Software 離職率の劇的改善と業績向上を実現したサイボウズの挑戦Software 離職率の劇的改善と業績向上を実現したサイボウズの挑戦

ワークスタイルの改革は企業の福利厚生の一環だと誤解されているケースも多い。しかしながらワークスタイルの改革はビジネスの活性化につながり、最終的には企業の成長に貢献する。それを実現しているのがグループウエアの開発・販売を行うサイボウズだ。しかし、同社のワークスタイル改革も一朝一夕に実現したわけではない。取り組みの先頭に立つサイボウズの和田武訓氏に聞いた。

サイボウズ株式会社ビジネスマーケティング本部プロジェクトマネージャー 和田武訓氏 サイボウズ株式会社ビジネスマーケティング本部プロジェクトマネージャー 和田武訓氏
サイボウズの様子サイボウズの様子

人事制度は変えるものではなく、
増やすもの

 日本列島が大雪に見舞われた2016年1月18日、首都圏の都市機能も大きな影響を受けた。通常の2倍、3倍、もしくはそれ以上の時間をかけてオフィスにたどり着く人々の姿があった。そうした混乱の中、その日予定されていた役員との会議に和田氏は自宅からビデオ会議で臨み、難なく通常の業務を遂行したという。

 和田氏が勤めるのは、グループウエアで国内シェアトップクラスの実績を誇るサイボウズだ。同社は、1997年の創業以来、一貫してウェブ技術で使えるコラボレーション・ツールを開発・提供してきた。

 その理念は「チームワークあふれる社会の実現」である。そのためにはサイボウズ自身がチームワークあふれる会社でなければならない。「チームワークあふれる会社とは、新卒や中途入社、既婚、未婚、子どもがいたり、いなかったりという、社員が置かれている様々な社会的環境や個性を重視し、その多様性を受け入れることです」と和田氏は説明する。

 それを実現するには、社員一人ひとりが自分に合った働き方ができるように、ワークスタイルを変えていく必要がある。現在、そのための人事制度の整備にチャレンジしている。その基本方針は100人いたら、100通りの働き方があってよいという考えだ。

「そこでサイボウズでは、公平性よりも個性を重んじることで、人事制度は変えるものではなく、増やすものとしています」と和田氏。

 制度のひとつとして、退職後6年間は復帰可能になる「 育『自分』休暇」という制度があるが、和田氏自身も一度退職しサイボウズへ復職したひとりだ。

10年近い取り組みで
離職率は3%にまで改善、業績も好調

 サイボウズも多くの日本企業と同じように、かつては長時間労働が常態化していた。「私が入社したのは09年ですが、その頃は、朝早く来て、夜遅くまで働くという長時間労働の雰囲気が残っていました」(和田氏)。

 そうした状況を大きく変えたのが12年。同社の代表取締役社長である青野慶久氏自身が毎週水曜日に育児休暇(育休)を半年間にわたって取得した年だ。「どこの企業でも時短を選ぶと、昇進に響くという空気になることがあります。当社では、社長の育休取得もあり、社内の雰囲気が大きく変わりました」と和田氏は当時を振り返る。

 こうした取り組みを「ワークスタイル改革」という言葉で表現する傾向にある。しかし、ワークスタイル改革という言葉には誤解されている部分が多いと和田氏は考えている。従業員の福利厚生の一貫としての働き方選択という捉え方をされている場合が少なくないからだ。

 事業成長をどのようにして加速していくかという点からもワークスタイル改革を考える必要がある。多様性を認め合い、尊重することで、組織を活性化させ、結果、強い組織を作り出す。そこにワークスタイル改革に取り組む意味が出てくる。

 サイボウズは現在、時間(長-短)を縦軸に、場所(自由―オフィス)を横軸に据え、ライフスタイルに合わせたワークスタイルを選ぶ選択型人事制度を採用している(図.サイボウズの選択型人事制度)。

 こうした取り組みの結果、05年には28%もあった離職率が、今では3%程度まで改善。それまで横ばいだった売り上げも毎年15%程度ずつ伸びている。

選択型人事制度の進化
選択型人事制度の進化サイボウズの様子サイボウズの様子

ワークスタイル改革の実現に重要な
3つの要素「風土」「制度」「ツール」

サイボウズ株式会社ビジネスマーケティング本部プロジェクトマネージャー 和田武訓氏 サイボウズ株式会社ビジネスマーケティング本部プロジェクトマネージャー 和田武訓氏

 仮に、在宅勤務制度を導入したとしても、電話とメール、グループウエアなどのツールだけで業務を遂行することには限界がある。そこでサイボウズでは、シスコシステムズのビデオ会議システム「Cisco TelePresence」を導入して、在宅の社員、外出先や他拠点にいる社員と会社にいる社員がいつでもコミュニケーションできるオフィス環境を構築。また、社員がどこにいてもリアルタイムで会話できるように、インスタントメッセージ、音声、ビデオ、ボイスメッセージ、デスクトップ共有、ミーティングといった機能がすべて含まれ、メンバーの在席確認(プレゼンス機能)もできる「Cisco Jabber」をフル活用している。サイボウズのグループウエアとシスコシステムズのコミュニケーションツールを使い分けることで、多様な働き方に対応できるようにしている。

 しかし、制度やツールを揃えても、社内の風土がそれに対応していなければ“絵に描いた餅”だ。それを実効あるものにするには企業の風土を変えていく必要がある。そのためにサイボウズの社内で繰り返し出てくるのが「公明正大」と「説明責任・質問責任」というふたつの言葉だ。「公明正大とは社内・社外に対して『ウソをつくな』ということです。異なる働き方をしている中で、体調も悪くないのに『調子が悪いので、自宅で仕事をする』といった状況がはびこると、制度そのものが維持できなくなってしまいます」と和田氏は説明する。質問責任とは、制度に限らず何にでも疑問があれば、上司だけではなく場合によっては社長にも質問することだ。

「チームワークあふれる社会の実現」を目指す

「チームワークあふれる社会の実現」を目指す 「チームワークあふれる社会の実現」を目指す

 サイボウズでは、ワークスタイル改革に取り組んできたこの10年の経験の中で、多くの社員がそのことを認識するようになってきた。こうした風土が、徐々に根付いてきている。 多様性重視、個性の尊重、公明正大といった「風土」に加え、それに対応した勤務体系や評価などの「制度」、それを支える情報共有、遠隔会議などを可能にする「ツール」。この3つが整っていれば、大企業でもワークスタイルの多様化と業績向上を矛盾なく実現させることができると和田氏は強調する。

「数千人、数万人規模の企業でも、部署やプロジェクトなどのチームという単位に目を向ければ、スタッフを取り巻いている様々な社会環境が見えてきます。その人たちが働きやすいようにするには、どうしたらよいかを考えることから、ワークスタイルの改革は始まります」と和田氏は言う。

 そこで重要になるのがマネジメントだ。これまでの規律第一のマネジメントスキルやマインドを変える必要がある。それを意識し、マネージャーが一人ひとりのメンバーを正面から受け入れ、メンバーの話を聞き、理解することで、多様性重視や個性尊重などへと風土が変わる基盤が作られていく。マネージャー自らが変わること。それがワークススタイル改革のカギを握っている。

 サイボウズでは、自らの経験にもとづいて、同社のような働き方は夢物語ではないことを広く訴えるために、今年1月にワークスタイルプロジェクトチームを発足させた。「チームワークあふれる社会の実現」という同社の企業理念を実現するためである。そして和田氏は、そのリーダーとして企業のワークスタイル改革を支援していく。

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