夏季大会としては56年ぶりの自国開催となる東京五輪・パラリンピックが行われる2020年は、間違いなく「スポーツの年」となるだろう。
ほとんどのスポーツにとって重要になる体の部位といえば「足」である。1964年東京五輪開催までの日本人と五輪の関わりを描いた2019年のNHK大河ドラマ『いだてん ~東京オリムピック噺(ばなし)~』では、序盤で日本人初の五輪出場者・金栗四三選手の「マラソン足袋」が取り上げられていた。
足と聞いて「リフレクソロジー(反射療法)」を連想する人もいるかもしれない。「足裏マッサージ」とも呼ばれる療法だが、足の裏に全身の臓器や器官が投影反射されるという理論をもとにしている。
そんな大事な足に対し、割と無頓着な人が多いのではないだろうか。日々、文句も言わず私たちの体重を支え、地べたに押し付けられる足。実は年齢を重ねるにつれ、その形が変わっていくのだという。特に男女とも50歳を境に足形、そして「歩き方」も大きく変わる。そんな事実を明らかにしたアシックス スポーツ工学研究所が研究成果を紹介しつつ、何歳になっても元気で歩き続けるための歩き方や靴選びなどを提案するのが、本書『究極の歩き方』だ。
著者のアシックス スポーツ工学研究所は、運動靴を主力とするスポーツ用品メーカーのアシックスのシューズ、アパレルの研究部門が1985年に統合して設立。人間の運動動作を分析し、アスリートのみならず、世界の人々の可能性を最大限に引き出す技術、製品、サービスを継続的に生み出すことを使命としている。
アシックスには、機器や手作業でこれまでに計測した顧客の足形データが、日本人を中心におよそ100万人分収集されているという。それによると、平均的な足は、足の後部のかかとを基点として中心に向かう線、および前部のつま先を基点として中心に向かう線が、それぞれ少しだけ外側に傾いている。これを同社では「スタンダード足」と呼んでいる。
このスタンダード足が加齢とともに変化するそうだ。前部と後部の中心線がどちらもさらに外側に傾き、「カーブ足」と呼ばれる状態になる。その変化が、50歳を境に顕著になるというのだ。要は、足が外側に広がっていくのである。
また、50歳を機に歩き方も変わる。アシックスの「歩行姿勢測定システム」の計測によると、大まかに言って、左右のバランスが悪くなる。
もちろん個人差はあるだろう。50代の私自身、正直なところ、以前から変化したかどうかは実感できない。だが、歪んだ歩き方は、心身の健康に良い影響は与えない。本書には理想的な「正しい歩き方」も図とともに紹介されているので、意識して歩いてみようと思う。皆さんもどうだろうか?