上司に報告したいことがある。今は忙しそうだから後にしようか、それともメールを送ろうか。でも、メールはちゃんと見てくれるだろうか……? そんなふうに迷った経験をお持ちの方は、多いはずだ。
「報告」「連絡」「相談」を意味する「報・連・相」は、仕事の基本。しかし、相手を満足させる完璧な報・連・相は、意外に難しい。
本書『仕事の成果って、「報・連・相」で決まるんです。』は、そんな報・連・相の実践の手引きである。報・連・相を、実力を発揮するための「ツール」ととらえ、上司や顧客に対するメール、電話、対面など、さまざまな状況を想定して、具体的な表現を紹介している。報・連・相を基礎から身に付けたい若手の方はもちろん、チーム内の情報共有に課題を感じる中堅の方、部下とのコミュニケーションに悩む管理職の方まで、一読の価値があるだろう。著者の三上ナナエ氏は、企業研修の講師を務めるコンサルタント。
まず、報告の基本を見てみよう。以下の3ステップに沿えば、確実に要点を伝えられる。
1)何の報告なのか
2)結果がどうなったのか
3)どう対処するのか
1)指示に対して、2)どうなったかを知らせ、現実とゴールにギャップがあれば、3)その差を埋める具体的な対応を伝えるということだ。
よりわかりやすく伝えるには、話し方にもポイントがある。例えば、細かく伝えようとして、つい時系列に話しがちだが、そうではなく、相手に関わることから伝えるようにする。その方が、聞き手は自分がすべきことを早めに考えられるからだ。また、事実と主観を分け、必要に応じて「私はこう思うのですが……」と伝える。慣れないうちは、事前に準備やリハーサルをしておくほうが、かえって時間短縮になるという。
報・連・相は、自らの思いを伝える機会でもあると、著者はいう。
例えば、明日の打ち合わせの時間は雨予報。リマインドのメールで「雨の予報で恐縮ですが」と断ったうえ、「待ち合わせは【5番出口】の地上ではなくて、階段下にしましょう」と連絡したらどうだろう。あなたを気遣っています、という思いやりを伝えられる。受け取った側としても、打ち合わせに前向きになれそうだ。
冒頭の上司への報告のタイミングについては、報告を受ける人のタイプに合わせる。著者は、例えば文章を読み込むのが好きではないタイプの人ならば、メールに加え、要点のみ口頭で伝えるなどの工夫を勧めている。相手の立場になることによって導き出される気配りである。
本書には、今日から使えるフレーズが満載だ。部下に対して声をかけてもいいサインを出して「報・連・相したくなる上司に変わるコツ」といった、報・連・相を受ける側が押さえておきたいポイントも紹介されている。困った時の奥の手として、カバンに常備したい一冊だ。