働く人とそのご家族のための健康講座

  • 01 逆流性食道炎
  • 02 血栓症
  • 03 ロコモティブシンドローム
  • 04 糖尿病と腎臓病

提 供:第一三共株式会社

働く人とそのご家族のための健康講座 今回のテーマ「糖尿病と腎臓病」気付きにくい腎機能の悪化

川崎医科大学 副学長 腎臓・高血圧内科学 主任教授 日本腎臓病協会 理事長  柏原 直樹先生

糖尿病は様々な合併症を引き起こしますが、糖尿病性腎症もその一つです。
腎臓の機能が低下すると透析が必要となりますが、わが国の透析導入原因の第1位は糖尿病性腎症です。
問題なのは、糖尿病も腎臓病も早期には症状がほとんどなく、気が付いたときはすでに悪化していることです。
それを防ぐためにはどうすればよいか、
日本腎臓学会理事長で、日本腎臓病協会理事長の柏原直樹先生に伺いました。

POINT 01

糖尿病が腎臓病を引き起こす

糖尿病が腎臓病を引き起こす

──糖尿病とはどのような病気なのでしょうか。

 食物から摂取した糖は各所に運ばれ、インスリンというホルモンによってエネルギーとして利用されます。ところが何らかの理由でインスリンの分泌が不足する、あるいは分泌しても効きにくい人がいます。すると糖が利用されずに血液の中にたまってしまい(高血糖)、糖尿病になります。その状態を放置していると、高血糖により血管が徐々に傷つき、やがて重篤な合併症を引き起こす危険性があります。日本人の糖尿病患者は予備群も含めると2000万人にもおよび、国民全体で対策が必要です。(図)

──合併症にはどのようなものがありますか。

 太い血管(大血管)が傷つけられることによる合併症には脳卒中や心筋梗塞があります。細い血管(細小血管)が傷つけられることによる合併症には、糖尿病網膜症、神経症、糖尿病性腎症があります。手足のしびれやふらつきを引き起こしたり、糖尿病網膜症は進行すると失明に至ることもあります。糖尿病性腎症では透析が必要になる場合があります。また糖尿病になると認知症を発症するリスクも高いことが判明しています。いずれにしても、進行し重症化すると生活の質を大きく損ねることになります。

図 糖尿病(糖尿病が強く疑われる人)と糖尿病予備軍(糖尿病の可能性を否定できない人)の推移

図  糖尿病(糖尿病が強く疑われる人)と糖尿病予備軍(糖尿病の可能性を否定できない人)の推移

出展:2016「国民健康・栄養調査」(厚生労働省)

POINT 02

健康診断で必ず検尿・血液検査を

健康診断で必ず検尿・血液検査を

──腎臓病は、どのような病気なのでしょうか。

 腎臓は、体の中の老廃物を排出し、体に必要な電解質(ナトリウムやカリウム等)を調節し、体の中の環境(内部環境)を常に一定に保つようにする臓器です。その機能が低下すると自力では老廃物を排出できなくなり、透析が必要になります。腎臓病には多くの種類がありますが、現在はCKD(Chronic Kidney Disease:慢性腎臓病)という概念で早期に広くとらえるようになりました。日本に1300万人以上いると推計されています。主な原因は高血圧、糖尿病、肥満などの生活習慣病、喫煙、加齢等です。透析を新たに開始した腎臓病患者さんの43.2%は糖尿病性腎症です(2016年)。

 CKDは進行すると腎不全に至るだけでなく、脳卒中、心筋梗塞などを合併する重大な疾病です。

──腎機能の低下は、どうすればわかりますか。

 腎臓病の大半は糖尿病と同様、早期にはほとんど症状がありません。したがって、健康診断を受けることが大切です。

 検尿で「尿たんぱく」の項目が陽性(+)になると異常ですので、医療機関を受診してください。弱陽性(±)の場合も生活習慣の改善が必要になります。糖尿病の場合は、少なくとも年1回は微量アルブミン尿検査を受けるようにしましょう。

 腎臓を評価する指標に、血清のクレアチニン検査があります。男性では正常値はおおよそ0.6~1.1mg/dLですが、血清クレアチニン値と腎機能は直線関係になく、わずかでも上昇していると腎機能は数十%低下していることが通例ですので、軽視してはいけません。同様に推算糸球体ろ過量(eGFR)という数値も評価指標に用いられ、こちらの正常値は60ml/分/1.73m2以上、60ml/分/1.73m2未満だと腎臓が少し悪くなっていることを示します。(表)

表 健診で腎機能の低下を示す指標

  検査項目名 基準値
尿 たんぱく -(マイナス)
腎機能 クレアチニン ~1.00mg/dL
eGFR 60.0ml/分/1.73m2

POINT 03

早めの治療で健やかな老後目指す

早めの治療で健やかな老後目指す

──糖尿病性腎症は、どうすればわかるのでしょうか。

 基本は、微量アルブミン尿検査で見つけます。ただ近年、微量アルブミン尿が出現していないのに腎臓病を発症するタイプもいることがわかり、国際的にDKD(Diabetic Kidney Disease:糖尿病性腎臓病)という概念が広がっています。見逃しやすいため、まずかかりつけ医に相談して必要があれば専門医に紹介してもらってください。

──最後に、ビジネスパーソンへのメッセージをお願いします。

 自分の健康管理が社会貢献の一つだという意識を持っていただきたいと考えます。病気が進行すると、本人だけでなく家族に大きな負担がかかります。人生の目標達成も断念せざるを得なくなります。予防が何より重要ですが、健診で異常を指摘された場合は、早めに医師に相談して生活習慣を適正化し、必要があれば治療することが大切です。

 人生100年と見定め、重要な臓器に負荷をかけ過ぎないように生活習慣の適正化に留意しましょう。病気とわかった時点で、早期や軽症という言葉に惑わされず、食事と運動に一層、気を使い、必要に応じて薬も服用しながら早めに治療することが、健やかな長寿につながります。今年、私たちは「腎臓病の克服」を目的として日本腎臓病協会を設立しました。普及・啓発など様々な活動を通じ、国民の健康に貢献していきたいと思います。

<日本腎臓病協会 https://j-ka.or.jp/

<日本腎臓病協会 https://j-ka.or.jp/