真の成功者は、ひとときの成功に浮かれることなく、常に未来を見据えている。そして将来のさらなる成功に向けて努力を惜しまない。未来の成功が自分自身のためだけでなく、世の中のためであることを理解しているからだ。
 経営、文化、スポーツなど各分野の成功者に仕事や趣味、人生の哲学について話を聞くインタビュー連載企画「語り継がれる未来の創造」。
 第4回のゲストはレーシングドライバーの佐藤磨さん。F1レーサーとして表彰台(3位)に上がり、米インディカー・シリーズに移ってからも3勝を記録、昨年は日本人として初めてインディ500で優勝するなど、最も成功した日本人レーサーの一人だ。理論派のドライバーとしても知られる佐藤さんは、何を考え、どのようにしてレースに挑み続けてきたのか。その挑戦の軌跡について話を聞いた。

提供 ブライトリング・ジャパン

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自分をどうマネジメントするか

 佐藤さんが欧州に渡ったのは1998年、21歳の時だった。鈴鹿サーキットレーシングスクールを卒業して渡英。モータースポーツの本場へといきなり乗り込んだことになるのだが、そこには学生時代に自転車競技をしていた頃から秘かに胸に刻んできた座右の銘があった。

「NO ATTACK NO CHANCE。挑戦しないとチャンスは生まれないという考え方です。じっと待っていたとしても、ある日突然、幸運が訪れることはあるかもしれませんが、その幸運も自分が本当に必要なタイミングでやってくるとは限らない。だとしたら、自分から運をつかみにいくしかない。僕の人生も、ほとんどは失敗の連続でしたが、挑戦したからこそ失敗した。そして、失敗しなければ成功することもない。動かなければ何も生まれません。この考え方は、自分の生き方にも、レースのスタイルにも、ビジネスにも全てに反映されています」

 佐藤さんは、挑戦する際に最も大切なのは「自分をどうマネジメントするか」だという。レーシングドライバーなので、まずは他人より速く走ることが最も重要だが、レースをチーム単位の競技と捉えると、自分がチームの求心力になることも必要。そのために必要不可欠なのがチーム内でのコミュニケーションだという。

「英国を選んだのは、まずはコミュニケーション・ツールとしての英語を習得したかったからです。イギリスF3(フォーミュラ3)に参加する前に、ジュニア・フォーミュラ(F3より格下のレース)で1年半ほど走ったのですが、その期間は自分では準備段階だと考えていました。F3で勝負に出たいと思っていたんです」

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創業3年目の小さなチームを選ぶ

 F3の当時のトップチームでもテストを受けてみたが、自分としては納得がいかない。その結果、96年創設の、まだ創業3年目に過ぎなかった小さなチーム、カーリン・モータースポーツを選択する。このチーム選びにおいて、佐藤さんの類いまれな自己プロデュース力が発揮される。

「まだ若いチームで、リソースも小さかったのですが、F1を経験したエンジニアやメカニックたちが集まっていました。彼らも大きくなりたいと思っていたから、勢いのあるドライバーを必要としていた。僕もそういうモチベーションを持ったチームと組みたかった。彼らに可能性を感じたので決断しました」

 その判断が後に大きな成功をもたらすことになる。満を持してイギリスF3選手権に挑んだ佐藤さんは、2001年に12勝を挙げて日本人初の年間チャンピオンを獲得。この勝利数は憧れだったレーサー、アイルトン・セナに並ぶ記録。国際F3レースのマールボロマスターズ、マカオグランプリも制してF3ドライバーとして世界の頂点を極めた。

「レースを始めるきっかけとなった、憧れのアイルトン・セナは、ブラジルから単身で渡英して、破竹の勢いで連勝し、F3のチャンピオンとなりF1に行った。自分も、その姿を追いかけたかったんです」

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神のみぞ知る異次元の世界

 F3での快挙をもとに、02年にはF1チームのジョーダン・グランプリでF1デビュー。その後、B・A・R(03〜05年)、スーパーアグリ(06〜08年)と3つのチームからF1に参戦。04年のアメリカグランプリでは3位となり、表彰台にも上がった。その後、10年には活躍の場を北米のインディカー・シリーズに移す。

「F1では千分の1秒まで計測しますが、インディカーの場合、1万分の1秒単位。トップから最後尾までは僅差です。1万分の1秒台まで同タイムということもあります。日常なら1秒はほんの一瞬ですが、レースの中では実はかなり長く感じます。平均速度でいうと、1秒間で100m以上走るからです。コンマ1秒でも長く感じます。100分の1秒が何とか自分が制御できるくらい。千分の1秒になると、一瞬の風向きで状況が変わってしまう。1万分の1秒なら、もう神のみぞ知る世界という感じですね」

