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今月の特選

だから僕は、ググらない。

『だから僕は、ググらない。』

  • 浅生 鴨 著
  • 大和出版
  • 2020/01 224p 1,540円(税込)

やりすぎと無駄が大切 元NHK「中の人」の妄想術

企画や商品開発、プレゼンテーションの準備時など、ビジネスでは「アイデア」を求められる場面が少なくない。だが斬新なアイデアがなかなか思いつかない、そもそも「発想」自体が苦手だという人もいるのではないだろうか。

そんな人にとって良いヒントとなるのが本書『だから僕は、ググらない。』。作家・広告制作企画者として多くのアイデアを生み出してきた浅生 鴨氏が、自身の発想法を惜しげもなく披露している。発想法といっても、浅生氏がメインに行っているのは「妄想」だ。いかに「変なこと」を考え続けているのかという視点で、日ごろ行っている自身の思考プロセスを明かしている。

なお著者はNHK在籍時に「中の人」として同放送局の広報局Twitterを担当。現在では小説、エッセイなどの執筆活動を行っている。

妄想はアイデアの「種を集める」

浅生氏はアイデアを生むプロセスを「植物の栽培」に例えている。アイデアの種を撒き、育て、有望なものを最終的に形にしていく。花となって実現するかどうかは分からなくても、できるだけ多くの種を集める作業が大切だ。この、種を集めるプロセスに相当するのが「妄想」なのである。

妄想は誰もが行っていることだが、浅生氏の妄想は濃い。例えば、「台風一過」というニュースを見聞きしたら、「台風一家」と脳内変換する。このあたりまでは普通に思いつく。だがここから、台風一家の家族構成や会話、一家ならではの悩みなども妄想していくのが浅生流だ。台風吾郎に妻の台風沙知絵、高校生の娘・台風雅子と台風翔子の四人家族。台風一家は平均的な生活を送っているが、台風の時期は違う。「台風一家」というダジャレを思いついた人の元に、家族総出で駆けつけなくてはならないのだ……。

このように妄想は「やりすぎ」なくらい深めていくことが重要なのだという。日ごろからこんな妄想を積み重ねていくと、集めたアイデアの種がある日、急に役立つそうだ。

なぜ「妄想」が大切なのか

浅生氏が「妄想」にこだわるのはどうしてなのか。それは妄想することで、広がりや奥行きのある情報が手に入るからだ。

何かを考えるときに、インターネットで検索すれば、欲しい答えがダイレクトに見つかりやすい。しかし頭の中で妄想をすると「必要な答え」になかなかたどり着かないと同時に、「必要でない」情報も手に入る。こうした予想外の情報にたくさん出会っておくことが、新しい発見や発想につながるのだという。本書のタイトル「ググらない」の意図もここにある。「無駄」「無関係」に見える情報が、アイデアの肝なのだ。

本書では具体的な手法として、モノを擬人化する方法や、「だから」という順接と「しかし」という逆接を交互に使って発想する方法など、数多くのコツを紹介している。妄想はいつでも、どこでも、誰にでもできる。すぐにググる癖があるならば、本書の妄想法にトライしてみてほしい。思わぬアイデアに出会えるかもしれない。

だから僕は、ググらない。

『だから僕は、ググらない。』

  • 浅生 鴨 著
  • 大和出版
  • 2020/01 224p 1,540円(税込)
安藤 奈々

情報工場 エディター 安藤 奈々

情報工場エディター。8万人超のビジネスパーソンに良質な「ひらめき」を提供する書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」編集部のエディター。早大卒。

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