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今月の『押さえておきたい良書

『社内政治力』

正攻法も劇薬も。組織の中で思い通りにコトを運ぶヒント

『社内政治力』
芦屋 広太 著
フォレスト出版
2018/09 232p 1,400円(税別)

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 上司のちゃぶ台返し。他部門の非協力。稟議(りんぎ)書を眺めため息をついた経験はないだろうか。本書『社内政治力』によると、組織内で利害対立が起こる状況では「社内調整力」「部下掌握力」「上司懐柔力」「社内人脈力」「権力操り力」「社外人脈力」の6つの社内政治力が必要と説く。本書は、金融機関の部長職で教育コンサルタントでもある芦屋氏自身の知見をまとめた一冊だ。

情報を駆使して仕事を進めよう

 社内調整の方法は「関係者の利害把握」「利害分析」「利害調整」という手順を経る。例えば、営業部門が営業分析ツールの導入を望んでいるが、経理部門が反対しているケース。まず、経理課長が投資効果の点で反対しているということを把握する。これが関係者の利害把握だ。次に、利害分析のステップでは、コスト削減至上主義の経理課長に投資効果を説くのではなく、全社的な利益を考える経理部長に交渉の的を絞る。そして、購入は経営面の課題解決策として主張する。これが利害調整だ。

謀略は会社全体の最適化のために使おう

 上司とは良好関係を保つべきだが、職場に悪影響をもたらす上司には、からめ手を行使する「ダーク・マネジメント」の発動もやむを得ない。本書では、商品開発部のA部長のパワハラで部下を次々と潰されたB課長の事例が取り上げられている。B課長は一計を案じ、独自に社内調査を進めた。その結果、A部長の苦手な商品企画部のC部長が、社長肝煎りの企画を進めていることが判明。そこでB課長は、A部長には企画内容のデメリットを刷り込み、社内にも商品開発部は商品企画部の新企画に反対との噂を流し、会議の場で両部長が対立するように仕向けたのだ。その後、社長肝煎りの企画に対して反対一本やりのA部長は、社外へ出向となった。

情報収集の第一歩は、情報提供から

 社内調整は情報提供者や権力者の協力が不可欠だ。そこで、本書では、仕事の協力、情報の提供等「味方をつくる10の方法」や、社外人脈作りのコツも豊富に載っている。できることから始めてみると、ため息も安堵の吐息に変わるだろう。

情報工場 エディター はら すぐる

情報工場 エディター はら すぐる

香川県出身。現在、地方大学の経営企画部門で事務職として働く。財務会計システムから得られる会計情報と、業務上の報告書やそのバックデータといった非会計情報の関係付けに“たゆたう”日々。時々ワークショップを開催し、人材育成を行うことも。職業柄、人文、社会、自然と分野を問わず関心を持つように心掛けているので、読書の分野も様々。漫画も好きで、苦手な分野はとりあえず漫画から入ることにしている。

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