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インディ500優勝という偉業

 そのような異次元の世界で、佐藤さんはF1以上の活躍を見せた。北米モータースポーツの最高峰であり、世界3大レースの一つでもある「インディアナポリス500マイルレース(インディ500)」で昨年、優勝という偉業を成し遂げた。日本でも大々的に報道され、その快挙は大きな話題になった。

「北米におけるインディ500の勝者の扱いには特別なものがあります。大きなトロフィーには自分の顔が刻まれるし、永久に名前も残る。サーキットの外でも、トップアスリートなど、今まで関わることがなかったような著名人とお会いする機会が増えた。米トランプ大統領が来日した際には迎賓館の晩さん会にも、ご招待いただきました。このような経験は全く想像さえしなかったことです」

 ここには欧米と日本のモータースポーツ文化の違いもある。米国ではモータースポーツ自体が、国民的なスポーツであるNBA(プロバスケットボールリーグ)やNFL(プロアメリカンフットボールリーグ)と同じレベルで語られる。欧州でのF1も同様だという。

日本人初優勝となったインディ500の優勝パレード後に、エンジニアらスタッフと。

日本人初優勝となったインディ500の優勝パレード後に、エンジニアらスタッフと。
photo:Hiroaki Matsumoto

男が持つ唯一のアクセサリー

 インディ500での優勝や、F1で表彰台に立った時など人生の節目に、佐藤さんは自分へのご褒美として腕時計を購入することが多いのだという。

「最初に興味を持った時計はクロノグラフです。機械としての美しさを感じました。僕は時計のメカニカルな面にも興味があるんです。歯車とゼンマイという機械仕掛けを腕に身に着けるというのが時計の美学。だから選ぶのは常に機械式時計です。時計は男が持つ唯一のアクセサリーだと思います。所有する喜びがありますね」

 時計についてはデザインや機能だけではなく、ブランドの歴史を含めたストーリーにも引かれるという。佐藤さんは日ごろ、しっかりとしたホールド感が得られるラバーストラップを装着したブライトリングを愛用していることもあり、ブライトリングと空の関係も興味深いと語る。

「僕は、もともと飛行機が好きなんです。小さい時はパイロットになりたいと思っていた。ブライトリングといえば、やはり空のイメージが強い。計器類の視認性や時間の計算などは極論をいえば乗員の命に関わること。優れたパイロットウオッチとして高く評価されてきたブライトリングには、とても魅力を感じます」

 佐藤さんは現在、インディカー・シリーズ出場のため、1年のうち半分は米国にいるという。

「今は米国にいても、常に日本とやりとりしていますし、国内でも3時間の時差があるので、GMT(世界標準時)機能をよく使います。次の行き先の時間とか、一緒に仕事をしている相手の時間を、パッと見て瞬時に知りたいんです」

 そんな佐藤さんも来年早々には42歳になる。「もうキャリアの終わりが見え始めてきた」と語るのだが、まだまだ挑戦する意欲は衰えていない。もう一度、インディカーのチャンピオンになること、そして、さらには年間チャンピオンをとることが目標だという。

 NO ATTACK NO CHANCE。まだまだ佐藤磨の挑戦は続く。

取材・撮影協力 ツインリンクもてぎ

佐藤 琢磨

レーシングドライバー
佐藤

1977年東京生まれ。高校から始めた自転車競技で才能を発揮するも、F1レーサーの夢を諦めきれず、鈴鹿サーキットレーシングスクールに入門。首席で卒業した後、渡英してイギリスF3へ挑戦、頂点を極めた。モータースポーツへの転身からわずか5年、史上7人目の日本人フルタイムF1ドライバーとなる。04年、アメリカグランプリにて表彰台に上がった。その後、米国最高峰のフォーミュラカーレース「インディカー・シリーズ」に参戦。13年のロングビーチで初優勝を飾った。17年にはアジア人として初めてインディ500制覇の快挙を達成。その功績に対し、内閣総理大臣顕彰が授与された。写真上のマシンはツインリンクもてぎのHONDA COLLECTION HALL内に展示されている「B・A・R Honda 006」。佐藤さんは04年、このマシンでF1の表彰台に立った。
※「」の漢字は右側[ノ]の部分に[ヽ]が交差する旧字体が正しい漢字です。

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