクノロジーの採用を予定している。今回のBPaaSはそのための基盤作りとしても位置付けられている。さらなる業務効率化へのロードマップの見通しがついたという面からも大きな意味がある。

アナリティクスとRPAの相乗効果が今後のポイントに

 BPaaSでのAIやRPAの利活用は、ビジネスにどのようなインパクトをもたらすのだろうか。「データアナリティクスは実践されていて、データから知見を見いだすコグニティブが取り入れられるようになっています。そこにRPAが活用されると効率化は一気に進むことになります」。毛利氏はこう説明する。

 RPAはソフトウエアロボットを使って業務を自動処理する仕組みだ。現在多くの業務はシステム上で処理されているため、ソフトウエアロボットを導入できる下地がある。BPOによって2割から3割効率化されていたものが、RPAとコグニティブによってさらに5割以上効率化できる可能性があるという。

 「SSC(シェアード・サービス・センター)やBPOで実施しているような定型かつ処理ボリュームが大きい業務領域にこそ、人からロボットに置き換えることで業務処理スピード、正確性、コストを飛躍的に高めることが可能です。時々、RPAかBPOかという話が議論されますが、それは間違いで、それぞれの持つメリットを最適に組み合わせることが必要です。また、BPOにおいてはIBMがソフトウエアロボットを開発して運用するので、クライアントはソフトウエアロボットの開発や運用を気にする必要がないことがメリットです」と毛利氏は、BPOとRPAの相性の良さを指摘する。

 「IBMには、データアナリティクス、AI、そしてRPAなど、高い専門性と豊富な経験を持つプロフェッショナルがそろっています。IBM全体で全力でお客様をサポートします」。毛利氏は、IBMの優位性を強調する。

IBMが提唱する購買変革モデル

図:IBMが提唱する購買変革モデル

システムとオペレーションをセットで提供できる強み

毛利 光博 氏

 IBMがテクノロジー面で優位性を持っているのはある意味当然だが、BPOの領域についても多くの経験と豊富なノウハウを持つ。IBM自身が自社の業務改革に取り組み、そこで得られた知見をフィードバックして多くの企業のBPOも支えてきた。前述した日東電工でも、最も期待されていたのは、IBMの持つシステムと運用のノウハウだった。

 購買実務の面でも、グローバル企業であるIBM自身が多くの実績を持っている。2016年度のIBMの購買総額は実に8兆円にもなる。そのうちの3割弱が自社の間接材であり、7割強が顧客の代理購買で占められ、約4000人のバイヤーが購買業務に当たっている。IBMが多くのBPO案件を遂行することで、規模の経済が働き、スケールメリットが出ているのだ。

 こうした購買活動は、システムの活用という面でも大きなメリットをもたらす。IBMがBPaaSで活用している調達システムや経費精算システムは、IBM自身が調達業務で使い込んできたもので、ユーザーとしての経験を豊富に持っている。当然、他社にソリューションとして提供する際には、その経験が生きてくる。

毛利 光博 氏

 「SaaSとして提供されるアプリケーションは、クラウド型ですぐ活用できるというメリットがありますが、カスタマイズができないところは運用面でカバーしなければなりません。そこでは実際に運用した経験が重要になります。私たちは日々の購買活動を通して多くの運用ノウハウを蓄積し、それをソリューション提供に生かしています。IBMの運用経験もセットにしてベストプラクティスとしてお届けしています」と毛利氏は話す。

 もちろん、業務のオペレーションについてのノウハウも豊富だ。そこには数多くのシステム構築プロジェクトをコントロールしてきたプロジェクト管理の経験も生かされている。社内の取りまとめ、仕様書の作成など、きめ細かいところまでカバーできる。

 IBMが提供するBPaaSには、業務のオペレーションから、システム構築、データ活用、そしてAIやRPAまで、IBMの幅広いノウハウが凝縮されている。多くの企業にとって利用する価値がありそうだ。

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