人生100年時代を見すえ、「社会人の学び直し」が話題となっている。仕事の合間に時間をつくり、学生以来の勉強に励んでいる人もいることだろう。そんなビジネスパーソンの学び直しにうってつけなテキストをご存知だろうか。実は、「地方上級公務員試験」だ。
公務員試験と聞くと、あまり馴染みがないだろうし、「実際のビジネス」で役立つ、とは思えないかもしれない。だが、博覧強記で知られる佐藤優氏によると、公務員試験の教養試験こそ、社会人の「知識・教養の欠損」を補う良問が並んでいるという。
本書『佐藤優の挑戦状』は、佐藤氏が選び抜いた地方上級公務員試験60問を掲載。解答と独自の解説が加えられており、本書を繰り返し解くことでどんな人にとっても必要な、学びのベース、すなわち「地頭」を培うことができるのだ。
佐藤優氏は作家、元外務省主任分析官。2016年から教鞭を執っている同志社大学神学部の授業でも、学生たちに公務員試験を解かせているそうだ。
公務員試験の教養問題は「数的推理」「判断推理」「文章理解」「知識問題」の4分野に分けられる。いずれも人が生きていくうえで欠かせない「理解力」を支える知識や考え方を問うものばかりだ。特に、ビジネスの現場でも必要になることが多いにもかかわらず、苦手意識をもつ人が多いのが数理的な思考法。ここを鍛えれば、ビジネスパーソンにとっても大きなメリットがあるはずだ、と著者はいう。
では「数的推理」の項より、次の問題に挑戦してみてほしい。
“線路沿いの道を一定の速度で歩いている人が、前方から来る電車に10分ごとに出会い、後方から来る電車に15分ごとに追い越された。いずれの向きの電車も、それぞれ、電車の長さは等しく、速度および運転の間隔は等しく一定であるとき、電車の運転の間隔として、正しいのはどれか。
(1)12分
(2)12分15秒
(3)12分30秒
(4)12分45秒
(5)13分 ”(『佐藤優の挑戦状』p.193から引用)
実はこの問題は、中学入試の知識を応用すれば解くことができる。だが解けなかったとしてもがっかりする必要はない。本書の大きな目的は、知識の欠けている分野を確認し、それを埋めることにあるからだ。
著者は、自分の知識不足に気づき、それを補うべく問題を解き続けることが大事なのだと説いている。弱点を自覚し、何度も復習を繰り返せば、知識や解法が自分のものとなっていく。こうして、幅広いジャンルに柔軟に対応できる地頭が確実に養われていくのだ。
さて、先ほどの問題の答えは出ただろうか。正解は……(1)12分。解けた人もまったくお手上げだった人もぜひ本書を手にとって、佐藤氏からの挑戦を受け続けてみてほしい。